東京駅八重洲北口「北町奉行所跡」からスタート
11月初旬、天気は快晴。絶好の散歩日和だ。さんたつ編集部は東京駅八重洲北口に降り立った。
さて、えりさままさんが最初の「気になるポイント」としてあげていた「北町奉行所跡」はどこだろうかと周囲を見回すと、シラタキが真っ先に発見した。
駅出口からほど近くにひっそりと佇んで、在りし日の痕跡を残している。意外と見過ごされがちではないだろうか。
奉行所とは武家時代の官署。主君の命を報じて事を執行する役人の詰所がこの場所にあったことを示している。
次は『皇居東御苑』へ。ところが、まさかの事態に……
最初の目的地に到達し、幸先のいいスタートを切った編集部の次の目的地は、皇居東御苑。
東京駅の地下を突っ切って、皇居を目指す。「白い萩の月」など、そそられるお土産に気を引かれながら、束の間の地下さんぽを楽しんだ。
大手町側の出口から地上に出ると、秋晴れの日差しが心地よく、改めて今日は絶好の散歩日和だと感じる。銀杏も鮮やかに黄色く色づいていた。
やがて、建物と建物の隙間から次第に皇居の姿が見えてきた。
歩みを進めていくと、その先では青空が広がり、一気に開けた場所に出る。
自動車の往来はあるが都会の喧騒から離れることのできるひとときで、心地よい時間の漂流者になれる。
皇居周辺ではランナーの姿もたくさん見受けられた。秋晴れの中このあたりを走るのはさぞ気持ちがいいだろうと思いながら、胸の内でエールを送った。
桔梗門(内桜田門)周辺を巡り、大手門まで来て「さあ、いよいよ東御苑だ!」と意気込んだところで、……「も、門が閉まってる!」
なんと迂闊(うかつ)にもその日は休園日で、入ることは叶わず……。みなさんも、足を運ぶ際は休園日に注意しよう。
※後日、東御苑へ行ったレポはこの記事の最後に!
気を取り直して、『法務省旧本館 赤れんが棟』へ
大手門から有楽町方面へずっと歩いていき、桜田門を通過。次なるえりさままさんの気になるポイントは『法務省旧本館 赤れんが棟』だ。
お昼頃は眩しいくらいの日差しだったが、この頃になると少しずつ日が陰ってきた。11月に入り、すっかり日が暮れる時間が早くなっている。
赤れんがの建物が見えてきて、歩くスピードも心なしか速くなる。だんだんその姿が大きくなってきた!と、ふと傍(かたわ)らを見やると「米澤藩上杉家江戸藩邸跡」を発見。思いがけない発見だったが、江戸ツアーにはお誂(あつら)え向きだ。
『法務省旧本館 赤れんが棟』の手前の横断歩道を渡るとき、おばあさん、お母さんと左右で手を繋いで渡る女の子とすれ違い、心が和んだ。
近くを通りがかるたびに立派な建物で心惹かれていたのだが、中に入る機会はこれまでなかった。警備員さんが何人かいらして入りづらい雰囲気だが、館内を見学したい旨を伝えると案内してもらえた。入館証をもらい、いざ館内へ。
1994年12月27日に重要文化財に指定された『法務省旧本館 赤れんが棟』は、ベルリン工科大学に留学経験のある河合浩蔵(こうぞう)が工事監理を務め、明治21年(1888)に着工、明治28年(1895)12月に竣工した。東京大空襲でれんが造の躯体(くたい)と防火床の一部を除いてほぼ全焼してしまったが、1991年から1994年にかけて行われた保存改修工事により創建当時の姿に復原した。建物は、1階を低く抑え、2・3階を高くした3階建で、明治の官庁集中計画による建物で現存する唯一のものであり、本格的なドイツ・ネオバロック様式を用いた外観に特徴がある。
外観の立派さもさることながら、内装も当時の面影を残しているようで、レトロな雰囲気。法務史料展示室・メッセージギャラリーでは、日本の司法制度の基盤形成に大きく貢献した先人の紹介や、法服や明治期に編纂された法典等が展示されていて、貴重な史料を閲覧することができた。
また、展示スペースでは「法務省メッセージギャラリークイズ」に挑戦でき、挑戦後に認定証がもらえる。
日比谷公園に寄り道し、「南町奉行所跡」へ
普段なかなか触れられない史料で勉強になった後、えりさままさんの最後の「気になるポイント」、南町奉行所跡へ。もうすぐこの散歩も終わりを迎える。
有楽町駅に向かう途中で、日比谷公園に寄り道した。
日比谷公園の地図を眺めていたら、中央に「首かけイチョウ」という言葉があり、何だろうと気になった。首かけイチョウとは、日比谷公園内に生育するイチョウの巨木で、かつて日比谷通りの拡幅工事に伴って伐採されようとしていたこの木を、日比谷公園の設計者として知られる本多静六が「私の首をかけよう」と強く主張して救ったのがその名の由来だそう。
日比谷公園といえば、毎年10月に開催されていた「鉄道フェスティバル」が思い出深い。筆者も交通新聞社ブースのスタッフとして参加したことがあるが、ここ何年かは台風や新型コロナウイルスの影響を受けた。
そしてついに有楽町駅に到着!たくさん歩いたが、心地よい疲労感。
有楽町駅の目の前すぐにある東京都指定旧跡南町奉行所跡を見つけ、ゴールした。
奉行所跡から特別史跡江戸城跡、法務省旧本館など、昔日の面影に触れることのできる散歩コースだった。途中、気になる看板を見つけたり、日比谷公園に寄り道したりと、天候にも恵まれた秋の散歩を満喫し、さんたつ編集部は帰路に就いた。
改めまして、素敵な散歩コースをお寄せくださったえりさままさん、さんたつサポーターのみなさま、ありがとうございました!
【番外編】『皇居東御苑』にリベンジ!
ここからは番外編。後日、筆者は1人で、休園日だった『皇居東御苑』に行ってきた。
天候は……雲行きが怪しいが、なんとか持ってくれるかな?
大手町駅から大手門へ向かう途中で、将門塚に立ち寄った。
将門塚をお参りし、皇居の大手門を一気に目指す。この日もランナーの姿を多く見かけた。
広々とした芝生を見渡すと、木々が秋の色を纏っていた。奥に高層ビルが見えるのも不思議な感じだ。休日だったためお子さん連れも多く、子どもにとっても開放的な空間はたまらないはず。
天守台に向かう頃には、にわか雨も上がった。自分のお気に入りだろう傘を丁寧に閉じている女の子とすれ違う。一心な眼差しがかわいらしかった。
葉が秋を思わせる色に変化していて、季節の移ろいを感じる。
東御苑は広く、ゆっくり滞在すればここに数時間はいられそうだ。
行き帰りは大丈夫だったが、御苑内にいる間だけ雨に降られる雨男ぶりを発揮。とはいえ、江戸にタイムスリップツアーを満喫することができた。
撮影=さんたつ編集部