港の人たちの胃袋を支え続けて63年『あぶずり食堂』[葉山]
女将さんは「もともと仲卸で、葉山港に来た人に食べるところが欲しいって言われて」と1959年に開店。定食、丼、 中華と幅広いが、注目は魚介だ。大ぶりのさざえつぼ焼きは磯の香りが濃厚で、ビールを呼ぶ。サッと卵で閉じたさざえ丼、ヒラメやカンパチなど水揚げ次第の煮魚も捨てがたし。週末は香り豊かな近海生マグロの刺し身目当ても多い。正統派ラーメンもしみじみ染みる味わいだ。
『あぶずり食堂』店舗詳細
フレンチシェフの独創的アイデア続々『食彩堂』[逗子]
パリッとした歯触りの中からマデイラソースを絡めたクリーミーなフォアグラがあふれ出す。1994年開店直後からの名物・春巻は地元スーパー『スズキヤ』でも販売する人気の総菜。また週2で佐島漁港へ出かけ、旬魚を目利き。2日ほど寝かせた白身魚は中華風サラダになり、醤油ベースのドレッシングが上品な香りを引き立てる。 「ジャンルにとらわれるのが好きじゃなくて」と、編み出す料理に杯は重なるばかり。
『食彩堂』店舗詳細
自然派ワインが進む地元の恵み満載の皿『OHANAYA』[逗子]
泡、赤白、ロゼ、オレンジなど、10系統以上揃える自然派ワイン専門バーで、待ち合わせ前や締めの一杯、食事に重宝。気分を伝えるとソムリエの廣田俊己さんが3本ほど見繕(つくろ)ってくれる。佐島産魚介のほか、地元野菜で作る旬菜には在来種や不耕起栽培野菜を用いるアテは、「地産地消です」と、義弟で料理担当の折田幸久さん。果実にスパイスを加えたつまみは、ワインと合わせると華やかな香りが広がっていく。
『OHANAYA』店舗詳細
峠の民藝喫茶でお茶と甘味に感服『日の出園』[葉山]
亡き先代の趣味で建てたお茶専門店は、山側に民藝喫茶を設え、自在鉤(かぎ)、壺、書などを飾る。葉山ショウガ、金色の名島産天草など、地元食材を用いたメニューが目白押しで、シコシコの手作り寒天の風味はこの上なし。これから夏はかき氷の季節。新茶、宇治茶、ほうじ茶など、茶屋お手製の蜜が芳醇(ほうじゅん)で、金時の氷を掘れば、中から北海道小豆を炊いた粒あんとアイスがお目見え。思わず頬が緩む。
『日の出園』店舗詳細
コスタリカ産コーヒーを手に古民家で憩う『カフェテーロ葉山』[葉山]
大正期築の風格ある古民家を2018年、店主の大下力さんが借りて開店。 「建具も木枠の窓もそのまま。縁側にほら、杉の木が渡してあるんですよ」。 余計な手を加えずに再生させた店で味わえるのは、大下さんが惚れたコスタリカ産スペシャルティコーヒーだ。コスタリカ発祥のハニー製法で精製された豆を農園違いで仕入れ、中深で自家焙煎。コクの奥から軽やかな果実味が立ち上る。
『カフェテーロ葉山』店舗詳細
小坪の海を見渡す山肌の隠れ『カフェシエスタ HIDAMARI cafe La SIESTA del sol』[逗子]
窓の外に誰もが目が釘付け。庭先の眼下に、小坪漁港と大海原が広がっている。 「探していたら見つかるもんです」 とは、店主の野津彰彦さん。築30年の民家の佇まいと景色に惚れ、独自の 「喫茶」を2013年に開店した。パスタや煮込みハンバーグ、ワッフルなどもあるが、メキシコのチーズトーストから着想を得たおかずフレンチトーストは、英国産レモネードと。タバスコをたっぷり利かせれば、ワインにもピッタリ。
『カフェシエスタ HIDAMARI cafe La SIESTA del sol』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり 撮影=オカダタカオ