【歴史ある老舗居酒屋、お気軽にどうぞ!】
5層仕立ての大串やきとりで渋谷の会社員たちを癒やす『鳥竹総本店』
京王井の頭線渋谷駅西口の改札を出てすぐ、ダクトから白い煙が出ているのが見える。1963年創業の『鳥竹総本店』は半世紀もの間、大串の焼き鳥をはじめリーズナブルな一品料理で、仕事帰りの会社員たちを癒やしてきた大衆酒場だ。
この店の宝は創業当時から注ぎ足して使っているタレ。1日1000本以上の焼き鳥が浸されているから旨味が凝縮され、唯一無二の味に仕上がっている。
名物の大串やきとりは一般的な焼き鳥の2倍はありそうなサイズが自慢。熟練の職人による肉の仕込み方や炭火での絶妙な焼き加減でジューシーに仕上がっている。また、串の先端からもも肉、長ネギをはさんで再びもも肉、ししとう、むね肉の5層仕立てになっていて、ひと串でふたつの部位を楽しめるのもひとり飲みにはありがたい。
そのほか柔らかく臭みのないとりきもや、ひと串に3個もついてくるつみれ(ピーマン肉詰め)もボリューム満点。程よい苦味と香り、コクが深くて飲みごたえがある瓶ビール・サッポロ赤星をキュ~ッと飲み干そう。
『鳥竹総本店』店舗詳細
アツアツはもちろん夏季限定“冷やし”もイケる!『多古菊』名物・関西風おでん
京王井の頭線渋谷駅西口からすぐ、1975年創業の居酒屋『多古菊』は、おでんと串揚げのみではじまった店。今はほかに焼き鳥、揚げ物、肉料理、旬の素材を使った一品料理もありバラエティ豊富なメニューを取り揃えている。
創業以来人気のおでんは、昆布でとった上品な出汁をたっぷり使用している。真夏でも汗をかきながらアツアツを食べる熱狂的なファンもいるが、5月後半から10月までは煮こごりに包まれた冷やしおでんも提供している。具材は日替わりで、アツアツおでんと同じ関西風の昆布出汁で煮込まれており、ちょっと塩気が強いのが特徴。ぷるぷるひんやりの煮こごり部分もおいしくて、これでもう一杯お酒が飲めそうだ。
また、定番人気の生アジフライは、最先端のフライヤー“ドクターフライ”で揚げるから、脂っこくなくて中はジューシー。ホクッとした身とアジの旨味や香りが強く残っていて、これぞ“生”の味わい。さらに揚げた骨が激ウマ! スナック菓子のようにカリッと軽く、塩で味つけられているからこれまたお酒がすすむ。
『多古菊』店舗詳細
レトロな雰囲気の『たるや』。お好み焼きと地焼酎に惚れる
渋谷駅から徒歩5分ほどのところにある「百軒店(ひゃっけんだな)」。風俗店が多く並ぶ地域だが、歴史ある飲食店も点在する。そのひとつが昭和6年(1931)創業のお好み焼き屋『たるや』だ。店内は昭和な空気に包まれており、壁には古き良き渋谷の風景を捉えた白黒写真やジャズのポスターがズラリ。
お好み焼きは、20種類以上あるトッピングの中から好きな具材を選べる。おすすめは、豚肉にイカやエビなどの海鮮をミックスした、“<二番人気>トッピング”。みじん切りのキャベツが生地の軽い食感を生み、各種海鮮の風味&食感の違いを堪能できる。ソースがサッパリとした味わいなのは、同店の主役はお酒だから。カツオベースの出汁が効いた名物メニューの牛すじ煮も、お酒にぴったりだ。
3代目店主が厳選した地焼酎は、お手頃なものからツウ好みのものまで、風味の違いを含めてバランスよくラインアップ。「魔王」や「森伊蔵」といった隠し焼酎もあるので、あれこれ飲み比べてみたくなる。
『たるや』店舗詳細
一見さん大歓迎の老舗『居酒屋 千』で個性豊かな料理を味わう
渋谷のランドマーク「SHIBUYA109」に面したビルの4階に位置する『居酒屋 千』。1982年創業の老舗ならではのレトロなたたずまいが目を引く。一方で、店内は清潔感に満ちており、誰でも気兼ねなく利用できるカジュアルな雰囲気だ。
イチオシの料理は、アジ刺身(丸ごと一尾)、炙り白レバー、トンバンバンの3品。ほどよく脂がのったアジ刺身は、とろけるような食感で、旨味たっぷり。なめらかな舌触りの炙り白レバーは、レバーが苦手な人でもハマるほどクセがなく、噛むと口の中で溶けていく。この2品には日本酒や焼酎を合わせたい。
豆板醬を効かせたトンバンバンは、角煮のような柔らかさ。はじめは甘辛く、あとからじんわり広がる辛さに食欲を刺激される。こちらはビールがほしくなること必至。
