ボリューム満点、名物タンメン。『天龍』[亀戸]
自分が知る限り、タンメンの器としては最も大きいと思う。1967年に創業した『天龍』は、2019年3月に一旦(いったん)閉店するも、2020年9月に復活オープンした。作り手こそ変わったが、丼も浅草開化楼の特製麺もレシピも、そして量も当時のままだ。大量の野菜をじっくりと鍋で煮込むため、野菜の味がしみ出して、あっさりながらも滋味深いスープに仕上がっている。餃子も同じく大ぶりで、食べ応え十分。餡はショウガがしっかり効いていて、タンメンと交互にいただけば、最後までテンポよく食べられる。腹いっぱい食べたい時に、もってこいのタンギョウだ。
『天龍』店舗詳細
素材の味が生きる、色鮮やかな一杯。『白龍トマト館』[新江古田]
ひと目見て、目新しいタンメンだなあと思ったが、初代が開業した1957年から名物というから驚きだ。豚バラで出汁を取った澄んだスープに、白くてやわらかい優しい麺が浮かぶ。食べ進めるうちにトマトの酸味、白菜の甘み、セロリの香りがどんどん溶け出していき、くせになるみずみずしさだ。玉子の羽根付き餃子は、ピリッとショウガが効いていて、プレーンな玉子の味ともタンメンとも相性良し。卓上のにんにく醤油は、餃子だけでなくタンメンにも投入してみてほしい。すると薄口で上品だったスープからにんにくの風味が立ち上り、これまたやみつきになる旨さなのだ。
『白龍トマト館』店舗詳細
真摯な情熱が込められた“竹ノ子”。『奇珍樓』[山手]
創業97年。初代から受け継ぐ仕事を愚直に守り続ける真摯な店だ。たとえば乾燥メンマ。干した堅い竹の皮を、こまめな火入れと水替えを繰り返しながら10日かけて戻していく。厚さ約3㎜の皮はふっくらと厚みを持ち、約2㎝に。そこに秘伝のタレで味付けするという、驚異的な手間のかけようなのだ。メンマをもっと食べたい!という客の声から、竹ノ子そばが誕生。そこに極細の自家製麺がたおやかに寄り添う。噛みしめて味わいたい。
『奇珍樓』店舗詳細
湖南省出身の初代から継ぐ薬膳。『味芳斎 支店』[御成門]
「父親が子供の頃食べていた味を再現したいってね」と、店で提供しはじめた日のことを振り返る藤山振東さん。タイプの異なる2種の唐辛子、花椒、八角など約10種の香辛料と30㎏にも及ぶ牛のほほ肉を合わせ、煮込むこと約3時間。一日寝かせて味を落ち着かせて初めて料理に用いられる。ほろりとほどける牛肉からしみだす辛味と旨味。毛穴から噴き出す汗。みずみずしいモヤシは口のほてりを鎮める安らぎの味。混ぜずにとっておこう。
『味芳斎 支店』店舗詳細
女性を虜(とりこ)にする“レバタン“。『珍珍軒』[上野]
鶏ガラや豚骨で取った塩味のスープのタンメンにレバニラ炒めをオンしたレバニラ湯麺。通称、レバタンである。レバーには隠し味に醤油やゴマ油を少々。香ばしくもパワフルな味わいを演出。3代目・河田幸一郎さんも「僕自身、他店で同じメニューを見たことがありません」と断言。キャベツやニンジン、野菜たっぷりで女性客にも人気のメニューだ。
『珍珍軒』店舗詳細
豚骨+卵麺+とろろの一体感。『龍朋』[神楽坂]
品書きの「とろろラーメン」の文字に、一瞬で目が止まる。店主 ・松﨑陽子さんによると、かつて青森県出身の3兄弟が同店でアルバイトをしていたのを機に、青森の名物を取り入れようと生み出したとか。スープは、開店当初は澄んだ醤油味だったが、12年目にして突如、豚骨に路線変更。「うまい具合に豚骨ブームにのってお客さんが増えてね。いや、マジで」とご主人は何ともファジー。鶏とレタスを盛る「東京ラーメン」など、自由なアイデアが光る。
『龍朋』店舗詳細
プリプリ、新鮮なカキが主役!『中国料理 小花』[東京]
生カキの水揚げの解禁日に合わせ、毎年10月1日に登場する、新鮮生牡蠣のスープそば。この日を待ちわび、遠方から足を運ぶお客もいる。同店は中国料理店でありながら、江戸前の職人による寿司も楽しめる稀有な店。毎日、河岸で新鮮なネタを買い付けることが、生ガキを惜しみなく用いる名物の発想につながった。カキの衣はサックリ香ばしく、噛めばじゅわりと濃厚な汁気。スープに油気とカキの風味がしみ、得もいわれぬ旨味が混然一体に。
『中国料理 小花』店舗詳細
珍しい餃子入りらーめん。『嵐屋』[武蔵小金井]
店主五十嵐裕司さんが目指すのは、いつものお客がまた来てくれる店。餃子は修業時代に働いていた店の味を引き継いだもので、多くのお客がその小ぶりな餃子をサイドメニューとして注文する。「小さいから水餃子にもぴったり」の餃子はなんとラーメンにもイン。珍しい餃子入りらーめんは、まかない飯をお客の要望でメニュー化したという。濃い味の醤油スープに泳ぐ餃子はモチモチとしていて、食べ応えさらにアップ。ここでしか味わえない!
『嵐屋』店舗詳細
構成=フラップネクスト 取材・文=下関マグロ、沼由美子、半澤則吉 撮影=本野克佳、オカダタカオ、小野広幸