季節の食材をふんだんに使った和食ベースの創作料理とこだわりの酒

「西武百貨店」や宇田川交番、「ハンズ」が並ぶ井の頭通り沿いを歩いていると、文字で埋め尽くされている看板を発見。階段を降りて、店に入ってみた。

ロゴは控えめで看板に文字がぎっしり! 「地下〜ごんべえ。」までが正式な店名なのだ。
ロゴは控えめで看板に文字がぎっしり! 「地下〜ごんべえ。」までが正式な店名なのだ。

扉を開けて中に入ると迎えてくれたのは、店長の高野正樹さん。靴を脱いで高野さんが案内してくれた席についた。

厨房の前にカウンター席、テーブル席は掘りごたつ式だ。
厨房の前にカウンター席、テーブル席は掘りごたつ式だ。

白い壁には一面に酒瓶が並べられ、黄色いライトでおしゃれに演出されている。さまざまな酒瓶がズラリと並んだ様子は圧巻だ。カウンター越しに見える厨房では、数人の職人さんがそれぞれの持ち場で調理をしている様子がうかがえる。

「この店は、和食の名店に勤務した経験をもつ料理人が作る創作料理をカジュアルに楽しめる居酒屋です。旬の魚介類や京都から取り寄せた野菜類を中心に、季節を感じられる料理とこだわりの酒を提供しています」と語る高野さん。

自身も日本酒好きという高野さん。50歳を機に美容師を辞めて飲食業に転職。
自身も日本酒好きという高野さん。50歳を機に美容師を辞めて飲食業に転職。

和食なので魚介が中心。刺し身の盛り合わせはその時季にいちばんおいしいものが揃う。「刺し身の種類は毎日変わります。魚によってはカルパッチョにしてみたりとか。春だったらキンメダイの塩焼きや西京焼きなんかもおいしいですね」。

キンメは煮ても焼いても絶品ですよね。料理だけでなく、壁一面に飾られた日本酒の酒瓶の数を見ても、いろいろなものがいただけそうだなと筆者は小鼻を膨らませた。

10名まで入れる個室が2室ある。
10名まで入れる個室が2室ある。

レアものも揃うこだわりの酒とラインアップ豊富なお茶

とはいえ、ビール党の筆者はそれほど日本酒に詳しくなく、メニューを見ても知っている酒は圧倒的に少ない。

取材当日おすすめだったラインアップ。
取材当日おすすめだったラインアップ。

「置いている酒は大きく分けると限定もの、定番もの、季節ものです。あとは番外編で、甘い日本酒もあるんですよ。白く濁っていてカルピスとかマスカットっぽい味わいのものがあったり。しかも低アルコールなので、日本酒初心者には飲みやすいと人気です」

さまざまな顔をもつ酒瓶をつまみに飲むのもいい。
さまざまな顔をもつ酒瓶をつまみに飲むのもいい。

種類が多すぎて自分では選べそうにない。すると高野さんが「ご自分のお好きな味わいとか、お料理とのペアリングで選ぶのもいいと思います。基本的にスタッフはお酒好きが多いので、なんでもお気軽にたずねてください」と声をかけてくれた。

日本酒用のガラスケースにはさまざまな酒瓶がぎっしり収められている。
日本酒用のガラスケースにはさまざまな酒瓶がぎっしり収められている。

高野さんに相談しながら選んだのは、京都・東伏見に蔵がある蒼空(そうくう)グラス1050円。限定酒だというので楽しみだ。「飲みやすくていろんな食事とも合わせやすいので、日本酒を飲み慣れてない方でも入門編として召し上がっていただくのにはいいと思います」と高野さんがニッコリ。

寒い時季には熱燗のおいしい酒も多数登場する。
寒い時季には熱燗のおいしい酒も多数登場する。

筆者が好感をもったのは、日本酒だけでなく日本茶にもこだわっているところだ。「本格静岡茶の蒸し煎茶、深蒸し煎茶プレミアム、抹茶入り玄米茶、上級ほうじ茶、和紅茶の5品があって、店で煮出してから冷まして提供しています。もともとは茶割り用として提供しはじめたのですが、ノンアルコールドリンクとしても注文できるので、お酒があまり飲めない方にも人気です」。

