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Profile:山内聖子
呑む文筆家・唎酒師
岩手県盛岡市生まれ。公私ともに19年以上、日本酒を呑みつづけ、全国の酒蔵や酒場を取材し、数々の週刊誌や月刊誌「dancyu」「散歩の達人」などで執筆。著書に『蔵を継ぐ』(双葉文庫)、『いつも、日本酒のことばかり。』(イースト・プレス)。YouTube番組にて「オトナの酒場 スナック菓房」(by国分グループ本社)のママを担当。

20歳にとって日本酒とは怖い存在なのか!?

もうすぐ月が変わろうとしている3月の末日。なんとなく聴いていた昼の某ラジオ番組で、パーソナリティとリスナーが電話で話すコーナーがあり、20歳を迎えたばかりの男子が登場しました。聞けば、20歳になってはじめてお酒を飲むのが、まさに今夜。場所は実家で、両親が見守るなか最初の飲酒体験をするのだという。その男子は、どことなくうれしそうで浮き足立っているのが声から伝わってきました。

なんていい話。20歳など遠い昔のアラフォーの私は、久々に自分の新成人の頃を思い出しながら、その初々しい男子のひと言ひと言を噛みしめるように聞いていたのです。そんなとき。

「お酒は何を飲むの? 日本酒かな?」

パーソナリティが20歳男子に質問します。すかさず、ナイスツッコミ! と心の中で喜ぶ私。私が20歳の時代に比べればだいぶ美味しくなった日本酒ですもの。若い人たちの間でも日本酒のイメージはよくなっているはず。そんなことを瞬時に考えながら、どんな答えが返ってくるのか期待していました。ところが、20歳男子はこう答えます。

「えっ。日本酒は怖いのでやめときます……」

な、なんですと‼⁉ 怖いって⁉⁉

ちびまる子ちゃんのガーンの状態になった私は絶句。がっくり肩を落としてしまいました。もちろん、この男子みたいな人が若者のすべてではないですし、「日本酒が好きなんです」という若い人に出会うことも時々あります。でも「日本酒は怖い」の言葉が私の頭にこびりついて離れません。なぜなら、実は20歳だった当時の私も日本酒は怖いと思っていたのですよ。まさか20年以上経った今でも、同じことを言っている若者がいるなんて。

日本酒は今、過去最高に美味しいと言われ、美味しい日本酒を買える場所も飲める酒場もぐっと増えました。それなのに、現在も「日本酒が怖い」と20歳男子に言われてしまうのはなぜだろう。

若い飲み手を増やすための鍵は日本酒好きな大人が握っている

私が20歳のときに日本酒が怖かったのは、若い自分が気軽に飲んではいけないような重々しい雰囲気があり、飲んでいる大人たちも渋い顔をしていた人が多かったので、味もなんだか美味しそうじゃない。日本酒を飲もうなんて露ほども思いませんでした。

しかし、20歳を過ぎた数年後に私は、アルバイトをしていた居酒屋で公私ともに日本酒を教えてもらい、あっという間に日本酒愛好家へと転身します。理由はバカみたいに単純な話で、日本酒が好きな大人(女将)に出会ったからです。そんな我が身をふり返り、先ほど書いた20歳男子の話に戻すと、日本酒が好きな若者を増やすためには、日本酒を日常的に好きで飲む大人の存在が最も重要ではありませんか。私が20歳の頃と比べて今は日本酒を取り巻く状況はよくなっているのに、その男子が日本酒に手が伸びないのは、両親も含めて周囲には日本酒好きな大人がいないのかもしれません。

というようなことを想像すると、若者に対して日本酒をPRするのも大切ですが、「美味しいよ」とさりげなく日本酒をすすめてくれる大人を増やす方がもっと大事、と私は考えてしまうんです。日本酒の世界にいると実感しにくいのですが、そんなさりげない日本酒好きの大人は、世間でまだまだ少ないのだと思います。(だっていまだに日本酒の消費は増えていないのですから。国税庁の令和2年度の酒類の消費状況より)

では、私が日本酒好きな大人の立場として考えると、口開けがシュワっとガス感があって爽やかな「七田 純米おりがらみ」なんて、20歳男子におすすめしたいなあと思う。蔵元が「大人のクリームソーダ」というように、アンデスメロンぽい風味が特徴。青リンゴみたいな香りも爽快で口当たりがよく飲みやすいんです。さらに飲みやすくするなら、少し炭酸で割っても美味しいですよ。半月切りに薄くスライスしたレモンを浮かべても。酒の甘みがよりスッキリします。

アンデスメロンぽい風味に緑野菜を合わせる

爽快な「七田 純米おりがらみ」を飲んで合わせたくなったのは、緑の葉物と酸っぱい調味料。パクチーなんていいんじゃない⁉ さらに、この酒の地元の佐賀は、私の大好物の呼子のイカをはじめとする魚介類が美味しいので、それも入れたつまみを作りたいと思います。

刺し身用のイカとホタテを1パックずつ、パクチー1束、塩小さじ1、酢を大さじ2、ポン酢を大さじ1、白胡麻、ラー油を適宜。

ボウルにイカと手でちぎったホタテを入れ、塩を振ります。

イカとホタテに粘りが出るまで全体をよく混ぜ合わせます。

パクチーをみじん切りにします。

イカとホタテを入れたボウルに刻んだパクチーを入れます。

さらに酢とポン酢、白胡麻を入れてよく混ぜ合わせます。

最後にラー油をかけて混ぜたら完成です。辛さはお好みでどうぞ。

さあ、飲みますか。「七田 純米おりがらみ」を開けると早速、気泡が立ってきました。

グラスに注ぐとほら、こんなに泡が! 美味しそう! 早く飲もう!

つまみも横に並べましょう。イカのコリッとした歯ごたえとホタテのまったりした味、パクチーとゴマの食感が楽しいつまみです。酒と合わせると、もうこれは爽快な組み合わせというしかない相性ですね。パクチーの青い苦味に、メロンやりんご風味のこの酒がものすごく合います。酸っぱい調味料を合わせて正解。酒の甘みがより引き立ちます。

酒と炭酸を5:5で割り、スライスレモンを浮かべてみました。飲み心地がさらにスッキリ。これからの暑い季節にぴったりな飲み方ですよ。しかしながら、これは確実に飲みすぎる。もうすでに3杯目。日本酒は怖くないですよ。でも、飲みすぎる今夜の自分がめっちゃ怖い……かも。

文・写真=山内聖子

日本酒は、どんな料理にもなんとなく合ってしまう柔軟性が魅力です。中華にイタリアン、フレンチなどでも、合わせたときに対立する料理がほぼないということです。しかし、私は特に自宅だと、日本酒を合わせてみよう、と考察させられる料理よりも、無意識に日本酒を飲みたくなるつまみを好みます。今回は、そんなつまみをつくるちょっとしたコツについて書きます。
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