炊きたてごはんのある風景。『定食あさひ』[三鷹]
引き戸を開けると、笑顔の日野夫妻が出迎える。艶ピカの減農薬コシヒカリのごはんと、煮干しと野菜でじっくり旨味を引き出した味噌汁が主軸で、三鷹野菜や、サバ干しなどの魚、つくば鶏などが、その日のおかずとなって登場。もともと洋食畑にいた二人だが、「毎日でも食べ飽きない、自分たちが行きたい店を」と、2014年に開業。おふくろ的立ち姿に、誰もがメロメロになり「今日は何?」と、通う常連客が少なくない。
『定食あさひ』店舗詳細
ギュッとした野菜の味を満喫。『ムサシノ野菜食堂 miluna-na』[武蔵境]
「出合っちゃったの」と笑う店主の葊田聡子さんは、野菜好きを公言。店頭は直売所でもある。基本は数時間煮出した野菜出汁で、「味も栄養もすごいのよ」とタマネギの皮も加えている。人気は、雑穀ごはんに野菜山盛りの丼。オニオン、ネギの2種ソースで、コクとまろみが生まれ、味が一体にまとまるからすごい。さらには、発酵にも注目。各種の味噌をブレンドしたり、福島伝統の芋床で漬けた漬物を作ったり。料理の幅は広がる一方だ。
『ムサシノ野菜食堂 miluna-na』店舗詳細
活気と旨味みなぎる駅前中華食堂。『宝華』[東小金井]
L字カウンターの中で料理人たちが手際よさを見せ、客は丼に顔を埋めて一心不乱。1971年から続く店は胃袋をがっつりつかんで離さない。メニューは豊富だが、まずは名物の宝ソバを。鶏ガラと醤油で調えた油ソバで、まろやかなコクを中太のちぢれ麺がまとい、豪快にすすりたくなる。ラー油、酢、胡椒で味変するのもいい。「塩味のチャーハンを、宝ソバのタレに付けて食べるのもおいしんですよ」と、スタッフの添田さん。ハマる!
『宝華』店舗詳細
プロの目利きと味。『さかなやさんの食事処・飲み処 味彩』[武蔵境]
仕出しも自慢だった魚屋『魚善』が、1995年の改装を機に、入り口異なる食事処を併設。舌に吸い付くもち肌の刺し身、ふっくらしっとりの煮付けなど、毎日、目が泳ぐほどの品揃えだ。2代目店主の古市晴男さんは、「今日は何にしようって思うんです」と、ごはんセットの汁物を、ハマグリの吸い物や、甘エビの頭で出汁をとった味噌汁に。生姜醤油に漬けた山盛りのアジ丼は締めに捨て難し。築地仕入れの極上ネタは、酒にも飯にもイケる。
『さかなやさんの食事処・飲み処 味彩』店舗詳細
兄妹のこだわりピザを堪能。『PIZZERIA TARTARUGA』[東小金井]
田中幹泰さんと志保さん兄妹が地元で開いたのがピザ屋。生地を1 ~ 2日とたっぷり寝かせ、国産小麦の香りふくよか。しかも歯切れよく、薪の香りもまとって、ビールが進むのなんの。また、変わり種のトロンケットは、ルッコラの香りと生ハムの塩気、中に入ったチーズとあいまってくせになる。しかも、羊革のふかふかカウンター席は、背もたれがなくても疲れ知らずの座り心地。多くの人を長尻にさせている。
『PIZZERIA TARTARUGA』店舗詳細
がっつり食べたいタイ料理。『東洋食堂』[武蔵小金井]
タイ人かと見紛う店主の前澤秀行さん。ホテルや飲食店で腕を磨く傍ら、時間をつくってはタイへ通い現地の味を覚えた。やがて駐在経験者、留学生の舌を唸(うな)らせるまでに。「独自の食文化があるし地方料理もおもしろい」と、丸鶏のスープをベースに、フレッシュバジル、塩漬けのカニ、ナンプラーを駆使し、各地の味をそろえる。一人飯でもあれこれ味わえるセットも用意し、10種類から2種選べる1500円、3種選べる2200円が重宝する。
『東洋食堂』店舗詳細
自慢の野菜を用いたピザ!『農家のピザ ミノールマルシェ』[武蔵小金井]
「ほとんど農薬を使わないから不細工で」と、店主の後藤稔(みのる)さんは自慢の野菜を用いてピザ屋を開業。最初はテイクアウト専門だったが、「その場で食べたい」との声を受けてウッドデッキを手作り。2017年より野趣ある空間が登場した。ピザ担当は息子の允則(かつのり)さん。山芋粉や米粉などを配合し、各野菜の火入れ具合を計算。約30分付きっきりで焼き上げる。サクふわ生地と多彩な香味に小躍り必至だ。
『農家のピザ ミノールマルシェ』店舗詳細
ツヤピカうどんは汁椀を抱えてすするべし。『手打ちうどん へそまがり』[東小金井]
