霧島鶏の焼き鳥は希少な部位も各種そろう『炭焼kitchen ばんから』
宮崎県産の銘柄鶏「霧島鶏」を使い、土佐備長炭で焼いた焼き鳥。丸鶏で仕入れるから黄身がちょうちんのようについた卵管「ちょうちん」や、砂肝の周りの「砂おち」など希少な部位もそろう。焼き鳥は単品200円〜、6串コース1200円、8串コース1600円。焼酎の種類が多く、芋・麦・米・黒糖とさまざまな種類がずらりと並ぶ。なかでも宮崎の川越酒造が作る芋焼酎は、無農薬、有機栽培の「黄金千貫」を、かめ壺で仕込んだ絶品。
『炭焼kitchen ばんから』店舗詳細
酒場愛が生んだ老舗のごとき佇まい『大衆酒場 増やま』
開店から昼飲み客が続々。2014年創業のまだ新しい店だが、もう船橋随一の繁盛店に。「僕自身が大衆酒場を大好きで。コの字カウンターも、あえて昔ながらの木材で作りました」と代表の村田良介さん。ずらりと並ぶ短冊には肉豆腐216円やホイス302円など王道メニューの中、モヒート風の酒、紅しょうがのかきあげや、トリッパを意識しハチノスだけを使った煮込み各324円など若者ウケしそうなものも。「若い人にも大衆酒場の暖簾をくぐってほしいんです」。
『大衆酒場 増やま』店舗詳細
肴のうまさで地元に愛され65年『いづみ屋』
3代目の実川貴則さんが「朝絞めの豚や鳥に毎日串を打ってます」と言えば「うちは何でも盛りがいい。串ものは1本約60gありますから」と2代目の多喜夫さん。大きなつくねをかじれば白ゴマの風味とともに肉汁があふれ、豚バラを噛めば甘い脂がビールを誘う。ほかにバラホルモン焼き637円や馬刺しユッケ740円などもうまいが、一推しは初代女将考案のガツとネギ味噌。甘辛い味噌とコリコリ感が癖になる店の魂の一品!
『いづみ屋』店舗詳細
肴よし空気感よしの小さな名店『居酒屋 縁』
船橋市地方卸売市場での仕入れから仕込み、接客まで大将の工藤隆司さん一人で切り盛り。濃厚な船上絞めの大アジのなめろう780円など、料理は飲んべえのツボを押さえたものばかりで量も十分。「人件費より材料費をかけたいんです」との言葉通り、価格は市場に合わせて上下することも。そんな大将の負担を減らそうと、ある常連は「取り皿はこれ使い回すよ」。落ち着いて飲めるよう20歳未満は入店NG。紳士淑女が集う総武線沿いの隠れ家なのだ。
『居酒屋 縁』店舗詳細
熟練の目利きが選ぶ鮮魚でほろ酔う『百花亭』
店主・金川鐘保(かながわしょうほ)さんは船橋の市場に通い40年。「目利きには自信があるし、向こうも安く出してくれる。魚は色艶が大事。女性と一緒です」。自慢の鮮魚は刺し身、握り、焼き、煮魚と幅広い調理法で味わえるが、出色は大トロ。赤身など4種が彩る極上まぐろ盛り合わせ1900円。親指ほどの厚さの中トロは、脂が舌でスッと溶ける。甘みの余韻が残るうちに唎き酒師の店主が選んだ日本酒を流し込めば、旨味がふくらみ無上の幸せ!
『百花亭』店舗詳細
爆安酒肴とマスターの人柄で笑顔咲く『大衆 あさひ』
名刺サイズのベーコンがたっぷりのベーコンエッグは290円、刺身5種盛りが390円と驚愕の安さ。「安くてもマスターは料理上手。うなたま390円サイコ~」「客のキャラに合せて話しかけてくれるマスターの人柄が一番です」と常連が語る渕上浩さんを慕い、昼は主婦、夜は地元の若者などで店内がごったがえす。杯を空け、もう一軒はしごに出ようとすると「いってらっしゃい!」と優しいマスターの声。地元飲んべえに愛されるわけだ。
『大衆 あさひ』店舗詳細
イワシの伸びしろをとことん追求!『いわし・江戸前水産ふなっ子』
イワシをメインに35年。今も朝10時過ぎから仕込みを始め、1日300匹以上イワシをさばく。「イワシは青魚のなかでも焼く、煮る、揚げるなど調理法は豊富。骨の抜き方ひとつでも常に新しい発見がある」と2代目の村山考志さん。定番のいわしのユッケ450円やさんが焼680円に加え、2代目考案のいわし丸ごとコロッケ750円などイワシメニューだけで30品も。めくるめくイワシ料理の世界に、地酒がアンストッパブル!