昭和な空気感を大切にしつつ、ネット予約やモバイルオーダーなどを取り入れる柔軟性もポイント。昔からの常連客と若い新規客の両方に配慮した、レトロでモダンな居酒屋だ。
『居酒屋 千』店舗詳細
アーティストたちのプライベートサロンが小料理店に『しぶや 三漁洞』
1967年4月8日、尺八の名手・福田蘭童さんによって開かれた小料理店『しぶや 三漁洞』は、国道246号沿いにある。
蘭童さんは釣りの名人でもあり料理上手だったため、自分で釣った魚をたびたび友人たちに振る舞っていたそう。そのことが雑誌で紹介されたのをきっかけに、プライベートサロンとして使われていた空間が、開かれた飲食店に様変わりした。調べてみると、井伏鱒二、志賀直哉、谷崎潤一郎、菊池寛といった作家らと交流があったようだ。
2代目を引き継いだのが福田蘭童さんの息子・石橋エータローさんだ。石橋さんは昭和を代表するジャズバンド、クレイジーキャッツのピアニスト。その妻が現在3代目を担う女将さんなのだ。
この店では和をベースにした創作料理とうまい酒がいただける。定番人気は、刺身盛り合わせ、ぶりと大根の炊き合わせ、あさりの酒蒸し。毎日豊洲から仕入れる新鮮な魚介類を使った料理に、キリッと冷えた酒が合う。
『しぶや 三漁洞』店舗詳細
【個性が強い!渋谷のネオ居酒屋】
コの字カウンターを囲む立ち飲み&ビストロ『富士屋本店 サクラステージ』
明治16年(1883)創業の「富士屋本店」は渋谷・桜丘の酒販店としてスタートし、店の横ではじめた角打ちが渋谷の立ち飲み文化の始まりと言える店だった。2023年、この歴史的な名店の跡地に建ったのが渋谷の新スポット『渋谷サクラステージ』で、そこに『富士屋本店 サクラステージ』がオープン。1階に立ち飲み、地下1階にビストロを備え、再びこの地でうまい酒と料理を提供している。
酒はひと通りのものが揃っているが、とくにワインは分厚いリストを常備しているほど豊富な品揃え。また、カクテルに入れるシロップやトマトジュース、サングリアなどを自前で作り、よそにはない酒が味わえるのもこの店の魅力だ。
1階のフードメニューは軽いものがメイン。プルドポークとチーズのホットプレスサンドは、バターの香りがして、カリカリとした食感がいい。中には甘じょっぱいバーベキューソースで味付けられた豚肉やピクルス、チーズがぎっしりと詰まっていて食べ応えもあり、おつまみにもなる。
『富士屋本店 サクラステージ』店舗詳細
世界各国のビールと絶品の鉄板料理!『高丸電氣』は看板のない大人の秘密基地
建物の外から見えるのは“氣”のネオンサインだけ。渋谷駅前からちょっと外れた東エリアにある『高丸電氣』は、知る人ぞ知る居酒屋だ。テーブルの一角に鉄板があり、目と鼻の先でジュウジュウ焼ける音や香ばしい匂い、湯気まで見えて臨場感たっぷり。五感で料理を楽しむことができるのだ。和洋中にエスニックと多国籍の料理がなんでもアリなところや、ネオンが灯る店の雰囲気も手伝って、この店が屋台みたいに思えてきた。
看板メニューは、焼麺、焼玉子。どちらも別料金で好きなトッピングを加えて食べるのが醍醐味。たとえば『浅草開化楼』の中華麺を使用した焼麺には、豚バラと花ニラをトッピング。鉄板で麺をパリッと焼くからおつまみ感覚で食べられる。
一方の焼玉子はまるでオムレツのよう。れんげを差し込むと中がとろ~っとした半熟になっている。そこへ黒酢オイスターソースをたっぷり絡ませ、トッピングの牡蠣とともにひと口でガブリ。冷たい瓶ビールとともにいただけば天にも昇る気分に。
『高丸電氣』店舗詳細
スペイン風鉄板焼き・プランチャが楽しめる洋食居酒屋『カルボ 渋谷店』
「渋谷マークシティ」沿いの坂道をのぼり、1本南側の路地に出たところにある洋食居酒屋『カルボ 渋谷店』。この店のウリは“プランチャ料理”。プランチャはスペイン版の鉄板焼きのことで、店には本場のバルのようにプランチャ台が備えられている。カウンター席に座ると、目の前で肉や野菜が煙を上げてダイナミックに焼かれていく。注文したのはハラミのステーキとフォアグラ スペイン風玉葱ソース。牛ハラミはしっかりとした弾力が感じられる絶妙な焼き加減。フォアグラはふわとろでこれまた絶妙!
