センスが光るコスパの良い創作イタリアン
『Cerdi』の店名の由来は、イタリア語で“輪”を意味する「cherchio(チェルキオ)」と、“楽しむ、最愛の”を意味する「diletto(ディレット)」を組み合わせた造語。
「人と人とのつながりを大切に」「楽しむ・愛される場所」にしたいという思いを込めた名だ。
実は、2018年にオープンした当初はオーガニックレストランだった。門前仲町という下町で多くの人に愛される存在を目指し、コロナ禍の2020年に思い切ってカジュアルイタリアンにシフトした。
料理は創作性に富んだ常時30〜40種類の豊富なメニューから選べる。いずれも良心的な価格帯で、気軽にワインを飲みながら居酒屋気分でイタリアンを味わえるのがポイント。
『Cerdi』では、初心者からワイン好きの方まで楽しめるように、常時50種類以上飲み放題のプランを1時間858円という手頃な価格で提供。
ワインは、産地や味わいをバランス良く揃えた世界各国からの輸入ワインを、少しずつラインアップを入れ替えながら提供している。1階と2階にそれぞれワインが並ぶエリアがあり、好きなワインを好きなだけ味わえるほか、パーティー利用も可能。
フロアごとに貸し切ることができ、最大80名まで入れる。フロアごと貸し切るとプライベートワインセラーのような感覚で自由に利用できて、特別感を味わえる。
ホテルリゾートをイメージしたという白を基調とした店内は、広々として明るい。席数は1階と2階合わせてゆったりめの50席。訪れる層は多彩で、ランチ利用はもちろん、カップル、ファミリー、子連れの団体客、会社の飲み会利用の客もおり、いつもにぎわっている。
通し営業なので、遅めのランチ、お茶、早めのディナー、2次会、3次会など、幅広い時間帯で使い勝手の良い、懐の深い店だ。
ワインにぴったりのジャンルを超えたメニュー
キッチンは基本的にイタリアンの経験豊かな2名のシェフとアフタヌーンティー担当の1名のスタッフで稼働。
トレンドを取り入れた料理は、盛り付けも華やかで美しく、トリュフ・フォアグラ・キャビアという非日常的な高級食材が彩りを加えている。食材選びも大切にしており、魚介類は10年来付き合いのある専門業者から毎朝仕入れているため鮮度も良く、質には自信があるそうだ。
またグランドメニューは季節ごとに入れ替え、コース内容も2ヵ月に1回変更し、地元のリピーター客も飽きないような工夫がされており、何度行っても楽しめる。
11:00〜15:00の時間帯では、ランチメニューとして4種類から選べるパスタセット1580円〜1980円が用意されている。パスタにサラダ(レモンとオリーブオイルのドレッシングまたはにんじんベースの野菜ドレッシング)が付き、ドリンクやスープ、ジェラートもセットにできる。
定期的に入れ替わるランチメニューの中から、今回は定番メニューというズワイガニのカニ味噌クリームパスタを注文。
カニの甲羅が飾られた洗練された盛り付けの一皿は、カニ味噌の旨味がぎゅっと濃縮された濃厚な味わい。丁寧に作られたトマトソースと新鮮な生クリームで作られたベースに、磯の香りを感じるカニがたっぷりと加えられている。
カニの身だけではく、希少価値の高いカニ味噌も入れているところがこだわりであり、ワインと合わせるならスッキリとしたドライタイプのスパークリングワイン。
淡路島にある生パスタ専門の淡路麺業から仕入れているという生パスタのモチモチした食感を楽しめ、コクのあるソースとの相乗効果でボリューム的にも満足感が高い。
またランチコース3670円では、5品目にドリンクと食後のコーヒー・紅茶が付く充実した内容を用意(+660円で黒トリュフ大根 バケット付きを追加可能)している。ディナーのスペシャルコース5500円(2.5時間飲み放題)も、前日までの予約でランチタイムに味わうことができるのだ。
そしてメニューのなかで一番人気なのは黒トリュフ大根1408円。
日本人になじみのある和風出汁でやわらかく煮付けた大根の上から、トリュフやポルチーニを贅沢に使ったソースをかけている。実はソースの隠し味は焼き鳥のタレ。和と洋がバランス良く融合し、赤ワインも白ワインもどちらも合うが、特に芳醇なワインと合わせるのがおすすめとのこと。
ワインに合う料理をコンセプトに、和風居酒屋のメニューを参考にしたり、中華料理と融合させたり、様々な要素を交え『Cerdi』でしか出合えない創作性のあるイタリアンは「日本ならではの創作イタリアン」として海外からの客にも好評だ。
アイデアに満ちた、世の中から愛される店に
また『Cerdi』では、新たな試みとして2023年秋から平日限定、当日15時までの予約制で、アフタヌーンティー(CHAKAI)5500円をスタートした。
新しいアフタヌーンティーを提案するべく“日本庭園の四季”をコンセプトに、フラットなプレートに盛られたスタイルで提供。季節ごとに替わる15種類ほどのメニューを1つの作品のように目と舌で堪能できる。アフタヌーンティーを専門に手がけるパティシエが、タルト、クランブル、シュー、スコーン、フォカッチャ、季節のスムージーなどを生地から手作りしている。豪華に盛られたプレートを、フリーで注文できるソフトドリンクまたは紅茶と一緒に味わいたい。
伊藤さんが目指しているのは、“Cerdi”というブランドをより多くの人に知ってもらうこと。2021年に流山おおたかの森、2022年に自由が丘に姉妹店を出店。ローカルから都心へ、急がず力まずに店舗を増やしていきたいと考えている。
「『Cerdi』を通じて、ワインの魅力や楽しみを広げていきたい。ワイン50種類飲み放題の魅力を打ち出しつつ、日常的に寄れるカジュアルなイタリアンスタイルでこそ可能だと考えています」と伊藤さんは語った。
「好きなワインを好きなだけ飲めて、おなかも満たされる幸せを味わってほしい。また世の中にない新しいメニューを提案することで、まねされるような存在になれたら面白い。イタリアンは、何でもできるという可能性に満ちている」と伊藤さん。
イタリアンの枠組みを超え、型にはまらない自由なアイデアから生まれる創作料理はこれからも多くの人を惹きつけるだろう。「創作イタリアンといえば『Cerdi』!」と人々が叫ぶ日に向けて、店は確実に歩みを続けている。
取材・文・撮影=菊地翔子