明治通りの脇に美しい林を発見
原宿駅から喧騒の竹下通りを抜けて、明治通りに出る。今日は千駄ケ谷駅まで歩き通す予定だ。原宿駅から7~8分も歩くと、原宿警察署の向こうに「フォレストインフォレスト」の緑が迎えてくれた。ここは、旧・池田公爵邸の屋敷林を保存した遊歩道で、中を歩けば明治通りのすぐそばにいながら森林浴気分。木々の切れ間からは隈研吾設計の「パークコート神宮前」が見えた。
「特にこの環境を享受できるのが低層棟ですね。マンションの敷地がフォレストインフォレストと切れ目なく繋がり我が庭のように身近に感じられます。木立を連想させるデザインはまさに、新国立競技場や高輪ゲートウェイ駅も手掛けた隈研吾らしさに溢れています」と石川さん。
「パークコート神宮前」の南西側には東郷神社が鎮座。その西側に立つのが「ブリスベージュ神宮前 EAST・WEST RESIDENCE」だ。モダンなデザインの中に、格子窓や深い軒を持つ庇など和の要素を垣間見せる外観が、美しい。
「日本の伝統技法である版築(枠の中に土などを突き固めて造る工法)を用いたエントランスや、大判の石畳を敷き詰めた中庭の水盤など、本物の素材と技にこだわっていますね。プールなど豪華な共用施設に加え、免震構造や先進のセキュリティシステムも備えた安心感が、洗練された暮らしを約束してくれます。若者で賑わう竹下通りから脇道に入りわずか2~3分歩くだけで、この静寂の環境があるのは驚きですね」。
明治通りを挟んで西に進むと、黄色を差し色にした個性的なマンションが見えてくる。1971年築の「ビラセレーナ」だ。石川さんによると「アート作品のような意匠が個性的な、ビラシリーズの一棟ですね。この界隈は、個性的なヴィンテージマンションや、一体開発されたコンセプトマンションが割と多いんです。このビラセレーナはキューブを連ねたような外観が特徴で、上の階にいくほどセットバックさせ各住居がテラスと日当たりを得られる設計になっています。都心居住を考え、プライベートな中庭を中心に住居を配置し、吹き抜けに共用階段と中庭を見下ろすブリッチなど豊かな空間構成になっています」。
「ビラセレーナ」の設計はル・コルビジェの流れを汲む坂倉建築研究所。名建築家が手掛けたためか、マンション内にはいくつか設計事務所も。
センス光る店巡りが楽しいダガヤサンドウ
明治通りを北に向かい、北参道駅方面へ。千駄谷小学校の前には、シルクでの織りにこだわるネクタイ専門店、『giraffe WORK TO SHOP Sendagaya』が。扱うネクタイは500種、蝶ネクタイ200種も! 各ネクタイを、例えばナローでクールな印象のものは34℃、派手な柄のハレの日向けのものは40℃など、体温別で4段階にカテゴライズしているのも面白い。
「店舗北側には桜が咲き、晩秋は西側のイチョウが色づく。北参道周辺は意外と自然が豊かですよね」とスタッフの西本祐子さん。
千駄谷小学校のすぐ西側にあるのが、『Playmountain』。オリジナルの家具をメインに作家の一点ものから工業製品まで「作り手の想い」を感じられる家具・雑貨が並ぶ。店を営むのは内装や家具デザインなどを手掛けるランドスケーププロダクツ。千駄ケ谷~北参道には瀟洒なカフェやフォー専門店など、ランドスケーププロダクツ直営のお店が点在!
もともと、北参道~千駄ケ谷界隈は閑静な住宅地が広がる穴場的エリアだったが、地下鉄副都心線開通以降、しゃれたカフェやアパレル関連、有名シェフの店などが集うように。一帯は「ダガヤサンドウ」の愛称で呼ばれる人気エリアとなった。
そのダガヤサンドウで2016年にオープンしたのが『お食事処 asatte』。こちら、昼夜で定食メニュー各1種に絞り込む営業スタイルがユニークだ。スタッフの車匡史さんいわく「目指したのは、超料理上手な家庭のお母さん。お母さんが作る昼ごはん夜ごはんは基本献立が1種で、それが日々替わるものでしょう? 『今日のおかずはなんだろう?』みたいな楽しみをお客さんに感じてもらえたら」。
『asatte』から西に進むと、落ち着いた住宅地に。少し歩くと「東高原宿ペアシティ」のシンボルツリーが見えてきた。
「こちらは、東高ハウスという会社が手掛けた最高級マンション。幅広い贅沢な階段を上がると高級感あるエントランスゲートが広がります。ガラス張りのエントランスロビーにはシャンデリアが光り輝き、突き当りのガラス越しに日本庭園が浮かび上がります。1976年築ですが、エントランスロビーのシャンデリアと日本庭園の組み合わせは、今の時代でも斬新で風格を感じさせます」。
自転車でピュッと走れば、原宿・渋谷・新宿に行ける
ダガヤサンドウの特徴のもうひとつが、サイクリング関連の店が多いこと。2017年、この地に移転してきたのが『narifuri tokyo』だ。『narifuri』はサイクルカジュアルブランドの草分けで、一見洒落たスーツや普段着のようでいて、サイクリングウェアとしての機能も併せ持つ。スタッフの桑原さんいわく「北参道は落ち着いた街だけど、明治通りを自転車でピュッと走れば、すぐ原宿・渋谷、新宿に行ける。便利な街ですよね」。
今度は明治通りを東に超えて千駄ケ谷方面に向かうと、再び閑静な住宅地に。北参道駅徒歩3分の好立地に立つのが「シティハウス神宮北参道」だ。
「天然石とコンクリート打放しを組み合わせた重厚感あふれる正面外観が印象的。アシンメトリーのデザインで、見る角度によっていろいろな表情を見せています。ガラスパネルを使用したバルコニーが空の青さを反射させ輝いていますね。天然石をイメージさせるホワイトタイルはアプローチ部分と一体感を持ち、バルコニー奥やサイドに彩る黒色がコントラストで映えています」。
その奥では新たなマンションを建設中。このエリアの人気の高さがうかがえる。
鳩森八幡神社まで来ると、ゴールの千駄ケ谷駅はもうすぐ。最後に、千駄ケ谷一帯の総鎮守に手を合わせる。今日見たような素敵なマンションに住めますように――。北参道・千駄ヶ谷の洗練された空気と閑静な雰囲気の極上ブレンドに心つかまれ、煩悩まみれのお願いをしてしまった。
紹介したスポットの詳細
17:00)/アクセス:JR中央線千駄ケ谷駅から徒歩5分