御徒町で問屋街といえば宝石。だが、湯島にかけては眼鏡問屋も多く50社ほどあったとか。それを教えてくれたのは、祖父の代からこの地で眼鏡屋という『眼鏡とクラフトat RUTTEN_』の荒岡敬さん。「今も15社くらいありますし、不忍池には眼鏡の碑も。東京の眼鏡の聖地と言えるでしょう」。国産レモンの爽やかなレモネードを飲みつつ、洗練された眼鏡をゆっくり物色。作り手の思いと技がかたちになった品々はまさにクラフトだ。こちとらいよいよ老眼も心配、上質な1本を手に入れようか。
坂の上と下をつなぐものづくりも
理科教材の会社・ナリカでは気軽に科学に触れられる“理科の駄菓子屋さん”こと『scibox』へ。手回し発電機に元素周期律のトランプ、顕微鏡に自由研究キットなど、知的好奇心をくすぐるものばかり。おっ、フラスコや試験管ばさみも懐かしい。家で使ったらオシャレかなあ。
猫派優勢で猫雑貨があふれる今日に、やっぱり犬もいい!と思わせてくれるのが『Tesorino』。「お探しの犬種はいますか?」と聞かれたのには驚いたが、「犬好きさんは、うちのコじゃないとダメな方が多くて、結構犬種指定で来られるんです」。犬種の流行りがデザインにも反映され、2000年の開店時はダックスフント、最近はチワワ、プードルのモチーフが多いとか。犬の描かれ方も国や作家ごとに違うから見比べるのが楽しい。
「学問のみち」というわりには猥雑な店が顔を覗かせるなあ、と思うのが湯島。都道452号を渡れば方々に坂が待ち受ける。でも中坂の中腹には『東都records&books』なんてオアシスも。「上野に近い場所柄、買い取りは演歌などが多いと思ったら、文京区っぽさなのか美術書やジャズなどが集まったりする。それが面白い」と店主の保木哲也さん。店は街に育てられるものだと実感する。
「坂はハードですが、ここに店を開いたのも御徒町が近いから。年中行き来してますよ」とは、山で例えるなら尾根あたりの『bollingen』の桜井奈津子さん。御徒町は作品の仕上げに欠かせないメッキ職人がいて、材料の調達もできるそう。ふと、開けっ放しのガラス戸からふわりといい風が入る。「この風が抜ける感じも好きで。湯島天満宮と神田明神、その先のニコライ堂と神様に囲まれて縁起もよさそうですよね」。キラキラ輝く天然石のジュエリーもなんだか縁起物のように思えて一層眩しく見えた。
かける人もかけない人も楽しめます『眼鏡とクラフトat RUTTEN_』
素朴な郷土玩具も販売し、自家製レモネードなども飲めるカフェでもあるユニークな眼鏡店。眼鏡は大量生産されていない多彩なブランドを厳選。19時からの夜の部はなんと33種類ものクラフトレモンサワーが味わえるBARに!
・12:00~21:30、月休
・☎︎03-6284-2675
異国の雑貨に囲まれる、秘密の部屋!?『nico』
湯島のランドマーク的マンション「湯島ハイタウン」B棟の端で2004年から続く雑貨店。入り口から階段を下りて広がる不思議な造りの店内には台湾やタイ、ベトナム、ロシア、南米などから集めたキッチュな生活雑貨や衣類がいっぱい。
・13:00~18:00、月・火休
・☎︎03-5802-5463
個性あふれる作家作品に刺激!『matamata』
ジャンルも素材もさまざまなハンドメイド、クラフト作品のセレクトショップ。作家数は現在40名弱で、シルバーアクセサリー作家でもある店主・境哲史さんの、昆虫などをモチーフにした作品も刺激的だ。
・12:00~18:00(土・日・祝は10:00~)、月・火・水休
・☎03-6240-1356
音楽も本も一緒にじっくり探せます『東都records&books』
大手レコード店に長年勤めた店主が2020年に開店。「何でも買い取り何でも売る」を心がけ、在庫は好きなラテンをはじめ中古レコード4000枚、CD2000枚、古書2000冊以上。敬愛するムーンライダーズコーナーも。
・12:30~21:00(土・日・祝は~19:00)、火・第2または第3水休
・☎03-5826-4625
働く人も歩く人もホッとできる1杯『SHI-TEN(シテン)』
足立区小台の自家焙煎スペシャルティコーヒー店『BRÜCKE』が営むコーヒースタンド。浅煎りの味わいは朝からすっきり飲みやすい。アイスコーヒー500円はハンドドリップで提供。コーヒーゼリー350円は穏やかな甘さ。
・8:00~17:00(土・日・祝は12:00~)、不定休
・☎︎なし
リアル?コミカル?十人十色の犬雑貨『Tesorino(テゾリーノ)』
“小さな宝物”の意味する名の店は、食器や時計、バッグなど、みんな犬モチーフ! 犬好きのオーナーが欧米や日本で惹(ひ)かれた多彩な作風&犬種の品を取り揃える。写真左はアメリカのアリソン・パーマーさん作の蝋燭立て2万1800円。
・11:30~17:00、土・日・祝休
・☎03-3831-2002
理科のことならここにお任せ!『ナリカ』
1918年創業の理科教材会社(旧名・中村理科工業)。1階の店舗『scibox』では実験器具や科学グッズ、理科モチーフの文具などを販売。会長・中村久良さんと手をつなぐ人体骨格模型の店長・ホネーチョと肉無(ニーナ)が迎えます。
・11:00~16:00、土・日・祝休
・☎03-3833-0758
知らない世界がここから始まる『出発点』
出版社『旅と思索社』併設の書店は絵本とZINEが多めでシェア本箱「はこハブ」ありと、一般書店にはない面白さ。「興味あるものを棚に表現しています」と点主・廣岡一昭さん。手には、店で作ったZINE『本と旅する』880円。
・12:00~20:00(日は~18:00)、月・火休
・☎03-4400-8646
インドの風薫るアトリエにおじゃま『bollingen(ボーリンゲン)』
ジュエリーブランド・NATSUKOSAKURAIの工房兼セレクトショップ。唇やブッダの手などを取り入れたチャーミングな作品を手がける。天然石の仕入れで赴くインドで見つけた雑貨も販売。
・12:00~17:00、月・火・水休(2023年6月19日~7月末は海外出張で臨時休)
・☎︎なし
釣り好きもお客さんもみんな満足『旨い魚と酒 みやけじま』
店主は島での磯釣り好きな髙橋勇さん。客人も釣り好きが多く、結果、使う魚はほぼ持ち込みと自身で釣った魚で賄っているとはすごい。刺身5種盛2680円、釜飯1680円~ほか。三宅島の「雄山一」600円ほか東京都の島酒も勢ぞろい。
・17:00~22:30LO、日・祝休
・☎03-3834-8508
取材・文=下里康子 撮影=逢坂聡
『散歩の達人』2023年7月号より