テンション上がる総菜盛り合わせ『きっちん大浪』
吉祥寺駅から歩いて6分の井の頭通り沿いに『きっちん大浪』は、野菜たっぷりの副菜がついた焼き魚定食が自慢。この店の前身である飛騨高山料理を提供する店にお客として通い、店を手伝っていた清水さんが大将から引き継ぐ形ではじめ、一人で切り盛りする。
鯖の西京焼き定食は、西京漬けにした鯖と総菜の盛り合わせにご飯とお味噌汁がついており、食べごたえ抜群だ。副菜となるお総菜の盛り合わせは日替わりで、7〜9品もついてくるのがうれしい。「1人で全部作っていて電子レンジもないので、魚を焼くあいだ待ってもらうのにお総菜の盛り合わせをつけています。酒のおつまみとしても重宝されているんですよ」と清水さん。
焼き魚は必ず焼きたて。ジリジリとたっぷりの脂がにじんで、身もふっくらジューシー!
さらに、ご飯はなるべく精米したて、味噌汁には前の店の大将に教わった飛騨の味噌を使用し、定食に使う野菜はなるべく地のものを仕入れるという。きちんと美味しいに向き合う姿勢から生まれた定食は、胃袋の迷子に効く味だ。
『きっちん大浪』店舗詳細
店名を冠した定食、ガツンと汗かくスタミナ!『食堂居酒屋 どいちゃん』
『食堂居酒屋 どいちゃん』で食べるなら、店名を冠し、長く愛されているどいちゃん炒めご飯定食。メインは豚肉、たこ、キャベツ、もやし、にらなどが入った野菜炒めを大胆にご飯にのせたどんぶりご飯。これに味噌汁と日替わりの副菜、お漬物が付いてくる。
どいちゃん炒めご飯定食には、自家製の辛味噌「どいちゃんだれ」が欠かせない。どんぶりにかけて食べる用に付いてくるタレなのだが、常連さんに愛されすぎて+100円で他の定食にもつけられる。ちょっと意外だが、お味噌汁に入れるお客もいるのだそう。
どんぶりにタレを豪快に混ぜて口にかき込むと、なかなか辛い。カッと熱くなって少し汗ばむのが心地よく、この甘辛さがクセになる。パワフルなどんぶりで元気がみなぎってくるのだ。
『食堂居酒屋 どいちゃん』店舗詳細
おばあちゃんの手料理をお手本にした定食を『四歩』
吉祥寺駅から歩いて15分ほどの住宅街にある『四歩(しっぽ)』は、どこかに懐かしさを感じる雑貨やアンティーク家具を集めた店だ。カフェスペースで食べられる本日のごはんセットは、週替わりでメニューが変わり、メインが2種類から選べる。どのおかずもおばあちゃんの料理がお手本になっていて、この日は「鶏団子と車麩とかぶの煮物」を注文。
「鶏団子と車麩の煮物」は、ほろりとくずれる鶏団子と出汁をたっぷり吸った車麩がやさしい味わい。うんうんと頷きながら、顔がほころぶ。小鉢も食感や味付けがかぶらないよう考えられており、いろんな料理を少しずつ、あれも、これもと楽しんでいるうちに満腹になる。
「旬の食材も使いつつ、野菜たっぷり。たくさん食べてほしくて、この形になりました」と店主の宮崎さん。晩ご飯を食べに通う近隣住民がいるというのも納得の満足感だ。
『四歩』店舗詳細
昭和のスナックの香りが残る定食屋『コペ』
創業から40年以上続く『コペ』は、スナックから転身したちょっと珍しい店だ。「もともと私がスナックをやっていたの。お店で定食を出していたら、それが評判になって定食屋に変えたのよ。今どきの時代の流れもあってね」とお母さん。
他の店ではあまり見かけないメンチ玉子とじ定食は、ご飯、味噌汁、メンチ玉子とじ、副菜にスパゲッティサラダ、もやしの和え物、おからとひじきの炒り煮、納豆と漬物がセット。これだけの品数で750円という良心価格に頭がさがる。また、ご飯は麦飯と白米が選べ、プラス200円でとろろもつけられる。「麦とろ定食を出しているから、サービスで選べるようにしたのよ。7割以上のお客さんは麦飯。栄養も豊富だから体にもいいよね」とお母さん。
メンチ玉子とじは「熱いのでお気をつけて」の言葉とともに、グツグツと音を立てて運ばれてくる。メンチカツは衣がつゆでしみしみ。ご飯にワンバウンドさせながらいただけば、気取らないおふくろの味が口に広がる。
『コペ』店舗詳細
元寿司職人が提供するフルコースのような定食『階段ノ上ノ食堂』
吉祥寺駅から歩いて1分、公園口からある通りのビルの2階にある。店主の浜名晃さんは元々高級寿司店の職人の経歴をもつ生粋の料理人。祖父の代から吉祥寺で寿司店を営んでおり、継ぐつもりでいたが、全国で食べ歩くうちに、旬の食材を使用した食堂を作りたいと一念発起。『階段ノ上ノ食堂』をオープンさせた。
