透明のジュレとミョウガ飯で涼ゲット。『串天ぷら 段々屋』[新宿]
「出汁とジュレと器をキンキンに冷やすから、揚げ物いけるでしょ」と店長の小林祐介さん。味と涼の決め手は、鰹(カツオ)・昆布・干し椎茸(シイタケ)で取る濃い目の出汁をゼラチンで固めたジュレだ。天ぷらにまとわせたり、ミョウガ入りの氷水で締めたご飯と混ぜながら食べ進める。最後に冷たい出汁を注ぎ、お茶漬けのようにサラサラ食べ干すのもいい。大盛りも同じ1100円で、シジミの味噌汁が付く。ランチのみ。夏季限定。
『串天ぷら 段々屋』店舗詳細
少量限定の特別感にカレー通も注目。『天ぷら割烹 天山』[池袋]
麻の暖簾(のれん)に不釣り合いな、立体的に盛られたフレンチみたいな一皿。鶏出汁に、13種のスパイス、旬のパプリカなどの大量の野菜とココナッツミルクを使うタイ風で、野菜由来のとろみが濃厚な冷やしカレー1100円だ。弾力ある揚げたての鶏唐揚げをのせ、アクセントにハラペーニョとパクチーで作るソースをかける。見た目以上の辛さの後に爽快さを呼ぶこの緑、クセになる。夏季限定。
『天ぷら割烹 天山』店舗詳細
全県で受け継がれてきた夏の風物詩。『魚山亭 新寮』[渋谷]
味噌の他、焼いた鯛かイリコを鍋に入れ、火にかけて水分を飛ばす。この焼き味噌を出汁でのばし、木綿豆腐、夏野菜、薬味を加えたものを温かいご飯にかけて食べる。これが宮崎で生まれた冷や汁だ。宮崎全域に伝わる家庭料理なので、家ごとにレシピが異なる。「そのため、お客様から『うちのとは味が違う』と怒られることもあります」とスタッフさんは苦笑い。白飯だけだと水っぽくなるため、店では麦飯を用意している。
『魚山亭 新寮』店舗詳細
生地の風味が命の手作り麺。『ぴょんぴょん舎GINZA UNA』[銀座]
本店は盛岡にあり、銀座店でも盛岡冷麺を販売する。スープやキムチは盛岡から送られてくるが、麺は注文ごとに店で手作り。でんぷんと小麦粉に熱湯を注ぎ、手で練ったものを機械で製麺し、ゆでる。「練りたてをゆでることによって盛岡冷麺特有のモチモチ感が出ます。生地は時間が経つほど劣化し使用できなくなるので、どんなにいそがしくてもオーダーごとに練り上げています」と石井豪料理長。このこだわりはすごい。
『ぴょんぴょん舎GINZA UNA』店舗詳細
大根のおろし汁がピリリと旨い。『本手打ち越前そば御清水庵 清恵』[三越前]
福井でそばといえば、おろしそばに止(とど)めを刺す。そばに大根おろしをのせて、出汁をかけて食べるぶっかけもあるが、この店では青首大根のおろし汁を入れた出汁、そば、薬味が別々に盛られてくる。冬の青首大根は甘みが増すが、夏はピリ辛。そばに薬味をまぶし、ピリ辛好きなら、ぶっかけに。好みの辛さで食べたい人は、つけ麺がおすすめ。いずれにせよ、辛みが効いたおろし汁で頂くため、さわやかな余韻が心地よい。
『本手打ち越前そば御清水庵 清恵』店舗詳細
由緒正しき庭園で暑気払い。『吹上茶屋』[駒込]
『六義園』は、万葉集、古今和歌集、中国古典に詠まれた名勝88カ所を再現。枝葉が重なるようにして残る木立と、豊かな水をたたえた大泉水の対比が美しい。水際の茶屋に立ち寄れば、鳥のさえずりや、亀が池に飛び込む音が涼しげだ。濃い目に点てた冷抹茶は、じんわり広がる苦味が暑気払いに最適。白鷺宝で有名な、菓匠花見がこしらえた季節の上生菓子は、きめが細かく、舌にそっとなじむ。
『吹上茶屋』店舗詳細
アメ横を横目に夏味の焼酎を一献。『れんこん』[上野]
アメ横の喧騒(けんそう)に紛れるようにしてある古い一軒家。料理はレンコンの持ち味を生かすことを重視。はさみ揚ならレンコンを厚くカットすることでみずみずしさを保ち、エビのすり身、大葉と合体して大ぶりに仕上げる。サクッ、シャキッ、ふわ~と展開していく食感の妙を楽しんで。食事のおともには夏にぴったりな焼酎を。
