リニューアルオープンしたRockando=六感堂
池袋駅西口から要町通りを歩くこと3分。駅前の喧騒から離れてゆったりとした雰囲気になってきたあたりに店はある。青い屋根と看板には、流れるような赤い文字で「Rockando」。野球チームのロゴみたいでスポーティーだ。訪ねたのはランチをかなり過ぎた時間だったが、小さな間口は客の出入りで忙しい。人気店の匂いがプンプンする。それもそのはず、東池袋にあった『麺屋 六感堂』と、もともとこの場所にあった『中華そば 六感堂』、2つの人気店が統合し、2022年9月にリニューアルして生まれたのがこの店『六感堂』なのだ。
誰が食べても安心でおいしい。そして国産こだわる
国産の豚ガラを低温でじっくり8時間、アクや脂を丁寧に取り除いて作るスープと国産小麦に全粒粉を加えて作るオリジナルの麺。化学調味料不使用で、食材はできる限り国産を使うのがこだわり。「国産の豚肉は脂までおいしい。特にスープを炊いたときに違いが出ます」と店主の渡邊さん。
麺に使う小麦粉は、北海道産の「春よ恋」と「きたほなみ」をブレンドして使っている。渡邊さん曰く、国産の小麦粉には膜がかかったようなトゥルっと感があって旨いとのこと。そんな味覚に鋭い店主が提供する、誰でも安心して食べられる質の高いラーメン。期待が膨らむ。
約5分で着丼。すっきりとしたビジュアルに、思わず「おいしそう!」
湯気の向こうには透き通ったスープ、きれいに整えられた麺、シンプルなトッピングに黒胡椒がパラリ。ついつい「おいしそう」とつぶやいてしまった。食べ物としてとても美しく、ふわりといい匂いが鼻をくすぐる。
黄金色で淡麗なスープはさらりと体に染み込むようなおいしさ。化学調味料不使用だからこそのやわらかな味わいがじっくりと楽しめる。豚ガラのコクはしっかりとあり、かえしに使っている白醤油からは強い風味を感じた。うっすら浮いたラードのしっとりとした甘さを適度な塩味が引き立てる。ガツンとくる派手さではなく、しみじみと実にうまい。
中細の麺は、全粒粉使用と思えないほど軽くすすれる滑らかさ。モチッとしていて芯は押し返すような弾力がある。そして、渡邊さんの言っていた表面の「トゥルっと」感が絶妙で、ストレートな麺にも十分絡みつき、さらりとしたやさしいスープをいい具合に持ち上げる。噛むごとにやわらかく、そして甘く香る小麦粉の風味がスープと抜群の相性だ。
自家製のタレに漬けてからオーブンで1時間かけて焼く豚バラのチャーシューは、適度に脂が抜けて味わいが濃い。脂身の部分もしっとりとしていて、くどさのない甘みが実によく、シャキシャキした九条ネギのさわやかさもいいアクセントになっていた。薄切りなので、スープや麺ともよく絡んで食べやすさも◎。メンマもコリコリとおいしく滋味な味わいがたまらない、するするイケる……。気がつけば、飽きることなくあっという間に食べ終えてしまった。
自分が作るラーメンが一番おいしいと言い切る強さ
シンプルな定番のラーメンに対して週替りの限定メニューはちょっと変わったものも多い。この日は冷製梨と白ワインのジュレSOBA(そば)。ラーメンにフルーツ?しかも梨!?と驚いたが、四季の味を大切に考えて作る限定メニューはここでしか味わえない味として人気で、これを楽しみに来る客も多い。
日本料理やスペイン料理など、20年以上も様々な料理経験を積んできた渡邊さん。「あんまりラーメン好きじゃなくて」ととんでもないことを言い出した。「えー。そんなあ。でも結構長くラーメン作ってるじゃないですか。」と聞くと、脂っこくて単純な味のラーメンだと飽きてしまうという。では自分の求める味とはどんなものか。それを突き詰めていった結果が現在提供しているラーメンだという。
定番メニューであっても、少しずつ常に食材や味を変えている。それは「今の渡邊さんがおいしいと思う味」にフィットさせるため。「自分の作るラーメンが一番旨い」のだ。
味の変化に対してとくに告知はすることはないものの、「出汁ちょっと変えた?」と敏感に反応してくれる客もいて、それがうれしいと話す。店主と客が互いに五感の上の「六感」を磨き、「よりおいしい」に変わり続ける。どんな変化が訪れるのか、今後もとても楽しみだ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ 構成=アド・グリーン