店主は新橋の名店『鶏繁 総本店』出身
取材申し込みのため電話を入れると「企画書のFAX? メール? そんなものいいよ。とにかくいつ来るの?」と快諾してくれた。話が早い。紺地の暖簾(のれん)をくぐり、引き戸を開けると、店主の安達英一郎さんが明るく迎えてくれた。毎日午前中からここで鶏の仕込みをしているのだそう。
赤羽に店を構えたのは1995年。その8年後に今の場所に移転した。安達さんは新橋の名店『鶏繁 総本店』で8年に渡る修行を重ねた後に独立。鶏繁と同様、基本は焼き鳥コース10本を出す。お客さんの食べるペースや好みに合わせて、焼きたてを1本づつ提供するスタイルだ。
焼き鳥は、焼きたて熱々が命
鶏は、長年の付き合いがある板橋の『鳥新(とりしん)』から仕入れている。板橋仲宿で100年以上の歴史がある老舗の鶏肉専門店だ。2020年の自粛期間以前は、『鳥新』から丸のまま鶏肉を仕入れ店内で解体していたそう。現在でももちろん『鳥新』との付き合いは変わらず、名物の「だんご」も店内で作っている。「だんご」とは、つくねと違い、卵などのつなぎを一切使わず、鶏の軟骨などのミンチ肉で成形。コリコリとした食感が楽しめる
と、ここで1本目のレバーが焼き上がり、熱々を出してくれた。頬張るとジューシーで濃厚な旨みがほとばしる。強めの塩加減も絶妙だ。絶対に冷たいビールが飲みたくなるファーストインプレッション強めの1本。軽く山椒をかけるとさらに風味が増す。コースの種類はこのほかに、砂肝、はつ、うずらの卵、ねぎ巻、皮、だんご、もも肉、ボンチリ、手羽先をそろえている。それぞれ個性が強く、コゲまで香ばしい。
店内を埋め尽くす競馬グッズに圧倒される
店内の壁には競馬のポスター、実際に使われていたゼッケンや騎手のユニホームなどの競馬グッズで埋め尽くされ、その光景は圧巻だ。安達さんは無類の競馬好きで、お客さんも自然と競馬関係者や競馬ファンが多くなったという。よく見ると暖簾にも競馬の賞レースのタイトルが書かれ、入り口扉の脇には本物の蹄鉄が飾られている。鳥好きも馬好きも赤羽の雰囲気が好きな人も満足させてくれる、懐の深い焼き鳥店だ。
『鳥ひで』店舗詳細
取材・文・撮影=新井鏡子