もう1つの看板メニューは、白身魚をカダイフ(中東で使われる細い麺状のパスタ)で巻いて揚げた鮮魚のパリパリ包み揚げ。外はサクサク、中の白身魚はふっくら♪
そしておすすめのドリンクは、自家製レモンチェッロを炭酸で割りサワーに仕立てたカルボサワー。さっぱりしていてぐびぐび飲めてしまう。
どれもスペイン料理をベースにしながらシェフのオリジナリティが加わった、ほかでは味わえないメニューだ。
『カルボ 渋谷店』店舗詳細
野菜が抜群に旨い和食居酒屋『渋谷ニッカ』で季節のおばんざいを堪能!
「渋谷マークシティ」の裏手に2024年6月に開店した『渋谷ニッカ』は、野菜料理が中心の和食居酒屋。オーナーの実家でもある秋田県の八百屋から伝統野菜や旬の野菜を仕入れ、野菜を“主役”に豊富なメニューを取り揃える。
野菜を食べることで季節を感じられるのも、この店の醍醐味だ。店の自慢は、“あふれる野菜”と称した12種のおばんざい単品680円~。1品1品丁寧に仕込まれ、盛り付けも美しく、目からおいしさが伝わってくる。合鴨とお野菜のしゃぶしゃぶ2人前3580円~も人気で、3種の野菜それぞれの味や食感を楽しむことができて、野菜のすごさがダイレクトに伝わってくる。どの料理からも野菜のみずみずしさ、力強さが感じられるだろう。
また、日本酒は野菜料理にピッタリの銘柄が揃い、焼酎やナチュラルワインのほか、季節の柑橘類のサワーなどもあって酒類も豊富。広々とした店内は京風の落ち着いた空間で、まさに大人にうってつけの居酒屋といえるだろう。
『渋谷ニッカ』店舗詳細
『酒処ニュー 萬斎』でおばんざいと日本酒を堪能した後はスナックで飲み明かす
「百軒店」は昼間でもネオンがチカチカと灯り、妖しさがムンムン。かの有名な『名曲喫茶ライオン』の向かいにある2階建ての古民家が、おばんざいと日本酒の限定酒をウリにした居酒屋『酒処ニュー 萬斎』だ。
元は長年この地で愛されたスナック「ながさき」。店内は作り付けの棚や今では見かけない美しいランプ、壁紙などスナックの内装をできうる限り残し、昭和の頃の息吹が感じられる。
自慢のおばんざいは、カウンターに大皿料理が並べられ、めいめい好きなものを選ぶスタイルだ。ナスの揚げ浸しと出汁漬けだし巻き玉子は定番で、季節のものを使ったおばんざいは隔週変わり。毎日だいたい6種が並ぶ。お酒はビール、焼酎、サワーとひと通りのラインアップに加え、売り切れ御免の日本酒はレア物が揃う。
『酒処ニュー 萬斎』にはもうひとつ顔がある。午前0時から朝5時まで営業するスナック『夜のながさき』だ。男性は1時間2000円、女性は1時間1500円で歌い放題、飲み放題!
『酒処ニュー 萬斎』店舗詳細
フレンチ×中華の創作料理とこだわり茶葉のウーロン茶ハイ『KAMERA』
コンクリート打ちっぱなしの壁に木目を合わせたナチュラルさと、店の奥にほんのりピンクのネオンが灯るポップさを併せ持つネオ居酒屋『KAMERA』。亀良と書いて“カメラ”と読む店名の由来は、オーナーの亀谷さんと目良さんの名前をもじったものだ。
オーナーのひとり・亀谷さんはビブグルマンを獲得したこともあるビストロのオーナーシェフで、さまざまなメニューにフレンチの技法が取り入れられている。この店の看板メニューは焼売とウーロン茶ハイ。焼売の肉だねは、豚肩ひき肉と数種類のスパイスや調味料を入れて熟成させるという、フレンチでソーセージを作るときの技法を応用している。
ウーロン茶ハイは、茶藝師がセレクトした茶葉を店内で煮出して提供。台湾四季春(たいわんしきはる)、鳳凰単叢(ほうおうたんそう)、岩茶武夷水仙(がんちゃぶいすいせん)があり、それぞれのフレーバーが楽しめる。グレードの高さに驚かされるウーロン茶ハイだ。
『KAMERA』店舗詳細
渋谷っ子の秘密基地『渋谷半地下酒場』で最新カルチャーに出合う!
