その土地ならではの菓子パンもある

大人になり、自分のお金で自由に食べ物が買えるようになった私は、幼少時の反動のように出先で菓子パンを買うようになっていた。

呉(広島)に行った時に食べたアンパン。字体がレトロ。
呉(広島)に行った時に食べたアンパン。字体がレトロ。

日本各地のスーパーには、もちろん大手メーカーの菓子パンも並んでいるが、そのご当地ならではのパンもある。これらのパンの多くは、昭和の時代から変わらないレトロなパッケージで、見ているだけでも楽しい。いつしか私は、こうした菓子パンをジャケ買いするようになっていった。

「菓子パン」と言っても、その種類はさまざまだ。チョコやクリームなどの入ったパンや、

「嵯峨の小倉庵」と同じ、呉の『メロンパン』(店名)製の「ナナパン」。中にチョコレートが入っている。
「嵯峨の小倉庵」と同じ、呉の『メロンパン』(店名)製の「ナナパン」。中にチョコレートが入っている。
呉『メロンパン』の「平和パン」。中身はカステラとイチゴジャム。
呉『メロンパン』の「平和パン」。中身はカステラとイチゴジャム。
総社(岡山)の「トングウ」のパンたち。どのパンのデザインもかわいらしい。
総社(岡山)の「トングウ」のパンたち。どのパンのデザインもかわいらしい。
射水(富山)「さわや食品」の「ハーフムーン」。洋風な見た目だが、中にこしあんが入っている。
射水(富山)「さわや食品」の「ハーフムーン」。洋風な見た目だが、中にこしあんが入っている。

メロンパン、

沖縄「オキコ」の「チョコメロン」。ラブリーな字体である。
沖縄「オキコ」の「チョコメロン」。ラブリーな字体である。

デニッシュ系のパン、

「タカキベーカリー」(広島)の「デンマークロール」。1959年誕生のものが復刻された。
「タカキベーカリー」(広島)の「デンマークロール」。1959年誕生のものが復刻された。
「たけや製パン」(秋田)の「ビスケットパン」。女の子のキャラがかわいい。
「たけや製パン」(秋田)の「ビスケットパン」。女の子のキャラがかわいい。

コッペパンなど多種多様である。

「たいようパン」(山形)の「ベタチョコ」。2つに割ったコッペパンにチョコが塗ってあるが、再び閉じてコッペパン型にして食べる人もいるそう。
「たいようパン」(山形)の「ベタチョコ」。2つに割ったコッペパンにチョコが塗ってあるが、再び閉じてコッペパン型にして食べる人もいるそう。

「トースト」型からほぼケーキと言ってもいいものまで

東北地方で多く見られるのが、食パンの中にクリームなどを挟んだ「トースト」型菓子パンだ。

「工藤パン」(青森)の「イギリストースト」。通常のマーガリンとグラニュー糖に加え、いろいろな味が展開されている。
「工藤パン」(青森)の「イギリストースト」。通常のマーガリンとグラニュー糖に加え、いろいろな味が展開されている。
「たけや製パン」(秋田)の「アベックトースト」。2つの味が挟まっているからアベックなのか。
「たけや製パン」(秋田)の「アベックトースト」。2つの味が挟まっているからアベックなのか。
「さわや食品」の「コーヒースナック」。こちらは「トースト」ではないようだ。
「さわや食品」の「コーヒースナック」。こちらは「トースト」ではないようだ。

本来「トースト」とは、食パンを軽くあぶった状態のことを指すのだと思うが、これらの「トースト」型菓子パンはだいたい生食パンが用いられている。「トースト」という名前にしたほうが、より食パン感が出ると考えてのネーミングなのかもしれない。

フカフカのパンの中にクリームを挟んだタイプのパンや、

「オキコ」の「ゼブラパン」。なぜゼブラなのかといえば、黒糖シートとピーナッツクリームが挟んであって、断面がシマシマだからだ。
「オキコ」の「ゼブラパン」。なぜゼブラなのかといえば、黒糖シートとピーナッツクリームが挟んであって、断面がシマシマだからだ。
同じく沖縄の「なかよしパン」(ぐしけんパン)。大きいので、みんなで仲良く分け合って食べてほしいとのネーミングだそう。
同じく沖縄の「なかよしパン」(ぐしけんパン)。大きいので、みんなで仲良く分け合って食べてほしいとのネーミングだそう。
長野県のご当地パンである、クリームを挟んだ「牛乳パン」。いろいろなメーカーから販売されているが、こちらは「タムラヤ」のもの。
長野県のご当地パンである、クリームを挟んだ「牛乳パン」。いろいろなメーカーから販売されているが、こちらは「タムラヤ」のもの。

