ひとつずつ少しずつ、母と娘の「好き」を集めて出来たお店
2015年創業の『Mogu-Mogu Cafe』は、人通りの多い市川という地で長年愛され続ける、大人たちの憩いの場のようなカフェだ。
「ただの“カフェ”だと、ちょっとオシャレなデザートとコーヒーとか、そういうイメージが強くて。でも、お客様にはお腹いっぱい食べてもらいたい。そんな想いを込めて『Mogu-Mogu Cafe』という名前をつけました」
そう語るのは『Mogu-Mogu Cafe』のオーナーの娘である高畑麻衣さん。『Mogu-Mogu Cafe』は、オーナーであるお母様と、その娘の高畑さんが二人三脚で営むカフェなのだ。
料理好きのお母様、カフェ好きの高畑さん。そんな2人がタッグを組んでカフェを始めることになったのは、お母様の「なにか飲食店、やってみようか」というひょんな一言がきっかけ。2人とも本格的な飲食店経験があったわけではないが、それぞれの“好き”がうまいこと融合して、徐々に現在のお店の形ができあがっていった。
創業当初はご飯メニューのみの提供だったが、2019年頃のかき氷ブームが引き金となり、『Mogu-Mogu Cafe』でもかき氷を始めることに。
「まずは夏季限定でやってみよう!と、割と見切り発車で始めたかき氷ですが(笑)、やるからにはちゃんとおいしいものを提供したくて。全く知識がなかったからこそ、他店の味を勉強するために、たくさん食べ歩きをしました。ビビッと来るものがあれば、どうすればこの味わいや食感を出せるのか、母と試行錯誤を重ねて」
高畑さんとオーナーの地道な努力の末に完成したかき氷は、今やお店の大人気メニュー。
2023年からは通年メニューとして提供しているが、取材当日はちょうどかき氷機がメンテナンス中。残念ながら食べ損ねたので、これは次回、かき氷リベンジをせねば……!
出来たてのおいしさが光るチキン南蛮!野菜も充実のMogu-Moguプレート
『Mogu-Mogu Cafe』のおいしい料理はかき氷だけではない。創業当初から作り続けてきたこの店のチキン南蛮は、市川を訪れたら一度は食べておきたい品だ。
お店一押し&一番人気のご飯メニューであるMogu-Moguプレート1485円は、男性でも満足できそうなボリューム満点のワンプレートランチ。スープと副菜は、日によって内容を変えることもあるそうだ。
衣はさくっ、中はふわっ。強烈なインパクトがある濃い味……というわけではないのに、食べると口いっぱいにじんわりと衣と肉の旨味が広がる。ザク切りの玉ねぎとまろやかな卵がたっぷり入った自家製タルタルソースが、肉のおいしさを格段に引き立てる。
作り方は、企業秘密とのことだったが、手間を惜しまず、手作り、出来たての味にこだわることが、おいしさの秘訣だそう。新鮮なサラダとデリ風の副菜のおかげで、野菜がしっかり摂れるのもうれしい。
おかずの満足度と同等、いやそれ以上に目を見張るのが、白米の味だ。一粒ひと粒が際立ち、しっかりとした甘みを主張してくる。ご飯は新潟の米農家から直接仕入れ、ガス釜で炊いているそうだ。
「実はこのチキン南蛮、私が小さい頃から大好きだった、母のタルタルソースの味を多く人に味わってもらいたくて発案したメニューなんです」と聞いてびっくり。
“おふくろの味”と一言で表現するにはあまりにも贅沢な味わいだが、『Mogu-Mogu Cafe』のチキン南蛮は高畑さんの思惑通り、今では多くのお客さんを魅了している。
しなやかに着実に歩み続ける、愛情いっぱいの手作りカフェ
「素人2人で始めた店だったから、最初は集客の仕方も、用意するチラシの枚数も何が正解か全くわからなかった。でも、トライ&エラーを繰り返すことで、ちょっとずつお店が成長していくことに喜びを感じます。ずっと苦労してるけど、ずっと楽しいですよ」
そう語る高畑さん。
高畑さんは、将来的なお店のビジョンを具体的には掲げていない。というのも、高畑さんは『Mogu-Mogu Cafe』を形式ばった無機質なひとつの店舗としては考えていないのだ。
「『Mogu-Mogu Cafe』は、私にとって“お店”というより“ちょっとワガママなMoguチャン”という子供のような感じ。自分たちの好きを押し付けるだけでは、アンバランスで大きくなれない。母と私、そしてお客様の想いを納得のいく形でお店に反映できたときに、ようやくMoguチャンが少し成長してくれる。そんな感じで、少しずつMoguチャンを育てている感覚です」
そう語る高畑さんの表情は、まるで愛しい我が子を想うかのようだった。
未来の形を決めていないからこそ、柔軟に、しなやかに、月日を重ねるごとにその時折の“素敵さ”を身に纏うことができるカフェ。そんなカフェに、ここ市川で出合えた。落ち着いた店内に溢れるポジティブパワーに触れれば、なんてことない日々に、なぜだか愛おしさを感じることができそうだ。
取材・文・撮影=杉井亜希