其の一 三ちゃん食堂〈新丸子〉

昼から食堂と居酒屋の両面使い

相席という昔ながらの大衆食堂。カウンター席もある。
相席という昔ながらの大衆食堂。カウンター席もある。

開店は昼の12時。細長く並べたテーブル席に、焼肉丼やチャーハンをかき込むサラリーマンと、串カツなどをつまみに昼酒を楽しむ赤ら顔が相席する。そう、これが『三ちゃん食堂』の日常の光景なのだ。1967年の創業当時は中華料理屋だったが、2代目の中山知久さん曰く「お客さんの要望でいつの間にか増えちゃった」品書きは、なんと140種。おひたしにハムエッグ、餃子など和洋中が100円台から。短冊とにらめっこしつつ、昼飲みの作戦を練るのも一興だ。

中生450円、ハムエッグ300円、チーズ入りウインナー450円、ヤキ肉ライスのあたま650円など。
中生450円、ハムエッグ300円、チーズ入りウインナー450円、ヤキ肉ライスのあたま650円など。
家族経営で中央が2代目、右が3代目だ。
家族経営で中央が2代目、右が3代目だ。

『三ちゃん食堂』店舗詳細

住所:神奈川県川崎市中原区新丸子町733/営業時間:12:00〜20:15/定休日:水/アクセス:東急東横線・目黒線新丸子駅から徒歩3分

其の二 呑み喰い道楽 石松〈野毛〉

鯨に青魚、旨い刺し身が自慢

鯨刺し身1320円、はまぐり酒蒸し880円、もつ煮込み550円。
鯨刺し身1320円、はまぐり酒蒸し880円、もつ煮込み550円。

飲んべえが彷徨う野毛仲通りで、名物の鯨料理を酒のアテに、昼過ぎから暖簾をくぐる人も多い。地元市場から仕入れる鯨をはじめ、イワシやアジ、サバなど鮮度が求められる青魚も絶品揃いで、刺し身だけでも20種以上、焼き、揚げなど好みの調理法でも味わえる。先代は元レーサー。車をこよなく愛する常連も多く、居心地のよさに3〜4時間飲んでいる人も。「長っ尻、大歓迎です」と、甥の堀弘樹さんが先代の遺志を受け継ぎ、店の味と暖簾を守っている。

店内には短冊メニューとともにレーシングマシンの写真が飾られている。
店内には短冊メニューとともにレーシングマシンの写真が飾られている。

『呑み喰い道楽 石松』店舗詳細

住所:横浜市中区花咲町1-41/営業時間:15:00〜22:00LO(土・日は14:00〜)/定休日:月・第3火/アクセス:15:00〜22:00LO

其の三 いづみや本店〈大宮〉

懐の深さを感じる名物メニュー

昭和の趣漂うノスタルジックな店内。昼間から一人酒を楽しむ至福も。
昭和の趣漂うノスタルジックな店内。昼間から一人酒を楽しむ至福も。

大宮駅東口の目と鼻の先にある、昭和の面影を色濃く残す大衆酒場。戦後すぐの1947年から変わらぬ佇まいで、朝10時には開店する。温もりたいなら、やかんから豪快に盛りこぼしで提供される熱燗250円を。具沢山なもつ煮込み170円もこの店のコスパの高さを象徴する一品だ。ありがたいことに、客のほとんどが注文するこの名物は、30年間値上げをしていないという。“大宮の名酒場”と長年愛される理由は、何よりこの一品が物語っている。

まぐろぶつ390円、わかめときゅうりの酢の物190円、もつ煮込み170円、肉豆腐250円。
まぐろぶつ390円、わかめときゅうりの酢の物190円、もつ煮込み170円、肉豆腐250円。
梅割250円。
梅割250円。
熱燗は古参の店員さんがやかんから直接注いでくれる。
熱燗は古参の店員さんがやかんから直接注いでくれる。
大宮駅東口を目の前にして立つ。
大宮駅東口を目の前にして立つ。

『いづみや本店』店舗詳細

住所:埼玉県さいたま市大宮区大門町1-29/営業時間:本店10:00~翌2:15、第二支店9:30~22:00/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄大宮駅から徒歩1 分

其の四 大衆酒場 増やま〈船橋〉

昼下がりから地元酔客が憩う

店内はコの字カウンターのみ。キンミヤのボトルキープがずらり。
店内はコの字カウンターのみ。キンミヤのボトルキープがずらり。

自身、大衆酒場が大好きという代表の村田良介さん。「若い人にも暖簾をくぐってほしい」と2015年に創業し、昼飲みからにぎわう繁盛店に。肉豆腐やイワシ刺といった定番にまぎれ込む、アボカド天ぷらやサモサなど若者ウケする品書きにもそそられる。ボトルキープの数がおびただしいキンミヤは、レモンやお茶割りのほか、モヒートで楽しむという今風の飲み方も新鮮だ。敷居は至って低く、一人客でもコの字カウンターになじんでしまう。

肉豆腐に煮込みをかけた「重ネ」528円、マグロ、タイ各495円、イワシ385円。紅しょうがのかき揚げ330円。キンミヤモヒート385円。
肉豆腐に煮込みをかけた「重ネ」528円、マグロ、タイ各495円、イワシ385円。紅しょうがのかき揚げ330円。キンミヤモヒート385円。

『大衆酒場 増やま』店舗詳細

住所:千葉県船橋市本町4-5-18/営業時間:14:00~23:00(日・祝は~21:30)/定休日:無/アクセス:JR総武線・東武鉄道アーバンパークライン船橋駅、または京成電鉄京成本線京成船橋駅から徒歩3分

其の五 市民酒蔵 諸星〈新子安〉

市民酒場としての歴史ある老舗

奥へと7mも続く木のカウンターは特等席。
奥へと7mも続く木のカウンターは特等席。

創業は昭和初期、かつて角打ちだったという店。だからか、蔵元直送の「東鏡」をはじめ日本酒の種類は豊富、ほかにも焼酎、ビール、ホッピーとなんでも揃っている。店の歴史と渋さを象徴するのは、横並び一直線に延びる年季の入った木のカウンターだ。名酒がずらりと並んだ酒棚と短冊をも肴に楽しめる。時代を遡れば闇酒が横行した戦時中、200あった県主導の市民酒蔵の一つだったが、今ではその歴史と昭和風情を受け継ぐ希少な一軒となっている。

もつのにこみ480円、いわしのさしみ420円など。千葉の名酒「東鏡」360円。
もつのにこみ480円、いわしのさしみ420円など。千葉の名酒「東鏡」360円。

『市民酒蔵 諸星』店舗詳細

構成・文=都恋堂 撮影=本野克佳 山出高士
MOOK『散歩の達人 東京町酒場』より