一緒に歩くのは……石川 勝さん
不動産専門家集団の「東京カンテイ」でマンションの評価・調査を担当する、不動産鑑定士。中古マンションに特化した評価方法で複数の特許を取得! 街歩きとともにおすすめマンションを巡る企画を行う、マンションさんぽの達人でもある。「東京カンテイマンションライブラリ」内ではブログ「今週のチラ見物件」を連載、駅で待ち合わせて周辺環境を紹介しながらマンションまで案内するというバーチャルな体験をWEB上で展開している。「選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 基礎編」「選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 実践編」を監修・執筆。
不動産鑑定士目線で、街の解説を見てみよう!
日本最大級の不動産データ量を誇る『東京カンテイ』が、各駅の平均中古マンション価格や平均賃料などのデータを大公開!

赤穂義士ゆかりの街に高級マンションが立ち並ぶ

泉岳寺駅の品川寄り、A2出口を上ると目の前には都市の大動脈・第一京浜。その向こうには、2020年3月に開業したJR高輪ゲートウェイ駅を望む。広大な敷地にそびえる重機とフェンスが、街の変化を予見させる。

地下鉄浅草線泉岳寺駅を出てすぐ、泉岳寺交差点より。

車が行き交う大通りの反対側、緩やかな坂を100mほど上ると泉岳寺の中門だ。「忠臣蔵」で有名な、浅野内匠頭と大石内蔵助ら赤穂義士ゆかりの名刹。いかにも門前町のにぎやかさはなく、マンションに囲まれた静かな住宅地といった印象だ。

中門、山門をくぐると泉岳寺の境内。奥には赤穂義士の墓所も。

「このあたりは三田台地という丘陵で、東京湾が一望できました。江戸時代にはいくつもの武家屋敷が置かれ、明治以降は旧華頂宮邸(現在は亀塚公園)や、上皇ご夫妻がお住いの高輪皇族邸(旧高松宮邸)など宮家の屋敷も。今では都内屈指の高級住宅地となっています」と石川さん。

泉岳寺にほど近い「パークコート高輪ヒルトップレジデンス」は、今でも眺望に恵まれたマンションだ。上階に住めば、品川、お台場、舞浜といった東京湾岸のパノラマを見下ろす、大名のような毎日が待っているのかもしれない……。

「特徴は道路からエントランスまで続く優雅なアプローチ。石タイルを欧風に敷き詰めた通路の意匠を含め、まるで一流ホテルのよう」と石川さん。左半分は港区立伊皿子坂緑地として一般にも開放されている。

高輪皇族邸に隣接する「クラッシィハウス高輪」は、旧宮邸の職員宿舎のあった土地に開発された。

「高輪皇族邸の広大な敷地には緑が生い茂り、都心とは思えないほど静かで優雅な立地です。外観意匠、共用スペース、内装、住戸プランニングを、邸宅建築の第一人者である今井敦氏が担当。共用部には人間国宝の江里佐代子氏の截金作品も展示されています」と石川さん。プロが思わず熱弁するラグジュアリーな5階建マンションだ。

手前が高輪皇族邸に茂る樹々。東西軸が長い敷地を生かしたワイドスパンの住居。

9階建てのテラス棟と47階建ての巨大なタワー棟からなる「TAKANAWA the RESIDENSE」は、白を基調にした洗練されたスタイル。セレブの街としてのブランドが定着した白金エリアはすぐそこ。古い街並みに近代的な住宅が溶け込む泉岳寺エリアとのちょっとした景観のギャップに気づくのは、マンションめぐりの醍醐味だ。

敷地内の庭園は一般にも開放。石川さん曰く「水が流れる癒やしの空間で、四季折々の緑が溢れ日々の散策も楽しめます」。

そんな界隈にふさわしく、ひっそりと佇むのが『三友居』だ。京都の本店は仕出し、出張茶懐石で名を馳せる名店。高輪店では仕出しだけでなく店内の飲食も可能で、舌の肥えた高級住宅地の住人から厚い支持を集める。

雰囲気たっぷりの店構えに期待が高まる。

本店と同じ食材を京都から取り寄せ、京料理の職人が技を振るう。夏はハモ、冬はタイと京野菜、春先のわずかな期間には琵琶湖の本モロコ――。東京にいながら京都の季節を味わえるとは、なんとも贅沢だ。

約20種類の京料理がぎゅっと詰まった竹籠弁当3780円。かなりのボリュームだが、繊細な味わいへの驚きと、次の料理への期待がふくらみ、自然と箸が進む。

寺院と坂道のワンダーランド

さらに街へ分け入っていくと、折り重なるような街の歴史を肌で感じる。

伊皿子坂(いさらござか)は、一説には江戸時代初期に中国からやってきた明人の伊皿子(いんべいす)にちなむという由緒ある坂。その頂上付近、既存の石垣の上に建設された「ファミールグラン三田伊皿子坂」は、総戸数172戸のビッグコミュニティだ。スクエアな輪郭が強調されたシャープなフォルムながら、重厚感ある佇まいは周囲の景観と調和しているようにみえる。

「ゆとりある敷地スペースに植栽を活かし、住棟をコの字に配置。中庭のセンターコートは道路から隠れてプライバシーを確保し、コミュニティの育成に貢献しています」と石川さん。

