おいしいを一番に考える。自然食にこだわる定食店
吉祥寺駅を歩いて5分ほど。飲んべえのランドマーク『いせや』を通り過ぎたあたりに『もんくすふーず』がある。創業以来、自然食にこだわり、添加物や保存料は不使用、米や野菜は無農薬、有機栽培のものを使用している。鶏肉は放し飼いで育ったもの、魚は天然。自然な味わいを出す店は昔からあったとはいえ、ここまで続けているお店は少ないのではないか。
店主の小林さんにこうしたコンセプトの店をはじめた理由を聞くと「もう忘れちゃったけど……」と言いつつ、「今はもう工場で作る食べ物が当たり前でしょう。皆さんの舌も変わってきてしまっているけれど、昔から科学的なものを使わないほうが、食材の本来の味わいや食事の美味しさが感じられるのではないかと思っていました」と話してくれた。
ヴィーガンやマクロビオティックと聞くと、雑食の人間はどうしても恐縮してしまうが、社会、政治的な考えぬきにとことんシンプルに自然な食を味わえるのならば、足を踏み入れやすい。
「monk」は英語で修道士の意味を表すが、実の由来はジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクなのだという。店内にも小林さんが好きなジャズが流れていて、静かでいて心の弾む空気が流れている。
野菜の旨みを存分に味わう野菜定食
ランチは900円、ディナーは1100円。ともに日替わりで3種類の定食を用意していて、仕入れによるが[1]は野菜が中心のおかず、[2]が魚、[3]が鶏肉の料理となっている。
この日の野菜定食は、メインのおかずが里芋と野菜五目赤味噌煮。副菜はひじきとゴボウ、ホウレン草のごま和えだった。野菜定食は動物性も食材を使わず、出汁も昆布と干し椎茸でとっているのだという。鶏、魚の定食の出汁は昆布とかつおの出汁なので、毎日2種類の出汁を仕込んでいるのだ。
店の根底に流れる「身土不二」という考え
里芋と野菜五目赤味噌煮には、里芋、れんこん、厚揚げ、人参、コンニャク、モロッコインゲンと野菜たっぷり。出汁の旨味で赤味噌がまろやかな味わいに仕上がってて、野菜それぞれの甘味や旨味の十分に感じられる。ジャンクフードが食べたい瞬間もあるけれど、自分を整えながら毎日食べたいと思えるのは、こうした料理なのかもしれない。
どの料理も野菜はなるべく、三鷹や武蔵野などの地元野菜を使っているそうで理由を聞くと、小林さんは“身土不二(しんどふじ)”という言葉を教えてくれた。地元の旬の食材や伝統料理が、そこに暮らす人にとって体にいいという考えかただ。そういわれてみると、私の住む場所の特産品ってなんだっけ。
よく噛んでゆっくり食べ、食べ終わったら「ごちそうさま」と言いたくなる。『もんくすふーず』のごはんは夜に食べたって、寝る前も体は軽やかなまま。ランチやディナーに訪れれば、自分にとってのおいしいがわかるかもしれない。
『もんくすふーず』店舗詳細
取材・撮影・文=福井 晶