東京文化会館のミュージック・ワークショップとは

「ココとペペのわくわくカーニバル」。 © T.Tairadate。
「ココとペペのわくわくカーニバル」。 © T.Tairadate。
「バーバラの魔法のくすり」 ©鈴木穣蔵。
「バーバラの魔法のくすり」 ©鈴木穣蔵。

音楽や芸術に対する関心を高め、自己表現能力やコミュニケーション能力を養うことを目的とする体験型講座。ワークショップ・リーダーのもと、0歳から高齢者向けのものまで、年間を通して多彩なプログラムを開催している。

●お問い合わせは東京文化会館チケットサービス(☎03-5685-0650 / 10:00~18:00)まで。

今回の体験プログラムは……『アンサンブル喫茶へようこそ!』

ワークショップ・リーダーの桜井しおりさん(ピアノ担当)と磯野恵美さん(フルート担当)。「音楽で新しい世界を見つけませんか?」。
ワークショップ・リーダーの桜井しおりさん(ピアノ担当)と磯野恵美さん(フルート担当)。「音楽で新しい世界を見つけませんか?」。

軽く体を動かしたり、実際に楽器を演奏したりして、気軽に音楽を楽しむワークショップ。この日のテーマはベートーヴェン。50歳以上対象。

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いざ「体験」、ベートーヴェン!

テーマはベートーヴェンか。
すぐに思い浮かぶのは「ジャジャジャジャーン!」で始まる『運命』だが、その後に続くメロディーはまったく出てこない……。

この日の進行役は、東京文化会館ワークショップ・リーダーの桜井しおりさん(ピアノ担当)と磯野恵美さん(フルート担当)。参加者の年齢層は幅広く、50代どころか70~80代の方も多いそうだ。

「最初に軽く準備体操を」ということで、ベートーヴェンの『メヌエット』に合わせて手で肩や膝を叩く。3拍子でポンポンポン。音楽を鑑賞するのに準備体操がいるの?とも思ったが、そのワケはのちほど明らかになる。

《1. まずは準備体操》

肩、膝、足、フィンガースナップでリズムをとってみる。脳トレにもなる。
肩、膝、足、フィンガースナップでリズムをとってみる。脳トレにもなる。

続く『トルコ行進曲』では曲名通り、全員ステージに上がって行進。参加者同士は目が合うとニッコリ。一気に距離が縮まった気がするぞ。

《2. 目が合ったら笑顔でご挨拶》

『トルコ行進曲』に合わせてステージ上を行進。普段は立ち入ることができませんよ。
『トルコ行進曲』に合わせてステージ上を行進。普段は立ち入ることができませんよ。

さらに、桜井さんが言う。
「ベートーヴェンは散歩が大好きでした。今でもウィーンには彼が愛した散歩道が残っています。今日はその風景を皆さんも追体験しましょう」。

ここで、さまざまな民族楽器が登場。自然がテーマなので、鳥の鳴き声や雨の音を表現したいということだ。

《3. 好きな楽器を選ぼう》

ずらりと並んだ民族楽器は見たことがないものばかり。どれにしようかな。
ずらりと並んだ民族楽器は見たことがないものばかり。どれにしようかな。

僕は「チャフチャス」という小型の打楽器を手に取って、ホール内のあちこちで思い思いに鳴らしてみた。
おお、ものすごく響きがいい。
聞けば、この小ホールの音響の良さはかなり有名なんだそう。

《4. チャフチャスを鳴らしてみる》

音楽ファンから「奇跡的な音響」と呼ばれているホールの響きを五感で堪能しました。
音楽ファンから「奇跡的な音響」と呼ばれているホールの響きを五感で堪能しました。

休憩を挟んで、いよいよメインの演目。リーダーのピアノとフルートの演奏に合わせて『交響曲第7番 第1楽章』を、一人ひとり太鼓で合奏するのだ。

《5. 一人ひとつ太鼓を配布》

好きな太鼓を選んでいいということで、アフリカが起源のジャンベをゲット。
好きな太鼓を選んでいいということで、アフリカが起源のジャンベをゲット。

《6. いざ、合奏にチャレンジ》

『交響曲第7番第1楽章』に挑戦。リーダーの掛け声とともにジャンベを激しく連打連打。
『交響曲第7番第1楽章』に挑戦。リーダーの掛け声とともにジャンベを激しく連打連打。

これがやたらと気持ちよかった。なるほど、曲を知っていなくても、音楽は心と体で感じるものなんだな。参加者同士も周りを見ながらリズムを合わせている。

 

学校の授業とは一味も二味も違うこのようなワークショップは、あらためてクラシック音楽への道を開いてくれる気がした。
よし、次の週末はベートーヴェンを聴きながら、優雅な散歩としゃれ込もう。

《7. 記念撮影もできます》

桜井さん(左)、磯野さん(右)、そして偉大なるベートーヴェンさん、ありがとう!
桜井さん(左)、磯野さん(右)、そして偉大なるベートーヴェンさん、ありがとう!

『東京文化会館』詳細

住所:東京都台東区上野公園5-45/アクセス:JR・私鉄・地下鉄上野駅から徒歩1分

取材・文=石原たきび 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2023年10月号より

『Café HIBIKI』は『東京文化会館』のオープンテラスにあるセルフサービス式の気軽なカフェ。屋根がなく開放感がありながら、通り側には生垣があり、通行人の視線が気にならない。運営は『上野精養軒』なので軽食やスイーツの味も申し分ない。
一見、俗世と無縁の我が道を進んでいるように見えるクラシック界。しかし、実際は社会の動きを読み、聴衆のライフスタイルに合わせた公演形式を模索する日々が続いていたのであった。