『れんこん』店舗詳細
とろとろ粥が喉を滑る中華ランチ。『中国料理 清香園』[元町・中華街/神奈川県]
「冷麺があるなら冷粥があってもいい」と、オーナーシェフの髙谷清さんは閃(ひらめ)いた。米の香りを重視する粥は、山形県産ひとめぼれのウルチ米とモチ米を合わせて2時間強火で煮て、冷蔵庫で1日冷やす。主菜の「牛モモ肉の黒胡椒ソース炒め」はピリ辛、副菜の「大山豆腐の干しエビソース」は風味濃く、粥がどんどん減るパワフルなおかず。サラダと杏仁豆腐付き990円で、粥のおかわり1回OK。夏季限定。
『中国料理 清香園』店舗詳細
夏バテを吹き飛ばす医食同源の優しいメニュー。『粥菜坊』[武蔵小杉/神奈川県]
企業の香港駐在員だった山本宏和さんと中国広州出身の妻・招杏明さんが2人で切り盛りする小さな店。お粥のほかにも本場の飲茶メニューがいっぱいだ。中国茶も豊富に取り揃え、午後にはお茶だけ飲みにくる常連も多い。朝鮮人参茶や仙草ゼリーなど、お茶やスイーツにも体に良さそうなものが豊富。滋養たっぷりの粥で夏に負けない気力と体力を養おう。
『粥菜坊』店舗詳細
ビールジョッキで作る、漁師直伝の味。『海鮮料理まるしち』[白子町/千葉県]
「大雑把に切ったアジのたたきを冷たい味噌汁に入れて飲んだのが、水なますの元祖。巻き網漁船の若い漁師が、これをご飯が入った飯盒(はんごう)にぶっかけて食べたのが、現在の水なますの始まりです」と主の増田七郎さん。氷を入れたビールジョッキにたたきを移し、おろしニンニクなどの薬味、味噌、冷水、隠し味に醤油を加え、かき混ぜたら、水で洗ったご飯にかける。「父親が漁師だったので、うちの水なますは漁師直伝です」。
『海鮮料理まるしち』店舗詳細
つるっといける喉ごし!『手打ち蕎麦 すず季』[初石/千葉県]
店主の鈴木宏富さんは独学でそばを徹底追究。自ら栽培も手掛けて茨城の農家との交流が生まれ、現在のそばは主にその農家が専用に作ったものを提供している。今や超ブランドとなった、ある品種を丁寧に手刈り、天日干しして手碾きされたそばは、まさに極上。口に含めば、香ばしい風味と甘みが広がってくる。電動石臼で碾いた生粉打ち十割そばも、時季や天候などによって日々産地を変えてブレンド。これも絶対手を抜かない。
『手打ち蕎麦 すず季』店舗詳細
どーんとのった目玉焼きが印象的!『ぎんねこ』[浦和/埼玉県]
昭和初期から洋食や喫茶など、さまざまな料理を提供してきたが、現在ではそばやうどん、ラーメンなど、自家製麺が食べられるそば屋となった。冷し月見中華750円は、ほかの冷やし中華とは違い、錦糸玉子ではなく目玉焼きがのっている。目玉焼きの下にはキュウリやキャベツが大量に入り、ほかの具とともにボリューム満点。そばつゆと酢で作るタレがそば屋ならでは味わいだ。夏季限定。
『ぎんねこ』店舗詳細
ゴマの香りが芳しい冷やしつけ麺。『そうま水産川島本店』[川島町/埼玉県]
すったてとは“すりたて”がなまったもの。ゴマ、味噌、野菜をすりつぶし、うどんの冷やしつけ汁にする埼玉県川島町生まれの郷土食で、平成22年埼玉B級ご当地グルメで優勝した実力派。材料は店ごとに異なり、この店では用意された材料を客自身がつぶして作った冷やしつけ汁でうどんを食す。ゴマをすっていると、芳しい香りが立ち上り、食欲が減退する盛夏でも思わず早く食べたくなるはず。残った汁をご飯にかけても旨い。
『そうま水産川島本店』店舗詳細
取材・文=信藤舞子・松井一恵(teamまめ)、中島茂信、速志 淳、工藤博康 撮影=阿部栄一郎、井上洋平、井原淳一、関尚道、鈴木俊介、小野広幸