それをロールしたパンなどは、「菓子パン」と「ケーキ」との境界線にいる存在である。

「なんぽうパン」(出雲)の「バラパン」。ケーキのようなかわいらしい見た目。
「なんぽうパン」(出雲)の「バラパン」。ケーキのようなかわいらしい見た目。
沖縄「オキコ」の「うず巻パン」。ロールケーキのようでもある。
沖縄「オキコ」の「うず巻パン」。ロールケーキのようでもある。

自ら「ケーキ」と名乗る「よしの屋製菓」(名古屋)の「ラインケーキ」や、

30㎝はあろうかという超ロングなラインケーキ。食感はケーキというよりパンである。
30㎝はあろうかという超ロングなラインケーキ。食感はケーキというよりパンである。

東京・池袋の『タカセ洋菓子』の「カジノ」「カステ」などは、ほぼケーキと言ってもいいだろうが、本人(?)たちが「菓子パン」と名乗っているので、菓子パンに分類される。いずれも昭和を感じさせる、レトロなデザインのパッケージだ。

チョコレート・砂糖でコーティングされた生地にリンゴやクリームが挟まった「カジノ」(右)、カステラ生地をパン生地で包んだ「カステ」。どちらもボリューミー。
チョコレート・砂糖でコーティングされた生地にリンゴやクリームが挟まった「カジノ」(右)、カステラ生地をパン生地で包んだ「カステ」。どちらもボリューミー。

良いデザインも受け継がれていってほしい

もちろん「菓子パン」は甘い系ばかりではない。「レトロなパッケージ」という観点から見ると、おかず系パンは少ないのであるが、

江ノ島のパン屋さん『湘南堂』のパン。甘いパンもしょっぱいパンも同じデザインの袋に入っている。字体が良い。
江ノ島のパン屋さん『湘南堂』のパン。甘いパンもしょっぱいパンも同じデザインの袋に入っている。字体が良い。

『つるやパン』(長浜)の「サラダパン」や「サンドウィッチ」などは、グッズも販売されるほどの良いデザインである。

マヨネーズで和えたたくあんを挟んだ「サラダパン」、魚肉ハムとマヨネーズが挟まれた「サンドウィッチ」。どちらもロングセラー商品である。
マヨネーズで和えたたくあんを挟んだ「サラダパン」、魚肉ハムとマヨネーズが挟まれた「サンドウィッチ」。どちらもロングセラー商品である。

今後、こうした良いデザインの菓子パンは少なくなっていくかもしれない。一方で、テレビ番組『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)で、有吉弘行氏が幼少期に食べた思い出のパンとして紹介していた「スペースアポロ」が復刻販売されるなど、レトロ菓子パンが脚光を浴びるケースもある。その味ばかりでなく、良いデザインもずっと受け継がれていってほしいと思う。

もともとは広島の「ナガイパン」で販売されていたものを、記憶などを頼りに再現したのだそう。
もともとは広島の「ナガイパン」で販売されていたものを、記憶などを頼りに再現したのだそう。

イラスト・文・写真=オギリマサホ

街の薬局の店頭には、さまざまなキャラクターがいる。以前このコラムでも取り上げたパンダのニーハオシンシン、カエルのケロちゃん、赤いウサギのピョンちゃん……。その中でも最も有名なのが、佐藤製薬のキャラクターであるオレンジの象「サトちゃん」ではないだろうか。
行く先々で牛乳を飲んでいる。特に温泉に行った時には、必ずといっていいほど牛乳を飲んでいる。特に気にも留めていなかったが、旅の写真を整理していると、自分が飲んだ牛乳の写真ばかりが残されているのだった。旅先で飲む牛乳の多くは、ビンに入っているものである。昭和の小学生だった私は、毎日のように給食でビン牛乳を飲み続けてきたので、なじみの深い存在なのだ。心なしか、紙パックに入っているものよりもおいしいような気がする。
地方出張に行った際、現地のスーパーでご当地商品を買って帰るのが趣味の友人がいる。その友人が、盛岡土産として「いたふ」をくれた。パッケージに惹かれたという。