11位 マンモス公園(京島南公園)
高さ10m! マンモスな滑り台は下町の象徴
いかにも下町情緒な木造長屋が目立つ墨田区京島にある公園で、大きな滑り台がシンボル。サマーズの歌にも登場する。高さ10m長さ12mの滑り台はなかなかの迫力で、小さい子供のみならず大人も十分スリリングなはず。年季の入った風情は巨大な生き物のようで、夕暮れどきにぬっと動き出しそうな迫力がある。すぐ近くにキラキラ橘商店街という天然の下町商店街もあり買い物が楽しい。コッペパンの『ハト屋』など超おすすめ。
10位 独歩の森(武蔵野市境山野緑地)
地元ボランティアが守る小さな武蔵野
武蔵境の住宅地の中に残る約1haの雑木林。2005年に武蔵野市の「緑地」として整備・開園した。ブナやナラなどいわゆるドングリの木が多く、小さいながらも武蔵野の色が濃い。元祖・散歩の達人、国木田独歩が書いた『武蔵野』にもゆかりがあり、南半分は地元で「独歩の森」と呼ばれている。地元ボランティア団体による保全活動や観察会も活発に行われ、その賜物のような小さな森だ。
9位 トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園
もう一つのムーミンパーク
西武新宿線飯能駅から南東へ3.7km。飯能でヤンソン(ムーミンの原作者)と言えば2019年オープンの「ムーミンバレーパーク」が有名だが、実はもう一つある。こちらのオープンは1997年。村山雄一という異色の建築家による建造物が入間川沿いに4棟立っている。当初は大人の事情で「トーベ・ヤンソン」を名乗れなかったようで、「あけぼの子供の森公園」という名前だった。しかし、どこからどう見てムーミン谷の世界。ちなみに村山は神秘主義者シュタイナーの影響を色濃く受けているという。それぞれの建物に入るとわかるが、ムーミンがモチーフといいながらも、息がつまるほど完成度の高い村山独自の世界(おそらく)が実現されており、立ち止まると頭がクラクラすることも(個人の感想です)。この完成度で入場無料というのも素晴らしい。
8位 赤羽自然観察公園
市民による、市民のための公園
7位 尾久の原公園
隅田川沿いのビオトープ
都内にビオトープ系の公園は多いが、ここはほどよく開放的で新しく清潔なのがいい。もとは旭電化工業(現・ADEKA)の工場だったが、東京都に払い下げられ、ビオトープ公園となった。広さは東京ドームとほぼ同じ、トンボ池では全国有数の生息数という約30種類のトンボが確認されている。なにより、隅田川沿いにこれだけ広い原っぱが残っていたとは!
6位 タイヤ公園(西六郷公園)
ウルトラQの世界
約3000本の古タイヤを使って、タイヤで怪獣や遊具が象られているという不思議な公園。ゴジラのような怪獣は高さ8m全長20mという巨大なもの。ほかにもブランコや、タイヤに乗って滑り下りるアトラクションなど、ほぼすべてのものがタイヤで作られている。開園は1969年と古く、当初からいろんなメーカーに大田区が声をかけて作り上げたそう。巨大な団地に隣接しているせいか、夕刻に訪れるとウルトラQとかパラレルワールドとか、そういう気分になる。
5位 根岸森林公園
丘の上に残った競馬遺構
横浜の公園というと、「山下公園」と「港の見える丘公園」が有名。どちらも日本を代表するデート公園だと思うが、その近くにあまり有名でない根岸森林公園がある。でもこちらは先の二つ以上におすすめしたい。根岸の丘の上にある広大な公園は、実は明治時代の競馬場の跡地。端から端まで歩くともう半日終わった気がするぐらい疲れる。「旧一等馬見所」という建築家J・Hモーガンが造った観覧席も巨大な廃墟のようで迫力満点。近くにはユーミンが歌にしたレストラン『ドルフィン』があり、伝説のソーダ水もメニューに健在。この公園を起点に外交官の家、外人墓地、港の見える丘公園と足を延ばすのもいい。
4位 横十間川親水公園
水の都・東京を思う
万治2年(1659)に掘られた人工の川、横十軒川。その多くの部分を埋め立てて造られた総延長1970mの大規模親水公園。川の水位を人工的に調節する、いわゆるゼロメートル地帯にあり、水の都・東京に思いを馳せながら船に乗ってみよう。二つのボート乗り場や、水上アスレチックなどがあり、シャワーも完備されている。尾高ボート場では、毎週1回、和船の体験乗船会が行われ、櫓をこぐこともできる。
3位 稲荷山公園(ハイドパーク)
アメリカを感じる公園
通称ハイドパーク。かつてこの地にアメリカ空軍のジョンソン基地があり、その基地内に造られた公園。米軍撤収後、狭山市に払い下げられた。米軍住宅地だった代々木公園と雰囲気は似ているが、さらに静かで高低差のある造りで、深い森のような空気をたたえている。開放的な芝生広場も鬱蒼とした樹々の中を歩くジョギングコースも、非常に美しく見ごたえも歩きごたえ十分。ちなみ1970年代、公園周辺の米軍ハウスに若いクリエイターたちが移り住み、「アメリカ村」という一大コミューンを形成していた。その一軒に細野晴臣が移り住み、自宅録音したのが名盤『HOSONO HOUSE』。はっぴいえんど『風街ろまん』のジャケット裏の写真もこの辺りで撮影された。
2位 清澄庭園
雨の日もしっとりいいんです
公園歩きは晴れの日が楽しいものだが、清澄庭園は違う。晴天時より雨の日の方が目に楽しいのだ。もとは豪商・紀伊國屋文左衛門の屋敷で、明治期に三菱の創業者・岩崎彌太郎が買収し、回遊式林泉庭園として整備したことに始まる。佐渡赤玉石、伊豆磯石、伊予青石、讃岐御影石といった全国の名石を配したところに特徴があり、これが雨に濡れると色濃く存在感を増す。また、驚くほど亀が多いのもここの特徴。歩いていると、ふと足元で亀が甲羅干ししていたり首を伸ばしていたりするので注意が必要だ。そして清澄白河といえばロースタリ―カフェ、散策のついでにおいしいコーヒーをどうぞ。
1位 国立科学博物館付属自然教育園
武蔵野とはこういうこと
ひとことで言うとジャングル。初めて見た人はびっくりするに違いない。東京ドーム4つ分の広大な土地が武蔵野の姿の今に伝えている。白金長者と呼ばれた豪族の屋敷に始まり、江戸期は松平家の下屋敷、明治期は陸軍の倉庫をへて白金御料地、戦後は国立科学博物館の管理下へ。園内は深い森とひょうたん池、湿地に分かれており、なるべくそのままという方針のもとに保存されている。たとえば、常緑樹と落葉樹を手入れをせずに放っておくと背の高い常緑樹のみが残るはずという仮説を立証するなど、いわばプロ仕様の公園。東京というところは、放っておくとこうなるんだなあという見本のような場所。
というわけで選んでみました11の公園。いずれも地元の人達に愛されている公園ばかりです。「マイナー」などと書いてしまってすいません。ちょっと反省。
選定・文=武田憲人(散歩の達人MOOK編集長)