アクセス
電車:JR・私鉄・地下鉄新宿駅から小田急電鉄小田原線で約50分の本厚木駅下車。神奈川中央交通バスに乗り換え約35分の愛川バスセンターほか下車。
車:東名高速道路東京ICから東名高速道路・圏央道を利用し、相模原愛川ICまで約45㎞。同ICから町中心部まで約6㎞。
県立あいかわ公園
広がりある眺望も魅力の1つ
宮ヶ瀬ダムの堰(えん)堤下に広がる神奈川県立の公園。総面積は約51haに及び、起伏に富んだ園内を巡るだけでも自然との触れ合いを十分満喫できる。宮ヶ瀬ダム直下へは公園を通り抜けて徒歩で行けるが、SLを模したロードトレイン「愛ちゃん号」も運行(片道300円、運行日限定)。
愛川町郷土資料館
『県立あいかわ公園』内の町立施設
郷土の歴史や民俗、自然に関する貴重な資料などを展示。とりわけ修験の山である八菅(はすげ)山や三増(みませ)合戦、糸の町に関する解説が充実しており、現地へ足を運ぶ前にぜひ立ち寄っておきたい。
宮ヶ瀬ダム
21世紀に入り本格運用を開始
中津川の流れをせき止めた重力式コンクリートダム。堤高156m、堤頂長375mと首都圏最大級の規模を誇り、上から見下ろしても下から見上げても、その存在感に圧倒される。ダムサイトは上部に『水とエネルギー館』、下部には『県立あいかわ公園』が整備され、ダムの上部と下部をインクライン(往復500円、運行日限定)が結んでいる。全国的にも珍しい定期観光放流は4~11月の特定日に実施。
●神奈川県愛甲郡愛川町半原地先ほか
仏果(ぶっか)山・高取(たかとり)山ハイク
眺望に恵まれ稜線歩きを楽しめる
丹沢山地の東端に居並ぶ仏果山(747m)と高取山(705m)。標高が低いため紅葉や落葉時期も気軽に登山を楽しめる。「撚糸組合前」バス停から住宅地を抜け、仏果山・高取山・宮ヶ瀬ダムを経て「半原」バス停までの標準的な歩行時間は約4時間。車を利用する場合は県立あいかわ公園基点が便利だ。
『年(ねん)茶屋』
隠れ家を思わせるカフェでひと息
狭い坂道の途中にひっそりある古民家カフェ。明治築の養蚕農家跡をセルフリノベーションした空間で、コーヒー550円やこだわりのクリームソーダ550円を手にホッとできる。テイクアウトのパンや焼き菓子も好評だ。ワークショップでの利用や、キッチンカーでの出張販売のため、カフェの営業は通常週1日程度。
塩川滝
八菅山修験第五番行所に数えられる
幅4m、落差15mを誇り、絶えることなく轟音を響かせる名瀑。古くより雨乞いの霊験あらたかな場所とされ、地域の信仰を集めてきた名残が今なお感じられる。秘境感すら漂う滝ながら、駐車スペースから徒歩1分ほどで現地に着く利便性も魅力だ。
●神奈川県愛甲郡愛川町半原948先
中津川管理釣場
太公望から初心者まで楽しめる
町内を流れ下る清流・中津川。ゆったりとした河川敷を活用したのが中津川漁業協同組合が運営する『中津川管理釣場』だ。愛好家向けの「Fishing Field 中津川」「中津川へら釣場」とファミリー向けで貸竿もある「中津川マス釣場」に分かれる。
『大和(やまと)屋』
鳥料理が自慢のリーズナブルな食事処
地元で長く愛される気さくな大衆食堂。定食、丼、麺類と多彩なメニューが揃うが、なかでも鳥料理の人気が高い。店で扱う静岡県産ハーブ鶏はジューシーでやわらかな食感が特徴で、夜営業で提供されるやきとり各種2本300円も気になるところだ。たっぷりの野菜に自家製唐辛子みそを加えた辛みそたんめん800円は隠れファンも多いとか。
HATAYA渓谷の布工房
“糸の町”として栄えた伝統を引き継ぐ
フレスコ(からみ織り)と呼ばれる特殊な技術で織られ、小さく穴の開いたネクタイの工房兼プライベートショップ。かつて糸の保存に使われた蔵には1000本以上のネクタイがズラリ(5000~6000円がメイン)。端切れを再利用したバッグからペンケース650円や小袋1000円といった小物まで、手作りならではの温もりを感じる作品も取り扱っている。
大矢孝酒造
神奈川の酒の知名度を高める牽引役
文政13年(1830)創業の酒蔵。日本酒の仕込みには自前の井戸から汲み上げた東丹沢の伏流水を使用し、全量純米にこだわる。味わいの異なる酒を年に15種ほど製造するが、速醸酛(そくじょうもと)を用いた「残草蓬莱(ざるそうほうらい)」は爽やかで透明感があり冷~常温向き。昔ながらの生酛(きもと)仕込みで熟成させた「昇龍(しょうりゅう)蓬莱」は円熟した味わいで燗がよく合う。
三増(みませ)合戦場碑
北条と武田が相まみえた古戦場
世は戦国時代の永禄12年(1569)、甲斐の武田信玄と小田原の北条氏康が戦った「三増合戦」。双方に多数の死者が出たとされる激戦地跡には、400年後の1969年に建立された碑がある。かたわらに掲示された「三増合戦陣立図」で、現在の地形と見比べてみるのも面白い。
●神奈川県愛甲郡愛川町三増1182-3
卵菓(らんか)屋
産みたてたまごとこだわりスイーツ
県内最大規模を誇る神奈川中央養鶏農業協同組合の直営店で、新鮮たまごとオリジナルスイーツを中心に、たまご料理と総菜も販売。配合飼料にごま、酵母、ウコン、ミネラルを含んだエサで育てた鶏が産んだブランド卵クレタマ(kuretama)はビタミンEが豊富。カスタードクリームのような味わいの、きいろいソフトクリームMサイズ280円も大人気だ。
古民家 山十(やまじゅう)邸
豪農の暮らしぶりを垣間見る
中津地区の豪農・熊坂半兵衛の居宅跡で主屋の建築は明治16年(1883)。半原地区の宮大工棟梁(とうりょう)が手がけたとされる瓦葺(ぶ)き入母屋(いりもや)造りの屋敷で、枯山水の庭園や土蔵も残る。
●観覧無料。9:00~17:00、祝を除く火および土・日を除く祝の翌日休(臨時休あり)。
神奈川県愛甲郡愛川町中津485-1
☎046-285-0015
八菅(はすげ)神社
豊かな自然が残る山岳信仰の場
古くより神仏混淆(こんこう)の信仰の聖地として崇(あが)められてきた八菅山。役小角(えんのおづぬ)ゆかりの修験の場とも伝えられ、山内にあった七社権現(しちしゃごんげん)の系譜が現在の八菅神社へ引き継がれている。一帯は「八菅山いこいの森」として整備され、気軽に森林浴を楽しめる町民憩いの場ともなっている。
●神奈川県愛甲郡愛川町八菅山139
旅のワンポイント
戦時中の弾痕も残る「日本の近代土木遺産」
橋長112.71m、幅員4.5mの平山橋。この橋は中津川にかかる大正期築の3連の鋼橋で、国登録有形文化財に加え、「鉄(かね)の橋」100選にも選定された。
異国情緒がそこはかとなく漂う多国籍タウン
県内有数の外国籍住民が暮らす愛川町。町内には海外食材を扱う店や飲食店、一風変わった寺院が点在し、彼らの生活や文化を支えている。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2022年12月号より