元東京都水道局の宿舎を利用した茶食堂『SAKUU』
渋谷駅から徒歩8分。ちょうど渋谷と原宿の間に位置する『SAKUU』は2020年2月、『JINNAN HOUSE』内にオープンした。“OCHA & GOOD THINGS”をテーマに、お茶の楽しさと面白さとともに食事やスイーツをいただける。広い庭で落ち着いたひとときを過ごせる茶食堂だ。
お昼はこだわりの日本茶とバランスの取れた定食、夜は国産ワインとお酒に合わせた前菜・炭火を使ってグリルした肉や野菜をゆっくりと堪能できる。
お話を聞かせてくれたのは、店長の佐藤奈緒美さんだ。「ここはもともと隣にある東京都水道局代々木増圧ポンプ所の宿舎でした。『JINNAN HOUSE』には『SAKUU』とギャラリー&イベントスペースの『HAUS STUDIO』、そのほかイベント会社『キリンジ』と雑誌『Rice』の編集部があります」と語る。
鮮やかなお手並で淹れてくれるお茶は緑茶、ほうじ茶、ほうじ茶ラテなどがあり、食事やお菓子とともに味わえるという。これは楽しみだ。
定食はメインもさることながら惣菜や香の物もひとつずつ手作り
毎日、11時30分から14時30分まで実施しているランチは4種類。メニューは不定期で変わるが、メインは鶏・豚・魚・野菜が中心だ。どれもおいしそうなので迷ったが、この日はサバの竜田揚1200円を選んだ。
こちらではメニューを選んだら先に精算をするシステムだ。現金は利用できず、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済のみなので、入店前に残高のチェックを忘れずに!
サバの竜田揚げはいかにして完成するのか、厨房にお邪魔した。
サバはショウガ、醤油、みりん、酒に一晩漬け、オーダーが入ったら米粉と片栗粉をつけて油でカラッと揚げる。
出来あがる間に付け合わせの惣菜2品と香の物を皿に盛り付けた。シェフは「お客さんにはおいしく食べていただきたいです。香の物やお惣菜も手作りしているんですよ」という。
さらに「お米は神奈川県平塚市のGAYAMA FARMで、農薬・化学肥料を使わず安心安全に育てられたおいしいお米なんです」と言うので米好きの筆者は期待値がグンとアップ。毎週、農家さんから精米したてのお米を送ってもらっているそうだ。
サバちゃんが香ばしい香りをさせながら「早く食べて〜!」と誘って来るが、さてどこに座ろう。訪れた日は少し風が強いものの日差しが暖かい日だったので、庭でいただくことにした。こんなに気持ちがいい日は全身に太陽を浴びながらご飯が食べたい。
よし、まずはサバの竜田揚から。外はパリッとしているが、中はジューシーで脂が乗っている。こぼれ出したサバの旨味を水菜がたっぷり受け取ってくれる。うーん、ご飯に合う!
この日の惣菜はゴマが香るもやしとにんじんのナムル。そしてきゅうりの香の物だ。食感も楽しく、口の中をさっぱりさせてくれる。付け合わせは頻繁に変わるので、来るたびに楽しませてくれそう。
ところでサバにかかっている粉末は何だろう? 黒ゴマかな、シソのふりかけかな? と思ったが、その正体はほうじ茶塩だった。「茶葉を焙じ粉末にして塩を混ぜました。茶葉塩は緑茶の出がらしを低温でゆっくり乾燥させ塩を混ぜたものです。お茶は飲むだけでも身体に良いのですが実は茶葉にいちばん栄養があるんです」と佐藤さん。こうして食べればお茶を最後まで味わい尽くせるのだ。
食後に冷たい緑茶をいただき完食。ごちそうさまでした。
お茶を使ったスイーツは、日本茶だからこそ合う!
メニューを見ていて気がついた。あ! この店にはコーヒーがない。「そう、日本茶だけなんです。今、日本茶を飲むならペットボトルが普通じゃないですか。お手軽でいいんですけど味は単一ですよね。こうやって急須で一煎二煎と淹れていくと味や香りに変化があることを若い子たちに楽しんでもらえたらうれしいですね」。と言って、佐藤さんが天竜茶葉湯出し急須3煎700円を淹れてくれた。
一煎目は低めの温度のお湯で淹れ、茶葉の甘みと旨味を抽出しているそうだ。香ばしく爽やかな香りもするし、ペットボトルのお茶では味わえない深みや層を感じる。二、三煎目は熱い湯を注ぐ。徐々に黄色みが強くなり、苦みや渋みがあったが、一煎目よりもあっさりとしていて口の中がリフレッシュされた。ああ、やっぱり急須で淹れたお茶はおいしいなあ。
こちらではデザートにもお茶を使っている。濃厚なバニラアイスに白玉と小豆を添えて濃いめの抹茶をたっぷりかけたアフォガード、ほうじ茶を使ったガトーショコラなどもある。もちろん、お茶との相性もぴったりだ。
わぁ、どれもおいしそうだ。今日は予定を変更して、このままティータイムにもつれこむのもアリだなあ。そのときの気分にまかせてみたくなるのは、ここに心地よい風が吹き抜けるからかもね。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