『いわし・江戸前水産ふなっ子』店舗詳細
ビールを加速させる牛ホルモンの串『よっちゃん』
串焼きの品書きを見るとミノに丸腸、センマイと、まるで焼き肉屋のよう!「ここまで牛の生ホルモンが揃うのは仕入れる精肉屋さんとの信頼関係があってこそ」と焼き場に立ち約30年の津野田裕史さん。煮込みも、牛すじ煮込み塩など牛の部位を中心に8種もそろう。口でとろける丸腸や外カリ中プルのミノ、コラーゲンたっぷりの牛すじには、爽やかな生ホッピーが最高。脂を洗い流したら、2杯目は瓶ビールの赤星480円で!
『よっちゃん』店舗詳細
新たなる魅力の発見の連続!『鮪LABO』
店を仕切る日永田泰佑さんとタッグを組む、もう一人のオーナーが築地や大田市場のマグロ卸商。ゆえに本マグロ、メバチ、それに天然、養殖など、仕入れは時々で変わり、希少部位も手に入る。そんな魚種、部位ごとによさを引き出した料理の心憎いこと。たとえば顎。「骨周りの肉がうまいので」と、揚げてから甘辛醤油タレに漬けたスペアリブは、サクッしっとり~。自分でかく、巨大中落ちのとろけるような甘みは、はじめ日本酒、〆にご飯セットで攻めたい。
『鮪LABO』店舗詳細
/定休日:日・祝/アクセス:京成本線京成船橋駅から徒歩6分
スタッフもつまみもナチュラル志向『下町バル スパイス』
温かくてちょっと天然ボケの大嶋ひろみママとひでよさんを慕い、酒好きが集う。「マイナス思考の方は入店お断り、オーダーは3つまでしか覚えられません(笑)」。自家栽培の無農薬野菜を使った採れたて野菜サラダ300円や韃靼そばの実がセットに付くそば焼酎500円など体にやさしいものを心がけており、食べすぎ飲みすぎの罪悪感も酔いの彼方へ。締めはスパイス十数種を使い、後から鮮烈な辛さがくるカレーライス500円を!
『下町バル スパイス』店舗詳細
ドアを開ければ、酒欲あおる燻製香『コックダイナー離』
コンセプトは「燻製(くんせい)料理は値段の高い店が多いけど、立ち飲みで気軽に食べてほしい」。カウンター奥の巨大燻製機で温燻や冷燻、熱燻などを駆使して作る燻製つまみは常時15種以上。1週間以上ハーブ塩に漬けたあと桜のチップで燻す自家製ベーコン500円に加え、刺し身やうなぎ各500円、たまねぎ天300円など珍しい燻製も。スモーキーなつまみとピートの効いたウイスキーやハイボールを合わせれば、香りの二重奏に恍惚。
『コックダイナー離』店舗詳細
ワンコインでプレミア酒の幸福『立ち飲み日本酒 2。2 坪』
日替わりで約20種そろう日本酒リストを見ると、当日は十四代や田酒の文字が! 希少銘柄もすべて90mL500円均一という安さに驚く(熱燗・ぬる燗は180mL1000円)。「ビールや焼酎は置かず日本酒一筋。国酒である日本酒好きの人を増やしたいんです」と市道喜美代ママ。つまみのたたみいわしを卓上七輪で炙れば、香ばしい匂いだけでまず一杯。頃合いで口に運び、地酒を傾ければイワシの旨味が膨ふくらみ口内調理の完成!
『立ち飲み日本酒 2。2 坪』店舗詳細
電車の音と常連の会話が心地よいBGM『町かど酒場 TIPSY』
「バーホッピング文化を津田沼にも根付かせたくてノーチャージの立ち飲みを始めました」と店長の森琢人さん。黒板の日替わりメニューを見れば、山形のだし冷奴350円やツナ缶アヒージョ390円などつまみも酒も大体500円以下ではしごしやすい価格だ。森さんは隣の『Ann’sBar(アンズバー)』での店長経歴もあり「味噌カルボナーラなどフード類もうまい」と常連が太鼓判。気さくな常連や店長とワイワイ飲むのが楽しく、はしごのはずがつい長居。
『町かど酒場 TIPSY』店舗詳細
鶏の油を注ぎ、炎の中で焼きあげる絶品のももやき『骨付地鳥炭焼 日向 船橋店』
宮崎名物の地鳥の炭焼きをいち早く県外に持ち出したのがこの店。鉄板の上で湯気を立てる熱々の「名物ももやき」は、コリコリとした食感の中から旨味が詰まった肉汁があふれ出す。見た目こそ煤のような黒さがあるが、この表面の風味がまた絶妙なのだ。鶏肉は全て宮崎県から仕入れた地鶏で、30年以上にわたって信頼を預けている養鶏場から直送している。佐藤 黒や黒霧島、山ねこなど九州産の焼酎もそろう。
『骨付地鳥炭焼 日向 船橋店』店舗詳細
