赤羽っ子3代で通うハレの日の寿司屋『江戸八』[赤羽]
大将の池田隆さんは、北区志茂の生まれ。赤坂や六本木の料亭で修業後、「地元の人においしい寿司を」という気概から赤羽2丁目で開業。大将の確かなネタ選びの目と技に惚(ほ)れ込み、親子3代で通い続ける人も珍しくなく、4代目に差し掛かった人もいるほどだ。甘くとろけるマグロや、口に入れた瞬間にほどけるあなごをほおばれば、その理由がわかるはず。末永く赤羽っ子のハレの日を彩り続けてほしい。
『江戸八』店舗詳細
活気あふれる人気店の職人技『天ぷら・日本料理 あら川』[赤羽]
老舗『天一』の技を受け継ぐ店主・荒川敏郎さんは、「うまいもんを、揚げるぞ」の気迫に満ちる。ならば受けて、すべてをゆだね、「おまかせ」でいこう。冒頭、お決まりは、クルマエビ。注文後に水槽のピチピチをすくい、殻を剝く。揚げたてを頬張れば、プリッとした歯応えの後、甘い。そんな口に運ぶべきは、酒蔵直送の十四代。無名の頃から懇意で、22種類揃う冷蔵庫は圧巻。目当ての通客も多い。
『天ぷら・日本料理 あら川』店舗詳細
五感喜ぶ会席料理を敷居低く日常に『味処 佐竹』[赤羽]
わずか5席の檜のカウンターは、店主・佐野正徳さんの手さばきを望む特等席。包丁がそっと当たる白魚の、ねっとり感まで伝わってくる。「コテコテやんない、シンプルが一番」を信条に作る料理は、揚げ出し豆腐のように、食材の色そのままの彩りにドキリ。日本の旬の美しさに気付く瞬間だ。新橋や乃木坂で腕を磨き、独立した。「まだこれから」と意気込み、季節ごとの会席料理4400円も好評だ。テーブル席とお座敷もある。
『味処 佐竹』店舗詳細
地元の人々が愛すエビ自慢のそば屋『㐂久家』[王子]
1955年創業以来、昼時を過ぎても客がひっきりなし。店員さんがくるくると客の間を往来しての目配り気配りにも感服だ。初めて来店するなら、かき揚げ天もりを頼むべし。「うちはエビが自慢」と、2代目店主の境修一さんが胸を張るかき揚げは、小エビのみ、という混じりっけなしのぜいたくさ。ザクザクの衣からプリップリのエビが香味を放つ。出汁をおごったつゆにどぼんと付け、更科の手打ちそばを手繰れば、お腹も心も満足必至。
『㐂久家』店舗詳細
朝な夕な使えるアジずくめの味な店『鯵家』[赤羽]
店名に冠した通り、ずらりと揃えたアジ料理。「次にブームが来るのはアジですから!」と、店長の中西大祐さんは言い切る。鳥取県の境港に揚がった新鮮なアジを、近くの工場で捌いて直送。ゆえに、青臭さは皆無だ。アジの漬け丼は、九州の出汁醤油をベースにブレンドした特製タレが旨味を引き出し、丼をつかんでわしわし頬張れる一品。アジフライや、骨と尻尾を叩いたアジメンチは単品注文もでき、酒の肴にも最高。昼飲みも!?
『鯵家』店舗詳細
ハーブとスパイス癒やしのエスニック『タイ料理 Red Orchid』[赤羽]
「パクチーは根っこが大事よ」と、常連客からビーちゃんと呼ばれる寺山シリワンさんが微笑む。白い根はスープストックに用い、特有の香りを生むのだが、とにかく料理の要となる野菜とハーブが新鮮で、タイのナスやガパオも味の濃さに驚く。「実は、タイ人の農家さんが売りに来るんです」。これが、ひと味違うゆえんだろう。バンコクの料理学校で学んだ本場直球の味だが、「パクチーと辛いの大丈夫ですか」と聞き、好みに仕上げてくれる。
『タイ料理 Red Orchid』店舗詳細
魅惑の大盛りに食欲が止まらない『TREVO』[赤羽]
赤羽でスペイン気分に浸れるスペインバル。小皿の一品料理タパスは超立体の盛り付け、アヒージョの具も器にギュッと満杯で、「チマチマしたのは嫌い」というシェフ・舘野真司さんの心意気が伝わる。オーガニックやビオなど、ナチュラル系を中心としたスペイン各地のワインは、ボトルで50種類、グラス14種類と充実している。バレンシア米で作る具だくさんの魚介のパエリア2800円は、ハズせない逸品だ。
『TREVO』店舗詳細
Osteria Ta~mia[王子]
気軽にご馳走を地域密着イタリアン
生まれも育ちも、もちろん出会いも王子の、田澤貴宣さん・光子さん夫妻が迎えてくれる。週に何度も通う人がいるパスタランチ、とりこにさせるのは野菜など具の多さだ。夜の日替わり料理では、土地柄必須のボリュームと安さに応えつつ、ヴェネト州で鍛えた腕を光らせる。香りのいい短角牛は素焼きでジューシーに、ハマグリのリゾットは芳醇なハマグリの出汁だけで。素材にとことん寄り添うやさしさが持ち味だ。
『Osteria Ta~mia』店舗詳細
食を通じて知るパレスチナという国『Bisan』[十条]
日本では非常に珍しいといわれるパレスチナ料理店が、十条の演芸場通りにある。オーナーシェフのマンスール・スドゥキさんは、日本で仕事をしているお兄さんを頼って遊びに来た時、日本を気に入り移住を決意。日本語を猛勉強の末、2011年に店を開いた。「十条を選んだのは、下町的な商店街の雰囲気がパレスチナっぽかったから」。料理はすべてお母さん直伝の、オリジナルレシピのアラブの家庭料理。スパイスと塩分が優しめで、素材の味を生かした日本人好みの味だ。ドルネケバブなどもおいしいが、とくにおすすめなのは、ひよこ豆のペーストにパレスチナ名産のオリーブオイルがたっぷりかかった「ホンモス」。優しい味わいがくせになるのだ。
『Bisan』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり・松井一恵(teamまめ)、鈴木さや香 撮影=オカダタカオ、鈴木愛子、高野尚人、山出高士