朝6時にオープン!? 早朝営業、はたしてそのワケは……
「北本の頃は、朝5時オープンだったんですけどね」と、店長の山邊純弥(すみや)さん。
「北本」とは、初代である山邊義明さん・幸恵さん夫婦が営業していた埼玉県北本市のこと。今と同じ店名で、約20年間地元に愛されてきたが、その人気ゆえにパンの生産量が追いつかなくなり、店舗拡張のため浦和に越してきた。それと同時に息子の純弥さんが2代目を継いだ形だ。
それにしても、5時とか6時とか開店時間としてはかなり早い。理由を純弥さんに聞いてみると、「パンは朝食べるもの!って思ってるんです。だから、通勤・通学前の朝食に間に合うような時間でなくちゃ」とのこと。
昼前には全部焼き上がり、14時過ぎには閉店するため、たくさんの種類が揃っているのはやはり午前中。なるべく早い時間に訪れたい。
種類の多さが魅力! 毎日違うパンに出合える
パンの予定表が黒板に書いてあった。食パンは毎日だが、イギリスパンやミルクブレッドなど、曜日によって焼かれるものもある。そして、サンドイッチ、デニッシュ、あんぱん、メロンパンなど、黒板には書かれていないパンもあるので種類は本当に多い。
「その日仕入れたものによっても、変わりますよ」と純弥さん。
毎日違ったパンに出合えるのはとてもうれしいが、ついついたくさん買ってしまいそうだ。
幅広く愛される、特別ではない「日常のパン」
「いつものパン」といいながらも、目新しさやしゃれた感じもあるのは大きな魅力だ。今回いただいたパンとクッキー、そしてカフェラテを紹介しよう。
なんとも具だくさんなサンドイッチは、純弥さんのお母さんである幸恵さんの担当。気分で入れるものが変わるという。この日は有機栽培の粉を使ったライ麦パンに、牛肉のパストラミ、焼いたズッキーニとインゲン、レタス、トマト、スクランブルエッグなどが大盛に入っていた。これ一つで十分なずっしり感。
たくさんの野菜や胡椒のきいたパストラミなど、具のおいしさもさることながら、これを受けとめるライ麦パンのおいしさも特筆もの。粉の風味が感じられる、ぱりっと香ばしい耳は香ばしく、野菜の汁や肉の脂を吸ってしっとりした部分もおいしい。
品目が多いのでバランスもよく、その日によって具が変わるので、毎日食べても飽きない。まるで日替わり定食のようだ。
カルダモンロールはあまり聞き慣れないが、スウェーデンで人気のお菓子だそう。ふんわりとした甘みのあるパンに、カルダモンのさわやかな風味! コーヒーとの相性がとてもいい。パンはしっかりとした味わいなので、食事としても、おやつにもOKだ。
カントリービスケットはグルテンフリーで、動物性食品を食べないヴィーガン対応。中に入っているのはもちろんヴィーガンチョコレートだ。小麦粉や卵不使用と聞くと、「おいしいのかな?」とちょっと身構えてしまうが、さくさくほろりとほどける食感がたまらなかった。甘さもちょうどよく、チョコレートもいいアクセント。結構な大きさだが、もう一枚欲しいと思えるおいしさだ。ぜひこれもコーヒーといただきたい。
オーロラのように広がっていく、家族の想い
コーヒーがおいしく、質が高いのは、純弥さんがコーヒーの焙煎士として働いてきた経験あってこそ。カフェをやりたいと思っていた純弥さんは、浦和への移転がきっかけとなり、ご両親から店を継ぐことを決心した。
ちなみに、純弥さんの兄夫婦も北本・浦和の両方で店を切り盛りしていた。今では人気となっているグルテンフリー・ヴィーガン対応のスイーツは、アレルギーを持つ妻の経験により生まれた商品だという。2021年、兄夫婦は独立し、山梨県韮崎市に『Daughter』というカフェ&ベーカリーをオープン。こちらも人気を博している。
「イエローナイフ」というちょっと不思議な店名は、オーロラが見られることで有名なカナダの町・イエローナイフから。「いつかオーロラを見てみたい」という初代夫婦の夢が込められているそう。
家族・スタッフの仲の良さが感じられるあたたかな雰囲気と、徐々に幅を広げる商品内容に、これからの広がりが楽しみだ。
取材・文・撮影=ミヤウチマサコ