行きつけに加えたい、懐かしい香りの焼き鳥屋『鳥一』
京成船橋駅前に赤提灯をひとつ掲げる創業1973年の焼き鳥店。暖簾(のれん)をくぐると、威勢の良い「いらっしゃいませ!」の声に迎えられる。令和から一気に昭和40年代へタイムスリップしたような店内には、「板垂れ」と呼ばれるメニューが記された木札がずらり。鶏肉の鮮度の良さが実感できる鳥わさ、備長炭でじっくりと焼き上げる焼き鳥、寒い季節には煮込み料理も出しており、ビールが進むこと請け合いだ。
『鳥一』店舗詳細
妖しい階段の先に豊穣なる日本ワイン『泥棒日記』
日本ワインの誠実な生産者を応援したいと、木村未穂さんが2022年に開店。「農薬や防腐剤を極力使わない、自然や人の体に寄り添うワインを選んでいます。最近は食用ブドウで作るおいしいワインも!」。千葉県八街市の無農薬ブドウで造られる「いろは」や北海道で有機栽培された山幸(やまさち)で醸す「トイ・ホプニ」などボトルは200種余。料理は佐倉のエリー農園の有機野菜や県産いも豚など地元食材が主役だ。
『泥棒日記』店舗詳細
ナチュールとグリルの口福な出合い『グリルとワイン COCCIO 831(コッチョ はちさんいち)』
看板は、素材の味を活かしたグリル料理。「じっくりとうまみを引き出すときは厚さ3cmの溶岩石、香ばしくパリッと焼くなら南部鉄器と使い分けてます」と村田雅史さん。鼻に抜ける野性味が絶妙なラムチョップ1本1408円や、1カ月寝かして甘みが増したジャガイモのポテトフライ550円で赤ワインが無限ループ。スパークリング以外は自然派ワインで、グラスは全部1000円以下なのもうれしい。
『グリルとワイン COCCIO 831』店舗詳細
大型セラーを備え酒への偏愛度は船橋隨一『自然派ワインとアテ F』
「開業以来、ワインのナチュール比率が上がり、3000本近くストックがあります」と橘唯(たちばなゆい)さん。現地へ足を運んだスロベニアの「ムレチニック」1760円やイタリアの老夫婦が醸す「ボルガッタ」990円など、生産背景の見える美酒がずらり。ほかに日本酒やシングルモルト、大多喜で造られたボタニカル・ブランデーまで酒の顔ぶれは幅広く、原木から切りたてを出す生ハム&サラミ盛りをどれに合わせるか悩む!
『自然派ワインとアテ F』店舗詳細
深淵なる琥珀色の世界に耽溺『ゆる燗酒場 煮りん』
船橋の2号店として2021年に開業。「千葉市の1号店と同じく燗酒はもちろん、熟成酒にも注力。燗酒は合う料理が幅広く、熟成酒は想像以上に“化ける”のが魅力です」と清水貴司さん。30種以上揃う熟成酒から、平成28・29年と酒造年度の違う2種で造った「冨玲(ふれい)」煮りんブレンド1050円を頼むと、ビターで熟味が力強い。白レバー刺風(さしふう)550円とともに味わえばレバーは口で溶け、うまみの余韻がふわり。
『ゆる燗酒場 煮りん』店舗詳細
『ならしのクラフトビール むぎのいえ』は、ご近所にも愛されるブルワリー酒場
各ビールの名前を見ると「玄なる」や「紫薫(しくん)」など、どこか文学的。「谷津で醸造している意味・物語性を大事にしてます。ペールエールの谷津遊路は、干潟の野鳥のさえずりや花を想起させる華やかな香りに仕上げました」と代表の今井貴大さん。2坪の工房で醸造し、製瓶・製缶をしないので、飲めるのはここだけ。ただ、マイクロブルワリーに多い気取った雰囲気はなく、接客は温かい。家族連れや学生も集う、ご近所の愛され酒場でもあるのだ。
『ならしのクラフトビール むぎのいえ』店舗詳細
朗らか母娘と燗酒で心ぬくぬく。『へちもん』[京成津田沼]
「料理は母の味」と娘の真貴(まき)さんがいうように、イリコと昆布で取った出汁や愛媛県八幡浜(やわたはま)直送の魚介など、愛媛出身の母・こずえさんならではの味付けと食材。10数年前、真貴さんは燗酒の魅力に開眼し、猛プッシュ!「はやりは追わず、造り手を知ってる蔵しか仕入れません」。燗酒と母の味の相性はすこぶる良く、鳥取の「日置桜」生酛純米酒 本懐の盃1100円はカワハギ刺しや真鯛刺しのうまみに寄り添う。いつも元気なこずえさんの笑顔で、酔い、極まれり。
『へちもん』店舗詳細
取材・文=鈴木健太 、新井鏡子 撮影=山出高士、丸毛透、新井鏡子、オカダタカオ