小さい頃からうどん好きの店主・高橋光雄さんは「自分好みが食べたくて」と、主に国産小麦を用いて毎朝こね、踏み、寝かせ、注文後に手切り。さばや煮干しも用いた滋味深い肉汁にくぐらせれば、舌触りなめらか。稲庭風の細打ちだが、しなやかな弾力だ。「ショウガを入れてみて」の声に倣えば、肉汁の甘みがよりくっきり。腹の底から温まり、窓の外を見れば青々と伸びる竹林の借景。贅沢だ。
『手打ちうどん へそまがり』店舗詳細
体が喜ぶごはんをほのぼの茶の間で。『にしまきごはん』[武蔵小金井]
シェアカフェやアパートの一室で営んできた店が手狭に。「お客さんのつてで」と、店主の西 真紀さんは古びた民家と出合った。玄関、広縁など、風情を生かした空間でのんびり味わえるのはベジごはんだ。無類の野菜好きで、旬野菜を小金井の高橋金一さんや『坂本農園』などから仕入れる。主菜は、大豆ミートや高野豆腐をカツ、餃子などに変貌させる。山形県新庄産雑穀&玄米のごはんも甘みしみじみ。
『にしまきごはん』店舗詳細
活力を引き出すベトナムめし。『フォーとバインミーのお店 Pho You』[三鷹]
ホテルの料理人だったビンさんの腕にほれ込んだ店主の田中孝弥さん。「本場の優しい味を大切に、日本人の舌に合うよう味を調整しました」と語る。フォーは固めに茹でてあり心地よい喉越し。あっさり鶏ガラスープを唐辛子とレモンで味変するのも乙だ。バインミーは外カリ中フワの米粉パンにベトナム風ハムやレバーパテ、ダイコンとニンジンの酢漬けをサンド。辛味と酸味で活力が湧く!
『フォーとバインミーのお店 Pho You』店舗詳細
絡み合う香りに誘われ脳内タイ旅行。『キッチンconro』[三鷹]
店主の矢向(やこう)怜さんが吉祥寺の修業先で出会ったのは、タイ・イサーン出身のシェフ。「大事なのは香り。利かせるところは利かせ、他は主張しすぎないように」との教えを独立した今も胸に秘める。カオマンガイを頬張ると、鶏油とショウガで炒めたタイ米のかぐわしさに驚き。タイの味噌やハーブを加えたジンジャーソースのすっきりしたコク、蒸し鶏の旨味が次々と現れ、複雑に絡み合う香りにうっとり。
『キッチンconro』店舗詳細
豊洲仕入れの上物揃い。『さかな家 碧(あお)』[武蔵境]
中華料理で修業し、父の居酒屋を手伝った店主の多田薫さんは「魚屋さんとの出会いがきっかけで」と、魚料理店を開業。その真骨頂が、刺し身の盛り合わせだ。豊洲市場仕入れのアジは身の弾力がすさまじく、三重のカワハギ、氷見のブリなど、旬のスターが勢揃い。水を用いず、こっくりと煮付けた魚もふくよかで、日本酒はもちろん、土鍋ごはんも恋しくなる。中華風もつ煮など、独自のアテもたまらない。
『さかな家 碧』店舗詳細
小技を利かせたカレーにやみつき必至。『Blue Bird』[三鷹]
店主の田浦達士さんは、タイレストランで培った料理の腕とスパイスの知識を生かし、カレーが看板の喫茶を開いた。一番人気は肉感ガッツリのドライカレー。飴色になるまで炒めたタマネギが香ばしく、プリプリのひき肉の旨味と混ざり合う。「スパイスは最低限」と語るものの、香辛料の芳香が後から駆け抜ける。目玉焼きを崩して黄身と合わせれば、まろやかさが後を引き、口に運ぶ手が止まらない。
『Blue Bird』店舗詳細
しっとり上品なLYB豚を堪能あれ。『BISTRO ROSIER』[武蔵境]
使っているのは3種の品種を掛け合わせた静岡県産の銘柄豚・LYB豚。「脂がしつこくなく上品な味」と、店長の宮城将太さんは胸を張る。様々な豚料理が品書きに並ぶ中、一番人気はロティ。肉の塊の両面を200℃のオーブンで焼き、70℃前後の温度で休ませる。分厚いカットの肉を口に運べば、しっとりした舌触り。熱で溶け出した脂と肉汁の旨味が一体となって口中に広がり、恍惚(こうこつ)となる。
『BISTRO ROSIER』店舗詳細
肉の旨味と薫香の威力炸裂バーガー。『ButaBaco』 [三鷹]
塊肉を仕入れて手挽き。赤身の味が濃いアンガス牛の超粗挽きパテに自家製ベーコンが重なり、その上にスモークチーズが雪のように積もる。フランスパンに似た天然酵母のバンズで挟めば、肉の醍醐味が半端なく、薫香が鼻腔(びこう)を駆け抜ける。また、世界のソーセージも無添加で手作り。「腸まで使いきる文化が僕のルーツの沖縄と同じ。感銘したんです」と、店主の富澤怜央さん。味紀行も楽しみだ。
『ButaBaco』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり・高橋健太(teamまめ) 撮影=井上洋平、金子怜史、本野克佳