◆散歩コース◆
体力度:★☆☆
難易度:★☆☆
- 登山シーズン 3月~6月、10月~12月
- 最高地点 300m(東京湾を望む展望台)
- 歩行開始地点 7m(浜金谷駅)
- 歩行時間 3時間35分
- 歩行距離 約6km
浜金谷駅
駅から観月台道登山口へ。左の車力道へ進み、高速道路の先で登山道に。岩の回廊から急階段を上がる。
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東京湾を望む展望台
急階段を上がると尾根の分岐。左は展望のない鋸山の本当のピーク。右が展望台への道。すぐに展望台。
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石切り場跡
来た道を戻って岩の回廊から石切り場跡へ。石切り場跡の探索が面白い。
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地獄のぞき
日本寺の北口管理所で拝観料600円を払って境内へ。すぐ百尺観音。地獄のぞきに寄り、千五百羅漢道へ。
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大仏
さまざまな羅漢を観賞しつつ、羅漢道から大仏前参道を下って行くと大仏。展望もあり、休憩にいい場所だ。
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山頂駅
前参道を戻り西管理所を出てロープウェー乗り場へ。上の展望台からの眺めもいい。麓の温泉に寄って駅へ。
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ゴール
浜金谷駅
アクセス:
[行き]東京駅からJR総武線快速で千葉駅、千葉駅からJR内房線で浜金谷駅、浜金谷駅から鋸山ロープウェイで山頂駅、約2時間10分。
[帰り]山頂駅から鋸山ロープウェイで浜金谷駅、浜金谷駅からJR内房線で千葉駅、千葉駅からJR総武線快速で東京駅、約2時間10分。
鋸山には、ほかに高速バス、東京湾フェリーで行くことも可能。高速バスなら東京駅前バス停から木更津駅、内房線に乗り換え浜金谷駅。約2時間。フェリーなら品川駅から京急久里浜駅。東京湾フェリー行きのバスで終点。ここまでで所要時間約1時間30 分。フェリーは40分。出発する場所にもよるが一番時間はかかる。
千葉県は決して山岳不毛地帯ではない。峻厳(しゅんげん)なる伊予ヶ岳や、その近くには富山、そしてこの鋸山もある。問題は他県に比べると標高がほんの少し低い、というだけの話ではないか。
鋸山は山の岩を切り出したことで、山の稜線や山容がギザギザの鋸状になったためにそう呼ばれるが、本名は乾坤山(けんこんざん)。実に立派な山名である。
車力道から展望台へ
鋸山へのアクセスは東京、神奈川からなら高速バスか電車利用、旅情を味わうならフェリーで行くこともできる。今回は電車で浜金谷駅からのスタートに。山頂へはロープウェーを利用すればひとっとびなのだが、それは帰りに利用することにして、登るルートは車力道(しゃりきどう)。これは鋸山から石を切り出していた頃に石を山から下していた道で、石を載せた荷車のブレーキ跡が、いまだに道に残っている。鋸山から切り出した石は金谷石(かなやいし。房州石<ぼうしゅういし>のひとつ)と呼ばれ、最良質の石として、江戸時代末期から、戦後の1985年頃まで切り出されていた。
その石を運んだ道を上がる。一カ所、石が敷き詰められた道に荷車の轍(わだち)の跡がたしかに残っていた。石を運ぶのは主に女性の仕事だったようだ。
車力道をおよそ1時間上がると、目の前に垂直の岩肌。石切り場跡だが、まずは今日最高峰の、東京湾を望む展望台へと上がることにする。急な階段を上がって行くと、本当の鋸山山頂との分岐(ロープウェーのところにも山頂のような表示があるが、そこは山頂ではない)。展望台はすぐ上で、東京湾の絶景が広がっていた。金谷と久里浜を結ぶフェリーも見える。これぞ低山の名峰。
鋸山、なかなかのものである。
また急な階段を下りて石切り場跡へ。高さ80mという垂直の切り出し跡のある岩肌は圧巻。それも見事に垂直に切れるものだと感心してしまう。最盛期は金谷の8割の人が石切りの仕事に従事していたという。
アドバイス
鋸山の本当の山頂は「東京湾を望む展望台」の先にある。山頂はほとんど展望がないが、興味のある人は行ってみよう。その尾根に出る前の階段が急なので要注意だ。
地獄のぞきから100m真下を望む。
石切り場から先へ進み、管理所で拝観料を払って日本寺の境内へ入る。高所恐怖症でなくても足がすくむという地獄のぞきへ。突き出した岩から100m下方を望めるという。
千五百羅漢が奉納されている道を下って行く。正確には1553体の石仏が道脇に残されている。江戸時代に21年かけて刻まれた石仏群である。
次は高さが31mという大仏像へ。これは岩山を3年かけて彫刻したもので、奈良や鎌倉の大仏などとは造りが違うが、大きさはこちらが上。世界平和を祈願しているという立派な像である。御利益も大きいかもしれない。境内にはほかにもいろいろ見どころがあるが、あまり山歩きには関係ないので、パスしてロープウェー乗り場へと向かった。
下山はたったの5分。早いものである。
山歩きメモ
車力道を使わず、観月台コースで行くこともできる。少し距離は短い。また下山を浜金谷駅ではなく日本寺から保田駅のほうに下ることもできる。車道歩きが長くなるが、保田の海岸線を見ながら歩けるのが魅力。
石切り場跡
まるで芸術作品のような石を切り出した跡
江戸時代から1985年まで石を切り出していた場所。切り出された金谷石は主に建築用で、家屋、塀や門柱のほか、お台場の砲台などにも使われた。凝灰岩で、耐火性が高い割に加工がしやすいとか。一番高いところは96mほどの絶壁になっている。
房州大福温泉 かぢや旅館
昔は石切りの道具を作り、今は海の幸を振舞う宿として有名
鋸山の麓にある旅館で、日帰り入浴ができる。創業は1854年、最初は鋸山で使う石切りの道具を作る鍛冶屋だったそうで、その後に旅館に転業した。地元金谷漁港で獲れた新鮮魚介の宿として知られ、秋から春先は、名物タカアシガニ料理を食べられる。
●12:00~19:00、料金700円。不定休。JR内房線浜金谷駅から徒歩5分。☏0439‐69‐2411。
取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 首都圏日帰りさんぽ』より