ふじみの救急クリニック院長・鹿野 晃先生
藤田医科大学医学部卒業。ペンシルベニア大学医学留学を終えた後、救命救急センターや脳神経外科で数多くの経験を積み「街の保健室」をめざして2018年に『ふじみの救急クリニック』を開院した。

家々が立ち並ぶ、ごくありふれた新興住宅地。だが、その並びに日常目にすることのない風景がある。プレハブが並ぶ敷地には、ウイルスに備えて何台もの大型扇風機や散水機が稼働し、防護服姿の医療従事者が行き交う。野戦病院のような物々しさ、震災など被災地の臨時診療所のようでもある。
今が非常事態だということを、思い知らされる眺めだった。

「うちの職員たちは、この施設を“コロナ村”と呼んでいますけどね」

『ふじみの救急クリニック』 の鹿野晃院長がほほえみながら言う。ここはコロナ感染を疑って検査に来る人々に対応するため、急遽病院近くの空き地に設置された 「発熱外来」 。敷地内には19床の入院棟もあり、人工呼吸器やECMOなどの重症者用設備も揃っている。

予約なしで24時間検査OKコンビニ感覚でコロナを検査

専用の救急車もあり、患者の移送や不測の事態にも即応している。

コロナのPCR検査を行う病院は非公表が原則。だが、24時間検査可能な病院は、公表してもよいという特例がある。ここがテレビで紹介されるのは、数少ない「公表可」の病院だから。そのため大勢の人々が押し寄せるのだが、混雑している感じはない。受け付けが済めば次々と検査場のテントに入り、おおよそ2〜3分程度で検査を終えて帰ってゆく。じつに手際がいい。

「多い日には300件以上のPCR検査を行っています。インフルエンザだって1日100件くらいは対応していましたから、大量検査には慣れているんですよ。救急クリニックを名乗っている限り、この問題から逃げられない。そう思って覚悟を決めました」

コロナ禍当初、都市部はPCR検査体制がパンクし、感染不安を持つ人の行き場のない状態。だが、

「うちなら、やれるはずだ」

2月中旬、病院横に感染対策を徹底したプレハブの施設を設置、大量のPCR検査が行えるシステムを整えた。採取した検体はすぐ検査機関に送り、午前中に検査すれば、当日の午後には結果が判明する。そして現在(2020年9月時点)に至るまでスタッフに一人も感染者はいない。

軽症者が急速に重篤(じゅうとく)化する。それがコロナの恐ろしいところだ。疑いがあればすぐに検査してすぐに治療することが、重症化を防ぐ最も有効な手段だ。

しかし、通常は保健所を通して検査してもらえるまで数日間かかる。それでは遅すぎる。インフルエンザのように、すぐ検査ができる病院が必要だ。

不安を明日に持ち越さない 24時間対応の高度医療施設

クリニックに隣接した空地に設置された発熱外来。検査は陽圧設備のあるテントで行われ、裏手には入院棟のプレハブもあった。

「もともと脳外科だった病院を、2年前に救急クリックとしてリニューアルしました。CTやMRIなど設備は揃っていましたから、町の開業医ではできない検査や処置ができます。しかも、予約不要で24時間いつでも診療可能です。救急クリニックとは高度医療をコンビニ感覚で受診できる病院。現在はまだ全国に約6カ所ですが、今後もっと需要は増えると思います」

救急車を呼ぶのを躊躇(ちゅうちょ)する微妙な症状に、怖い病魔が隠れているかもしれない。急変して重症化することも……そんな時にいつでも気軽に行けて、必要な検査や処置をすぐ受けられる病院があれば、危険を未然に防ぐことができる。救急クリニックが担当する領分は、いわば町医者と大病院の中間だ。

予防はインフルエンザと同じ。感染を避けることは難しくない

コロナとの戦いはこれからが本番だけに、さらに気を引き締めてかかる必要があると鹿野院長は言う。

「秋にはインフルエンザも流行します。皆さんも感染予防をしっかり心がけてください。コロナの予防も基本はインフルエンザと同じで、マスクや手洗いを心がけること。それだけで感染は防げます」

たとえば、レストランでも会話中は絶対にマスクをするとか、面倒くさいけど今の世には身につけたほうがいい習慣だ。マスクは他人に感染させないだけではなく、着けている人の感染リスクも30%ほど低減させる。

「PCR検査の陽性率は5%程度。20人に1人が感染している計算です。検診でガンが発見されるのは何万人に1人ですから、それに比べたら異常に高い数字ですよ」

身近に感染者がいても不思議ではない。常に用心せねばならない。が、いくら用心しても、毎日満員電車に揺られる都市生活者には、常に感染の不安がつきまとう。昨年までは気にもしなかった軽い風邪の症状も今年は不安で恐ろしい。

だが幸いなことに、ここには 「町の保健室」 がある。24時間いつでもPCR検査してくれ、地域の人々の不安を払拭しケアするフットワーク軽快な救急クリニックだ。

「うちは9月から自費PCR検査料を3万から1万円に値下げ、人員や施設も充実させています」

正体不明のウイルスが蔓延(まんえん)するこの時代、このわかりやすさは、一つの求められる医療のカタチに違いない。

待合室には地域の人々から寄せられた感謝の手紙が掲示されていた。

取材・文=青山 誠 撮影=中西多恵子

思い出してほしい。緊急事態宣言が発令された4月、体調が悪くても受け入れ先がないと聞き、日々不安に駆られていたあの頃のことを……。そんな中、いち早くプレハブ造りのPCR検査小屋を造り、毎日のようにテレビに出ていた医療機関があった。鹿野晃院長率いる、「ふじみの救急クリニック」だ。あらゆる医療機関が逃げ腰になっていた(ように見えた)あのころ、ここだけは勇猛果敢に新型コロナと向き合っていた。どうしてここだけそんなに検査できるんですか?どうして毎日テレビに出てるいるの?行けば誰でも検査してくれますか?スタッフの皆さん感染しないのかな?気になっていた疑問の数々をここぞとばかりに聞いてまとめた記事が、発売中の『散歩の達人』10月号に掲載されているが、Webさんたつでは、鹿野先生にぶつけた一問一答のすべてを2回に分けてお届けしたい。
真夜中に突然の体調不良……救急車を呼ぶのは大袈裟な気がする。しかし、朝まで待つのは辛い。そういった時に「救急クリニック」は頼りになる存在だ。最近は、大都市近郊で求められる新しいタイプの医療機関として注目されているというのだが、従来の救急病院と何が違うのか? コロナ禍当初に、いち早くプレハブ造りのPCR検査小屋を造り、毎日のようにテレビに出ていたふじみの救急クリニック院長の鹿野晃先生にいろいろ聞いてみた。