狭いエリアでも大型マンションが多いのは、武家屋敷跡の広い敷地を生かしたためだろう。それでいて泉岳寺以外にも古い寺院が点在し、その間にはこぢんまりとした一軒家も多い。

地形や地盤に合わせて街がつくられたためか、大きさも傾斜もさまざまな路地、小路が複雑に入り組んでおり、歩いていると方向感覚を失ってしまうほど。映画のワンシーンような、懐かしい街角に出会う味わいは、気ままな散歩を重ねるほど深まっていくだろう。

寺の境内からは子どもたちの笑い声も。
あえて迷い込むのが楽しい坂道。
昔ほら貝が出たとも、くぼ地のため洞というなど様々な説がある洞坂。

街の一角には「高輪消防署二本榎出張所」のレトロな庁舎も。大正8年(1933)に建設された「ドイツ表現主義」のスタイルで、曲線的な独特のフォルムが存在感を放つ。

9:00~16:30は庁舎内部の見学も可能(10名以上は要事前連絡。災害出場などで見学できない場合あり)。

そんな街を歩いていると、他所にはない個性的なお店もみつかる。『ベラズカップケーキ』は、イギリス人の前オーナーが、「ママがつくってくれたような素朴なカップケーキが食べたいのに、日本にはどこにも売っていない!」と考えたのがはじまり。

店内のキッチンで手づくりする可愛らしいケーキ。

家族のおやつに、ちょっとしたパーティに、コンパクトなケーキは使い勝手がよい。甘く香り豊かなクリームと、ふんわりと軽い生地が特徴だ。

現オーナーの芦田均さん(右)が、日本を離れた前オーナーから経営を引き継いだ。本場のレシピを元に、店のキッチンで調理する。

魚らん坂の『サンライン』は、英国風特製カレー1500円の1本に40年間こだわり続けてきた。“泣けるカレー”は、ガツンと辛いというよりも、身体の中からじわじわ熱さが上ってくる印象だ。

同じ人でも、体調によって辛さ、甘み、酸味などの感じ方が変わるという。味わったことのない不思議なカレーだ。

具材が見えないのは、煮込んでよく溶けた肉や野菜を裏ごししてカレーソースに仕上げているため。「医食同源」のカレーを求め、全国から常連客が訪れる。

2025年、泉岳寺の街はどう変わる?

さて冒頭で触れたように、この街は今大きな変化を目前にしている。かつて貨車操車場だった広大な敷地では、大型再開発プロジェクトが進められており、2025年には4棟の高層ビルをはじめ、さまざまな施設が誕生する。

港南側(泉岳寺エリアはビルの向こう側)から高輪ゲートウェイ駅を望んだイメージパース。(画像=東日本旅客鉄道株式会社)

現在のところ、再開発エリアからほど近い地域でも、都会のエアポケットのようなゆったりとした空気感が漂う。「ザ・パークハウス 高輪フォート」は高輪ゲートウェイ駅、品川駅、ともに徒歩10分という立地ながら、非常に閑静な住環境だ。こうした街の様相は、どのように変わっていくのだろうか?

「伊勢神戸藩の本多伊予守が江戸屋敷を構えた土地で、後にソニーの迎賓館があった場所に建てられた」(石川さん)という「ザ・パークハウス 高輪フォート」。
幕末に英国公使宿舎として利用されていた東禅寺。山門の先には別世界のような空間が……。

都市計画によれば、高輪ゲートウェイ駅前には「360度の広場空間」がつくられるという。京料理の弁当や、英国伝統のカップケーキを持ってピクニックなどしながら、“新生”高輪&泉岳寺をじっくりみてみたい。

不動産鑑定士目線で、街の解説を見てみよう!
日本最大級の不動産データ量を誇る『東京カンテイ』が、各駅の平均中古マンション価格や平均賃料などのデータを大公開!

紹介したスポットの詳細

住所:東京都港区高輪1-27-19 /営業時間:11:30~14:00・17:30〜21:30/定休日:木/アクセス:地下鉄浅草線泉岳寺駅・高輪台駅、地下鉄南北線・三田線白金高輪駅より徒歩10分
住所:東京都港区高輪2-1-6/営業時間:10:00~17:00/定休日:月/アクセス:地下鉄浅草線泉岳寺駅から徒歩3分
住所:東京都港区高輪1-5-15/営業時間:11:30~14:00・18:00~23:00/定休日:日~水・祝/アクセス:JR・地下鉄目黒駅から東急バス「東京駅南口」行き10分の「魚籃坂下」下車5分
住所:東京都港区高輪2-6-17/営業時間:見学は9:00~16:30/定休日:無(災害出動などで見学できない場合あり)/アクセス:地下鉄浅草線高輪台駅から徒歩9分

紹介したマンションの詳細

パークコート高輪ヒルトップレジデンス
東京都港区高輪2-1-15
クラッシィハウス高輪
東京都港区高輪1-14-18
TAKANAWA the RESIDENSE
東京都港区高輪1-27-37
ファミールグラン三田伊皿子坂
東京都港区三田4-18-20
ザ・パークハウス 高輪フォート
東京都港区高輪3-19-44

*イラストマップにある残りの5軒については、マンションライブラリをご覧ください。

 

取材・文・撮影=小越健典 イラスト=さとうみゆき