これはいい。お酒を飲んだ後、酔い覚ましにいただくお茶がおいしいとさらに満足度がUPするもんね。

毎日仕入れる京野菜をふんだんに使ったおばんざい三種盛り

酒が決まったところで次は料理だ。

「定番メニューに“おすすめ”と書かれてあるのがうちの看板メニューで、上質なウニをA4ランクの牛肉で巻いたうにく(時価)や、和牛の焼きしゃぶ1410円が特に人気です」

うにくはウニの値段に左右されるので時価となっている。取材日は1個999円。右の札は本日のおばんざいメニューだ。
うにくはウニの値段に左右されるので時価となっている。取材日は1個999円。右の札は本日のおばんざいメニューだ。
取材当日のおすすめメニューはお酒だけでなくご飯にもぴったり。
取材当日のおすすめメニューはお酒だけでなくご飯にもぴったり。

ほかにも“社長の塩辛”とか“ものすごいサバ”など、思わず「それ、なんですか?」と聞いてみたくなるメニューが出てきて迷っちゃう。今日は1人だし、あれもこれも頼んでも食べきれないし……。

刺し身の盛り合わせのほか、あらやかまを使用した塩焼きや煮付けも用意。魚を隅々まで味わえるのだ。
刺し身の盛り合わせのほか、あらやかまを使用した塩焼きや煮付けも用意。魚を隅々まで味わえるのだ。
ひょいっと厨房をのぞいたら、いぶりがっこを桂剥きにしていて驚いた。途切れずに切れるのはすごいわ〜。技術に感動して激写!
ひょいっと厨房をのぞいたら、いぶりがっこを桂剥きにしていて驚いた。途切れずに切れるのはすごいわ〜。技術に感動して激写!

悩んだ末に、おばんざい三種盛り935円をオーダーした。おばんざいは壁にかかっていた木札のメニューから選ばれる。おばんざいと聞けばカジュアルなものだけど、器もさることながら盛り付けも美しいのでぐっとごちそう感が増しますね。

この日のおばんざいは大山鶏の胡麻みそがけ、蓮根きんぴら、菜っぱとあげだ!
この日のおばんざいは大山鶏の胡麻みそがけ、蓮根きんぴら、菜っぱとあげだ!

さあさあ、まずはお酒から。華やかな香りがして、けっして辛口ではないけれどもスッキリとしているとして飲みやすい。いや、これはうっかり飲み過ぎてしまうかもしれない。

すっと舌になじむ、素直な味わいの日本酒「蒼空」。
すっと舌になじむ、素直な味わいの日本酒「蒼空」。

「蒼空は飲みやすいでしょう? 日本酒特有の強い香りや辛さがマイルドなので、飲み慣れていない人にも好まれています。ある意味クセが少ないからいろんなジャンルの料理にも合うんですよ」。ほほう、なるほど。高野さん、ナイスチョイスです。

そしてゴマの芳醇な香りと、やや酸味のある胡麻みそがかかった蒸し鶏・大山鶏の胡麻みそがけが酒に合う! 鶏肉がしっとりとして淡白ながら味わい深い。

蒸し鶏に酸味のある胡麻みそと豆板醤、香ばしいあられがのっている。両サイドには菜花のお浸しが添えられている。
蒸し鶏に酸味のある胡麻みそと豆板醤、香ばしいあられがのっている。両サイドには菜花のお浸しが添えられている。

シメにおすすめしたいのは土鍋炊きのごはん。「お米は月替わりで、今月は新潟産のミルキークイーンです。オーダーが入ってから精米して土鍋で炊いています。甘みが強くもっちりしていて絶品です」と高野さんは太鼓判を押す。

炊き上がりに約45分かかるので早めにオーダーすることと、2合単位の提供のためみんなでシェアすべし。乾杯からシメまで充実しまくり! 看板に偽りナシの居酒屋だ。

住所:東京都渋谷区宇田川町31-3 第3田中ビルB1F/営業時間:17:00〜23:00(フード22:00LO)/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄渋谷駅から徒歩4分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