地元・徳之島ではポピュラーな皮付きを使ったトロトロなちゃーしゅー
JR高田馬場駅を出て、早稲田通りを小滝橋方面に歩いていくと『麺友 一誠』の看板がある。看板の矢印に導かれるよう小道を曲がれば、すぐに店舗に到着する。
メニューを見ると「皮付き(皮が付いたちゃーしゅー)」という文字が飛びこんできた。頭の中で「?」となったが、気になったので皮付きあっさりらーめん750円を注文してみた。
店主の松田秀康さんが「私の出身地である鹿児島県徳之島などの西南諸島では、揚げ物や煮物などに皮付きの豚肉を使うことが一般的です」と教えてくれた。
三枚肉(バラ肉)を黒糖や九州産の甘口醤油でじっくりと煮込んでいる。それを炙ってからラーメンの上に浮かべる。まずは気になった皮付きちゃーしゅーから。
東京ではあまりなじみがない皮付きだが、実際に食べてみると、炙ることによって香ばしさがあり、とろける脂の旨みが口に広がる。プルプルの食感でコラーゲンもたっぷりだ。
マイルドなスープのルーツはアメリカ!
豚頭や鶏ガラ、野菜などを2日間かけて丁寧に作った豚骨スープはマイルドな仕上がり。臭みが全くなく、奥深さを感じられる味わいに大満足。別メニューの「背脂入り」ならばコッテリ感と甘さを感じられるという。
博多系の豚骨ラーメンとも、家系の豚骨醤油ラーメンとも違う。
「スープの基本はアメリカで習いました」と松田秀康さん。詳しく聞いてみると、居酒屋を経営していた知人を頼って渡米。新たに開業するラーメン店で、博多ラーメンの職人から作り方を学んだという。その後、ビザの都合で帰国したが、帰国後にもさまざまなラーメン店で修業をし、独自のアレンジを加えてこのスープにたどり着いたという。
徳之島・アメリカ・博多……。各地のいいとこ取りのスープ。徳之島でもよく食べられるチャンプルーのような、唯一無二のラーメンにいろいろと驚かされた。
夜には徳之島の焼酎と郷土料理も楽しめる
店内は家庭的な印象。松田秀康さんと一緒に働いている姉の松田かつみさんとで醸し出している温かな雰囲気が居心地がいい。
松田かつみさんは「夜には地元の人たちが集まり、お酒とらーめんを楽しんでいます」という。徳之島や奄美大島の黒糖焼酎があり、ボトルキープもできるという。メニューを見ると、奄美のパパイヤ漬物をはじめとした黒糖焼酎にぴったりな一品料理も多い。
まるで島で過ごしているような居心地のよさ。黒糖焼酎を傾けながら、皮付きちゃーしゅーつつき、らーめんを食べる。そんな最高の時間を過ごすことができた。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン