感性に刺さる品揃えで作家もネタ探し『東京堂書店 神田神保町店』

ワールドミュージックなど品揃え希有(けう)。「これがあるのが神保町」と石井さん。
ワールドミュージックなど品揃え希有(けう)。「これがあるのが神保町」と石井さん。

まず立ち寄りたいのが1階「知の泉」だ。常連客がチェックを欠かさぬのは書店員10名の推し本が毎日少しずつ入れ替わるから。「読書人のための東京堂」を自負し、文芸、人文社会、芸術系に強し。なかでも2階の音楽・映画演劇コーナーは古い日本映画、第三世界の伝統音楽まで網羅し、「お客さまの趣味を反映しています」と店員の石井隆広さん。テーマに合わせて選書するブックフェアも必見。

通称“軍艦”の「知の泉」。
通称“軍艦”の「知の泉」。
世のベストセラーがない週間ランキング。
世のベストセラーがない週間ランキング。

石井さんおすすめ

『定本』牛尾憲輔 著/太田出版

アニメ『ピンポン』などの劇伴作家活動10周年記念ブック。「音楽での泣かせ方が上手い方! アーティストとの対談も秀逸です」。

『淀川長治「映画の伝道師」と日本のモダン』北村 洋 著/名古屋大学出版会

1998年まで32年間「日曜洋画劇場」で穏やかに解説していた淀川長治。「でも、評論は鋭い語り口。多面性が魅力です」。

『東京堂書店 神田神保町店』店舗詳細

手に取りたくなる仕掛けが満載『三省堂書店 神保町本店(小川町仮店舗)』

フェア棚やZINEコーナーは1階奥に。「本にまつわる雑貨にも注目!」と纐纈(こうけつ)さん。
フェア棚やZINEコーナーは1階奥に。「本にまつわる雑貨にも注目!」と纐纈(こうけつ)さん。

仮店舗の今、多彩な試みを実験中だ。企画担当の纐纈望さんは「今アツいZINEを」と、2025年2月末にコーナーを新設。老若男女が手に取りやすいエッセイや日記、評論を中心にラインアップし、客層を広げている。また、階段ギャラリーやフェアなどもあり、「新しい発見を」と柘植葉月主任。「Entrance to the World」をコンセプトにした、2026年3月始動の新店舗に向け、新しい本の可能性を探っている。

メイン客層の中高年ビジネスマン必読本も充実。
メイン客層の中高年ビジネスマン必読本も充実。
書店員個人的推し本のコーナーもある。
書店員個人的推し本のコーナーもある。

柘植さんおすすめ

『ツユクサナツコの一生』益田ミリ 著/新潮社

日常を淡々と描く作風が多いが、「心に刺さる衝撃が最後にあります。今の生活が当たり前じゃないことを感じさせてくれますよ」。

纐纈さんおすすめ

『いつかたこぶねになる日』小津夜景 著/新潮文庫

フランス在住の俳人による漢詩+エッセイ。「漢詩なのにやわらかく、軽やかで衝撃的。エッセイ自体が詩的でほれぼれします」。

『三省堂書店 神保町本店(小川町仮店舗)』店舗詳細

沼る世界の、さらなる奥深くへ『書泉グランデ』

中世フロアでは甲冑、鎧も販売。「中世に愛飲されたハチミツ酒もあります」と高松店長。
中世フロアでは甲冑、鎧も販売。「中世に愛飲されたハチミツ酒もあります」と高松店長。

5階鉄道フロアは鉄道グッズが満載だし、6階アイドルフロアはサインが壁のよう。「アタマオカシイ本屋」を目指すだけあり、担当の熱の入り方がすさまじい。3階中世フロアでは担当がときどき自前の甲冑を着て徘徊(はいかい)するとか。また、イベントも斜め上。営業中の本屋にあるまじき違和感を探す「嘘の本屋」ゲームを2025年3月に続きGWに開催。高松亮二店長は「本屋の可能性を突き詰めていきたい」と力を込める。

1階は文芸フロアと言いつつ、他では見ない書籍が。
1階は文芸フロアと言いつつ、他では見ない書籍が。
“書泉と、10冊”と銘打つ復刊本も人気だ。
“書泉と、10冊”と銘打つ復刊本も人気だ。

