救急病院と救急クリニックの違いとは?

Q.従来の救急病院や大病院の救命センターと、救急クリニックとの違いは何ですか?

鹿野

A.救急医療体制には1次救急、2次救急、3次救急の分類があります。救命センターなど規模が大きく高度な医療体制を整え、重症者を診療する病院は3次救急、軽症患者に対して初期診療が行える体制にある医療機関は1次救急。当院のように24時間体制で入院加療が必要な中等症患者に対応できる医療機関は2次救急に分類されております。

Q.入院設備があるのでしょうか?

鹿野

A.あります。ただし、救急クリニックの場合は病床数19以下という制限が設けられています。しかし、小規模であるがゆえ規制が少なく、患者さんの利便を計り易いというメリットがあるのです。

当院では軽症の方はもちろん、入院が必要な中等症の方、場合によっては一刻を争う重症の方でも予約の必要なく24時間年中無休で受け入れます。設備の整った病院をコンビニ感覚でいつでも気軽に利用できれば、助かる命も増えるはず。素人判断で大丈夫と放置しているうちに、急に症状が悪化することもありますから。

Q.一般の開業医と比べたら、救急クリニックの設備を揃えるには莫大な費用がかかると聞きますが?

鹿野

A.救急医療にはCT、MRIなどの高価な検査機器も必要になります。当救急クリニックは2018年11月に開業したのですが、それ以前、ここは脳神経外科のクリニックでしたので、そういった設備がほぼ揃っていました。だから初期投資費用はかなり軽減されています。しかし、問題はマンパワーでしたね。24時間年中無休で診療をつづけるために、必要な数の医師や看護師を確保するほうが大変でした。

遠隔診断のできる救急車も完備

Q.今はどんな症状の患者さんが来ても、対応できる設備と人材が揃っていると?

鹿野

A.はい。しかし、小さなクリニックですから、やれることには限界もあります。大病院との役割分担が必要になってきますね。

心肺停止などの1分1秒を争う急患には、近場にある救急クリニックで心拍を再開する処置を行う。その後に当院の救急車で大病院に搬送し、詳細な検査や完治までの治療を委ねる……といった流れがベストです。人口過密なうえに救急医療が脆弱な大都市圏近郊には、特にそれが必要だと思います。

重症者が、病院をたらい回しにされ、遠くの救命センターまで搬送しているうちに亡くなってしまう。そういった事例が多く発生しています。各地域に救急クリニックがもっと増えれば、そういった悲劇もかなり防げるでしょう。

また、初期診療を1次や2次の救急病院が対応することで、3次救急に患者さんが集中するのを防ぐことができます。

Q.救急車もあるんですよね?

鹿野

A.当院では自前の救急車を所有しています。救急の出動以外にも、通院が困難な方を個人宅からお迎えしたり、他病院への転院搬送なども行います。車内には当院と直接結ばれたTV電話もあり、医師による遠隔診断が可能。また、看護師を同乗させて搬送中に適切な処置を行うとか、重症患者の場合は医師も同乗してドクターカーとして運用することもあります。

専用の救急車を持ち、患者の移送や不測の事態にも即応している。

Q.救急以外でこちらを受診する患者さんも多いのですか?

鹿野

A.慢性的な持病があるとか、気になる症状があるけど平日の昼間に病院に行けない人なども当院の守備範囲です。頭痛、めまい、しびれ、物忘れなど脳外科疾患、生活習慣病で通院している方も多いですよ。

訪問診療も行う「町の保健室」を目指して

Q.様々な事情から、通院するのが難しい患者さんもおられますよね?

鹿野

A.今後は訪問診療も始める予定です。通院できない方は看護師が定期的に訪問して健康状態をチェックし、状態が悪くなってきたと判断すれば医師を派遣する。また、状況によっては救急車でクリニックまで搬送するといったような。生活習慣病の患者さんには、脳梗塞や心筋梗塞を起こされる方も多く、日頃からしっかりケアする必要があるのです。

Q.訪問診療を導入して、日頃からしっかり経過観察していれば、その危険を大幅に軽減できると?

鹿野

A.はい、それは確実です。生きるか死ぬかの緊急事態に対応するだけではなく、そういった緊急事態を起こさせない。危険な芽を早めに摘み取るということも、救急クリニックの重要な役割だと私は考えています。地域の人々の健康状態を常に把握している「町の保健室」として機能しなければなりません。

待合室にあった掲示板。クリニックの存在そのものが地域の人々の安心につながっているのがわかる。

9月から自費PCR検査料を1万円に値下げ

Q.最後にもう一度PCR検査のことを。9月から検査料を値下げしましたよね。

鹿野

A.PCR検査の陽性率は3%と、まだまだ高いレベルにあります。検診でガンが発見されるのは数千人に一人ですから、やっぱり異常に高い数字です。できるだけたくさんの人に検査を受けてもらったほうがいい。

ということで、うちは9月から赤字覚悟で自費PCR検査料を3万円から1万円に値下げしました。もちろん人員、施設も充実させています。

身近に感染者がいても不思議ではない。が、いくら用心しても、毎日満員電車に揺られる都市生活者には、常に感染の不安が付きまとう。正体不明のウィルスが蔓延する時代には、こういう‟わかりやすさ”こそ、求められる救急医療の形に違いない。

取材・文=青山 誠
撮影=中西多恵子

思い出してほしい。緊急事態宣言が発令された4月、体調が悪くても受け入れ先がないと聞き、日々不安に駆られていたあの頃のことを……。そんな中、いち早くプレハブ造りのPCR検査小屋を造り、毎日のようにテレビに出ていた医療機関があった。鹿野晃院長率いる、「ふじみの救急クリニック」だ。あらゆる医療機関が逃げ腰になっていた(ように見えた)あのころ、ここだけは勇猛果敢に新型コロナと向き合っていた。どうしてここだけそんなに検査できるんですか?どうして毎日テレビに出てるいるの?行けば誰でも検査してくれますか?スタッフの皆さん感染しないのかな?気になっていた疑問の数々をここぞとばかりに聞いてまとめた記事が、発売中の『散歩の達人』10月号に掲載されているが、Webさんたつでは、鹿野先生にぶつけた一問一答のすべてを2回に分けてお届けしたい。