自然たっぷりの目黒川散歩の途中で立ち寄りたい『目黒区美術館』内のカフェ/ラウンジ
桜が咲く頃には人が溢れる目黒川沿い。普段は犬を伴って散歩をする人やランナーらが余裕を持って行き交っている。
その目黒川沿いに目黒区の複合施設である『目黒区民センター』がある。広い敷地の中には消費生活センターのような公共機関のほか音楽イベントができるホールや図書館、プールに公園とさまざまな施設が用意されている。『目黒区美術館』もそのひとつだ。
『目黒区美術館』1階奥にはカフェ/ラウンジがある。天井の高いスペースで、中央には大きなテーブルがある。静かにテーブルを囲む人たちの間には、会話をしたり、目が合ったりしなくても、ほんのり一体感が生まれる。
広い窓の外には、目黒区民センターの緑が鮮やかだ。窓の外を眺めていると、猫やカエルがひょっこり姿を表すこともあるのだとか。
ボランティアが淹れるコーヒーと福祉施設で作られるサックサクのクッキー
『目黒区美術館』のカフェ/ラウンジが持つ、最大の特徴はボランティアが運営していること。美術館は地域から支えてもらうことも発足の意義で、ボランティア会員に生涯教育の機会と場を提供することも目的とされている。
美術館に関わるボランティアは現在90名ほどで、そのうちカフェ/ラウンジに関わるのは約50名。曜日ごとのチーム制になっていて、各自が月に1~2回運営に携わっている。中には30年以上のベテランという人もいるのだとか。
営業時間は13時から16時と短く、運営はボランティアによるといった理由からメニューは少ないが、どのメニューも良心的な価格で提供されている。
おすすめは、1杯270円で提供されるハンドドリップコーヒー。一杯一杯、丁寧に抽出される本格的な味だ。
スイーツとして提供されているクッキーは、目黒区内にある福祉施設『しいの実社』で作られたもの。シンプルなクッキーとコーンフレークを外側につけたコーンクッキーがあり、それぞれ複数フレーバーがある。イートインなら1袋180円。コーンクッキーのカレンズをいただいたが、サクサクした食感とカレンズの甘味が効いた軽いクッキーで、ついつい手が伸びるおいしさだ。なお、ホットコーヒーとクッキーをセットにすると400円とますます良心的な価格だ。
展覧会ごとに限定メニューも用意される。2021年に開催された『包む-日本の伝統パッケージ』という展覧会にはお餅で包まれたアイスが登場。2022年春の『東京の猫たち』展では猫のイラストがティーバッグのタグに描かれた紅茶が販売されたりもしたそう。
2022年8月28日まで開催中の『美術館はおもちゃ箱・道具箱』に合わせて用意されたのは、青森のJAアオレンが販売する桃のジュース、2種類だ。どちらも220円という価格設定がありがたい。
限定メニューを選ぶのは、美術館スタッフでカフェ/ラウンジを担当する濵陽子さん。安心して口にできる、スーパーなどでは見かけない珍しいものである、しかも安価であるという3つの条件を兼ね備えた商品だ。最終決定にはボランティアさんの意見も反映されているとのこと。
楽しく運営に関わるボランティアさんたちと35年
『目黒区美術館』のオープンは1987年。2022年は35周年の年に当たる。35周年を記念して、コーヒーのドリップバッグをミュージアムショップで販売している。『目黒区美術館』カフェ/ラウンジの味を自宅でも楽しめる。『しいの実社』のクッキーをテイクアウトして、合わせてプチ土産にしてもよさそうだ。
バリスタがいるようなおしゃれなカフェのコーヒーもいいけれど、ボランティアさんが淹れるお財布にやさしいコーヒーをいただける場所は貴重。展覧会を見なくても散歩の途中に立ち寄ってもOKとのことなので、展覧会観覧後の頭を整理する時間を過ごすのはもちろん、気軽に立ち寄りたいカフェ/ラウンジだ。
取材・撮影・文=野崎さおり