高松店長おすすめ

『裏世界ピクニック10 あり得るすべての怪談』宮澤伊織 著/早川書房

女の子二人が主人公のホラー小説シリーズ最新巻。「現実と非日常の異世界を行き来して探索しますが、シームレス感がいい」。

『邪馬台国はどこですか?』鯨統一郎 著/東京創元社

常識を覆す、歴史検証バトル小説。「バーで話す3人が邪馬台国の説を語っていきますが、酒のつまみのような気楽さです」。

『書泉グランデ』店舗詳細

住所:東京都千代田区神田神保町1-3-2/営業時間:11:00~20:00/定休日:無/アクセス:地下鉄神保町駅から徒歩2分

学生さんとその家族をモーレツ後押し『丸善 お茶の水店』

学習参考書コーナーは2階。「全校全学部約600種の赤本を揃えてます」と中西店長。
学習参考書コーナーは2階。「全校全学部約600種の赤本を揃えてます」と中西店長。

赤い壁と化すのが2階赤本コーナー。大学、予備校、塾が林立する街だけに学習参考書の充実ぶりには目を見張る。「19歳の頃から出没していました」と目を細める中西慶太店長が掲げるのは「学ぶ人と共に」。学生のみならず、親世代向け教育関連書も所狭しと並んで、その隙間にさりげなく書店員の推し本が紛れる。対して店前のワゴン販売が昭和的&牧歌的。CDやDVDを物色する常連も少なくない。

懐かしい曲を流す古くて新しいワゴン販売が健在。
懐かしい曲を流す古くて新しいワゴン販売が健在。
入り口すぐの話題本コーナーは学びに関する本が中心。
入り口すぐの話題本コーナーは学びに関する本が中心。

中西店長おすすめ

『小学生のための文章を正しく読む力を育てる本』南雲ゆりか 著/すばる舎

文章を理解する力をテーマにした中学受験する小学生向け。「正しく読解できれば、他分野の出題も読めるようになります」。

『シン読解力 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』新井紀子 著/東洋経済新報社

現在増加する、教科書を正しく読めていない人たち。その実情とともに読解力の習得法を示す。「学び直しにもいいですよ」。

『丸善 お茶の水店』店舗詳細

住所:東京都千代田区神田駿河台2-8 瀬川ビル1・2F/営業時間:10:00~20:30(日・祝は~20:00)/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄御茶ノ水駅から徒歩1分

取材・文=林さゆり 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2025年5月号より

東京23区のど真ん中に位置し、靖国通りと白山通りが交わる神保町交差点を中心に広がる街、千代田区神田神保町。  この街の特徴をひと言でいうと、なんといっても「本の街」ということになる。  古書店や新刊書店が多くあつまり、その規模は世界一とも言われている。だがそれだけではない。純喫茶、カレー、学生街、スポーツ用品街、中華街などなど、歩くほどに様々な顔が垣間見えるのが面白い。ある意味、東京で一番散歩が楽しい街ではないかと思うほどだ。  
言わずと知れたカレー激戦区の神田・神保町。現在、カレーを提供する店はおよそ400店と言われ、2011年からは年に一度「神田カレーグランプリ」も開催されるなど年々そのイメージは高まることに。また、インド式カレーから欧風カレー、日本式カレーなど、ひとくちにカレーと言ってもさまざまなジャンルの店がしのぎを削っているのも面白いところ。都内でも有数の人気店がひしめき独自に研究した最高の一杯で勝負する「カレーの街」から、さんたつ編集部推薦、マニアも唸る絶対に行きたい26店をご紹介。心地よく刺激的なスパイスの香りに誘われるがまま、カレー欲を満たしましょう!
レトロ建築を紐(ひも)解けば、その街の歴史も見えてくる! 昭和初期の建物が点在する神田・神保町・御茶ノ水エリアで建築史家の倉方俊輔さんが「ここぞ!」と選んだ4つの建築をご案内。
書店や出版社、大学などが集う、知の密集地帯・神保町。パリのカフェ文化にも負けず劣らず、人々のコミュニケーションの場として、このエリアの喫茶店は昔からさまざまな役割を担ってきた。人と人をつなぐ場であったり、思考を手繰る場であったり……。人々に愛され続ける老舗の喫茶に加え、個性的な新顔が共存するのも神保町ならでは。一杯のコーヒーからはじまる、文化を生み出す磁場のパワーを感じることができるはずだ。
古本屋が立ち並ぶ古書の街であり、大学が界隈に数多くある学生街ということもあって、常に活気に満ちあふれている街、神保町。ここには、昔ながらの安くて旨い店がひしめいている。ふらりと一人で立ち寄れるカレー屋をはじめ、本格的な中華料理をリーズナブルにいただける店など、バラエティ豊富なのもありがたい限り。今日はどの店にしようか、よりどりみどり。ランチを選ぶ楽しさを味わおうじゃないか。