ビルの駐車場だった半地下スペースを利用した居酒屋『渋谷半地下酒場』は、「百軒店」のメイン通りからホテルとビルの間をすり抜け、細い路地を入っていったところに突如店舗が現れる。
流行にビンカンな渋谷っ子をときめかせるのは、庭師で盆栽作家の濵本祐介さん、タトゥーアーティストの山田LENさん、グラフィック・デザイナーの山木真さんといったアーティストによる装飾品。店頭の看板や盆栽、店内のグラスや壁にかけてあるイラストなど、ファンにはたまらない。この界隈で生活している人たちや渋谷で働いている人たちがこの店で出会い、リアルな渋谷のカルチャーがここから生まれているのだ。
そんなシチュエーションに身を置きながらいただけるのは、和洋中オールジャンルのメニュー。肉だねからひとつずつ手作りの焼売が名物だ。ドリンクは居酒屋にあるひと通りのメニューはもちろん、ドライフルーツを酒に漬けた自家製瓶漬け酒や、ハブ酒も常備している。
『渋谷半地下酒場』店舗詳細
和食ベースの創作料理とこだわりの酒『地下だけど入ったら雰囲気が良くて料理人がしっかり食事を作ってお酒もたくさんあって楽しいお店。ごんべえ』
西武百貨店や宇田川交番、ハンズが並ぶ井の頭通り沿いを歩いていると、文字で埋め尽くされている看板を発見。長い店名に興味を引かれて階段から地下に行き、店に入ってみた。
店内の白い壁一面にさまざまな酒瓶がズラリと並んだ様子は圧巻だ。置いている酒は大きく分けると限定もの、定番もの、季節もの。低アルコールで日本酒初心者に飲みやすいと評判の甘いお酒もある。うまい酒のお供には、旬の魚介類や京都から取り寄せた野菜類を中心に、季節を感じられる料理がいただける。刺し身の盛り合わせはその時季にいちばんおいしいものが揃い、毎日仕入れる京野菜をふんだんに使ったおばんざいも人気だ。器もさることながら盛り付けも美しく、ご馳走感がぐっと上がる。
シメにおすすめしたいのは土鍋炊きのごはん。お米は月替わりで、オーダーが入ってから精米して土鍋で炊いている。乾杯からシメまで充実しまくりだ。
『地下だけど入ったら雰囲気が良くて料理人がしっかり食事を作ってお酒もたくさんあって楽しいお店。ごんべえ』店舗詳細
シーズナルの本格焼酎がいろいろな飲み方で楽しめる『居酒場 IGOR COSY 神泉』
居心地のよさを追求した“居たくなる酒場”をコンセプトに掲げ、2020年にオープンした『居酒場 IGOR COSY 神泉』。フレンチやアジアンなど多彩なエッセンスを盛り込んだ、気取らない居酒屋料理を提供する。
本格焼酎の品揃えが充実しており、カウンターに酒瓶がズラリ。芋、麦、米、黒糖、泡盛、蕎麦からシーズナルな本格焼酎を厳選し、店の奥にあるものも含めると常時30~50本ほど用意されている。飲み方もストレート、ロック、水割り、お湯割り、ソーダ割りとさまざまな飲み方が選べるほか、焼酎と水を混ぜて数日寝かせた前割りや、焼酎を使ったオリジナルカクテルなども楽しめる。水割りはシェーカーに焼酎と氷を入れてシャカシャカッとしたあと、ワイングラスでいただくなど、変わった飲み方もできて酒を何通りも楽しめる。
フードは焼酎に合う酒場メニューで構成。とことん焼酎を味わい尽くせるのだ。
『居酒場 IGOR COSY 神泉』店舗詳細
取材・文・撮影=丸山美紀(アート・サプライ)、パンチ広沢、上原純、コバヤシヒロミ