商店街のど真ん中。昭和25年開業以来、ずっとこの場所で

八百屋の脇を入る。看板を見逃さないように!

創業は昭和25年(1950)、店名の「若松」はかつてこのあたりの町名だったことから。戦後のどたばたの中、どうにか造ったという建物を、2年後に建て替え。そして昭和57年(1982)、2代目の大橋さん夫婦が建て替えたのが今の建物だ。

妻の薫さんは初代店主の娘で、店主の大橋さんとは大学の同級生という間柄。大橋さんは薫さんに誘われ、長きに渡って住み込みのアルバイトをしていた。「食事が出るのがうれしくて」と話す。大学卒業後はサラリーマンを経て結婚。昭和49年(1974)に2代目を継ぐこととなったのは、初代が亡くなってから9年後のことだ。

レトロな古いタイルの壁に、お湯が流れる

シンプルな造りの浴室。

浴室奥の青い壁には、お湯が流れ落ち、その音が響いていた。清潔感があり、レトロな色合いのタイルに懐かしさを感じる。浴槽は2つで、バイブラと超音波の2種。広さは十分で、一つの浴槽に4人くらいがゆったり入れるサイズだ。

特徴は井戸水を薪で沸かしていること。薪は建築廃材で、3〜4日分を2時間ほどかけてチェーンソーで切る。かなりの重労働だが、薪で焚いた井戸水は、やわらかく感じるという。毎週日曜の薬湯も、楽しみにしている常連が多い。

左がバイブラ、右が超音波。お湯はちょっと熱め。

ランニングステーションとして利用できるのが◎

ロッカーの鍵を借りて荷物を預けられる。

会社帰りや休日、銭湯のロッカーに荷物を預けてランニング。その後、銭湯に戻り、疲れをお湯で流すことができるのが「銭湯ランニングステーション」、通称「ランステ」だ。さいたま市がスポーツ振興として取り組んでいる事業の一環で、こちらの銭湯もランステとして利用できる。

ここから北浦和公園までは、歩いて4分ほど。公園内には、噴水広場や黒川紀章が設計した県立近代美術館があり、彫刻のオブジェが点在している。豊かな緑の中で気持ちの良い汗をかいた後、すぐに大きな風呂でゆったりできる。なんて贅沢!

待合で、本を読みながらゆっくりくつろぐ

フロントの導入は、県内の銭湯の中ではかなり早かったとのこと。

フロントの奥は、マッサージチェアなどを備える、ゆとりのある待合になっている。

趣味は読書という大橋さん。大きな本棚には、一般書籍だけでなく漫画もたくさん。大橋さん自身は、最近はミステリーを読むことが多いとのこと。

漫画やミステリーなど、種類も豊富な本棚。

銭湯の数は年々減る一方で、埼玉県全体で38軒。さいたま市にはそのうち10軒、そして、薪で沸かしているのはそのうちの4軒だけだ。

「うちもいつまでできるかはわからないけど」と大橋さん。しかし、「生活の一部として利用する人がいる限り、責任があるので銭湯はやめるわけにはいかない。体が動くうちは続ける」と力強く話す。

責任は重く、かつ重労働。では、銭湯で働く喜びは?と聞いてみると、「なんたって先にお金払ってもらえること!」と笑う。

「その上、帰るときには『気持ちよかった。ありがとう』って言ってもらえる。しょっちゅう夫婦で『いい商売だなあ』って話してるよ」。こちらこそ、いい話を聞かせてもらった。

住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤10-10-15/営業時間:15:30~23:00/定休日:水曜/アクセス:JR北浦和駅から徒歩5分

取材・文・撮影=ミヤウチマサコ