地元の人が繋がってチャレンジできる場所に
西部鉄道多摩川線の終着点、是政駅から徒歩約3分。閑静な住宅街に、一軒家を改装したカフェがある。『cafe bond』の開店は2019年2月。オーナーの中津久美子さんは、お店を始めるために一軒家の物件を購入し、玄関の位置から何から大幅に改装したという。改装工事を手掛けたのはご主人。家具は、沖縄でセレクトショップを営むご友人とご主人とでデザインし、インドネシアの職人に発注した。
「向こうの職人さんは彫りが上手なんです。チーク材とかも安くて。その分輸送費はかかりましたけど、テイストが素敵で気に入っています」と中津さん。
この場所に店をオープンした理由は、地域の人をつなげる場所を作りたかったからだという。
「家から近所だっていうのもあるんですけど、ここに何か場所があれば、いろいろなことができるんじゃないかと。私はもともと看護師なんですが、コミュニティとかそういうことをやりたくて。何かチャレンジできるような場所、居心地がいい場所を作りたいなと」
以前は、ケーキ教室やフラワーアレンジメントのワークショップなども開催。また、常連のお客さんの息子さんの絵を店内に展示。今年のバレンタインには、お菓子ひとつひとつに、その方の手描きのイラストを添えて一緒に販売した。
「そういうちょっとした人との繋がりでお互い喜びあえる、気持ちが上向きになるようなコラボも始めています」
女性6人のチームで家庭と仕事を両立
お客さんの年齢層は幅広く、instagramを見て来た高校生や20代から、近所の高齢のご婦人まで。「“わざわざ府中の町の中心部まで行かなくてもここがあるから”って。あとはママが多いですね」。スタッフ6名も全員ママで、皆さん子育てと仕事を両立して協力しながらやっているという。
「うちのパティシエさんも、以前は資格を取ってケーキ屋さんで働いていたんですけど、子供ができて、朝から晩まで働くケーキ屋さんは無理だと一度は諦めてしまって。でも、うちの店でケーキ作らない?ってお願いして、一緒に働くことになりました」
今は彼女のケーキを楽しみにしているファンもたくさんいるという。また、看護師をやりながらこの店で働く人もいるとか。中津さん自身も今も週一で看護の仕事をしているという。やりたいことがあればお互いどんどんアイデアを出し合い、チームで解決していく。
「女性の力はすごいなって思います。やりくり上手で」。食材に関してもフードロスを削減しているとか。「メニューのやり方によって、この規模で、このくらいの来客だろうと予想がつくので作りすぎずに済むからかもしれないですけど、そこに喜びを感じています」。
ランチからティータイムまでゆったり過ごす
ランチは四季で変わる季節のプレートが3種。さらに日替わりメニューは2日おきくらいにメインが変わる。ケーキは日替わりで大体3、4種。ランチに来てそのままケーキも、という方が多いそう。長めの滞在の方が多いが時間制限を設けるつもりはないという。 今回いただいたのは季節のプレート、赤魚のワイン蒸しレンズ豆添え。 それぞれにチリコンカン、ピクルス、サラダ、自家製オイルサーディンのキッシュ、くるみパンとバゲットor麦飯、ドリンクがつく。
ビターチョコとチーズを組み合わせた2種の味を楽しめるブラウニーチーズケーキ。二層の間にオレンジピールが散りばめられていて、爽やかなアクセントになっている。
水曜日はテイクアウトオンリー。元々は定休日で、タルトなどの焼き菓子を焼く日にしていたが、焼きたての甘い香りをお客さんにも楽しんでもらいたと2021年の1月からこの形に。「あと、私がバインミーが好きで、バインミーならぬ“ボンドミー”というサンドイッチを週替わりで販売しています。なますで酸味を入れて、あとはメインを変えて」。
また、おうちのみセットも月2回販売。お店で提供する料理は、「家庭だとめんどくさくて作らないようなものを目指しています」と中津さん。他の人が作ってくれた料理のうれしさ、特別さを知る人の目線が温かい。
構成=フリート 取材・文・撮影=藤村恭子