メニューは日替わりの定食が4種類。浜名さんは鉄板料理店で働いた経歴もあるため、肉料理の腕前も確かだ。そのほか、海鮮丼定食や毎年冬のお楽しみカキフライ定食もおすすめ。定食に必ずついてくる副菜は、少しずつ色んな旬の料理が盛り合わせてある。副菜やサラダを堪能したあとにドン!とメインがやってきて、定食でありながらもコース料理のような喜びがある。
『階段ノ上ノ食堂』店舗詳細
自然食にこだわった定食で本当の美味しさを『もんくすふーず』
吉祥寺駅から徒歩5分ほど。『いせや』を通り過ぎたあたりに『もんくすふーず』がある。自然食にこだわる定食店で、創業以来、添加物や保存料は不使用、米や野菜は無農薬、有機栽培のものを使用。店主の小林さんは、地元の旬の食材や伝統料理が、そこに暮らす人にとって体にいいという考えかたで、なるべく地元の野菜を使うように心がけているという。
定食は日替わりで、野菜が中心のおかず、魚、鶏肉の3種類から選べる。この日の野菜定食のメインは、里芋と野菜五目赤味噌煮。体にいい料理は、心にもしみる。食べ終わったら、きちんと「ごちそうさま」が言いたくなった。
『もんくすふーず』店舗詳細
質のよいおろしたての魚を手軽に『里の宿』
真っ赤に輝く金目鯛、色とりどりの小鉢にご飯。本日の煮魚定食を注文したら、栄養たっぷりの食卓になった。「煮魚のタレは開店から30年以上、注ぎ足しながら使っているんです」と店の方。おお、甘辛で深みのある味わいは店の歴史そのものだったのか。女性常連客が多いのも納得のしゃれた店内だが、素材の良さは極めつき。井ノ頭通り沿いに南に6分の鮮魚店『魚初』の直営店なのだ。豊洲市場での仕入れや下ごしらえは『魚初』担当。刺身定食を注文すれば、鮮魚店ですぐにさばいてお客のもとに届けられる。さらに漬物も自家製、ご飯はコシヒカリと美味ぞろい。『魚初』自体、手作り総菜やご飯も揃うが、さらに「姉妹店の居酒屋『せんぎょ屋』もあります」と店主の鈴木さん。定食に総菜に酒の肴までこんなにいい魚を食べるのが日常とは羨ましいぞ、吉祥寺民。
『里の宿』店舗詳細
L字カウンターにへばりつく喜び『もがめ食堂』
「お母さんが作るみたい」との声があった通り、社長の母、宮本久子さんが開業時にメニュー作りを手伝った。「まるで家のごはんだよね」と恐縮するが、みんなそれを求めているのだ。唐揚げや生姜焼きなどの定番に加えて、日替わりが2種。「揚げ物や肉料理と、上品な煮物など真逆を用意します」と、和食が得意な豊澤隆さん。常連客の多くが、ひき肉入りミニカレー100円を追加注文、同時にご飯をお代わりしている。こりゃ、満腹御免の作戦だ。
『もがめ食堂』店舗詳細
土・日・祝のみオープンの正統派洋食店『ヨシダゴハン』
今はなき吉祥寺の老舗『シャポー・ルージュ』でコックとして働いていた吉田順さんが、2014年に開店。「日本生まれの洋食は、日本食の1つです」と、ご飯に合う味を大切に作る。牛と豚の合いびき肉に、つなぎを加えてしっかり練るハンバーグは、洋食の定番デミグラスソースをたっぷりかけて。牛スジ、仔牛の骨、鶏ガラと香味野菜、ワインを入れて4 ~ 5日じっくり煮込み、濃厚ながらすっときれいな後味が自慢。皿に残ったらご飯を絡めてたいらげたいほど。
『ヨシダゴハン』店舗詳細
店内なのにお弁当!仮面の下の実力派!『カヤシマ』
喫茶店とも食堂とも居酒屋ともつかぬ何とも不思議な営業形態に、お店の中なのにしょうが焼き弁当とはこれ如何に。「最初は喫茶店だけだったんだけど、食事もお酒もやり始めたらちゃんとやりたくなちゃってね」と店長の佐藤孝一さん。弁当スタイルも出前をやっていた頃の名残だそうだが、片付けるのにも便利だし、とそのままに。しょうが焼きはタレの鍋で肉をしゃぶしゃぶする独自の調理法。普通のものと一味違う、濃厚な味わいだ。
『カヤシマ』店舗詳細
天晴れ! 元気な笑顔と庶民派価格『まるけん食堂』
近くに住んでいる人・働いている人がうらやましくなるような店の代表格が、この『まるけん食堂』。この店だけ昭和の時代に取り残されたかのようなレトロ感と、ホッとする雰囲気、そして価格設定。近くにあったら毎日通うこと請け合いだ。日替わりには、ボリュームある肉か魚のほか、切り干し大根やひじき煮など優しいおふくろの味も登場。生アゲ生姜焼きといった一品も多く、好物を自在に組み合わせ、マイ定食を仕立てる"まるけん上級者"も多い。
『まるけん食堂』店舗詳細
取材・文=福井 晶、眞鍋じゅんこ、松井一恵(team まめ)、半澤則吉、かつとんたろう 撮影=福井 晶、鴇田康則、加藤熊三、小野広幸、オカダタカオ、加藤昌人