『Let’s Beer Works』ビール奥深さに開眼する週末の昼下がり[東十条]
週末の路地に即席のテラス席がお目見え。店内をのぞけば、タップルームの奥で巨大なタンクが存在感をアピールする。
年齢も職業もバラバラの同志が集い、「ビールの楽しさを表現・発信したい」と、各自が得意分野で力を発揮。醸造家は3人もいて、「それぞれ得意なビアスタイルが違うし、味に性格が現れるんです」と、代表の阿川裕子さん。
酸味がガツンとくるゴーゼに、炭酸ゆるめのビターなど、一杯ごとに個性異なる世界を堪能したい。
造ったのはこの人!
クラフトビールのセミナーで知り合い、意気投合した6人が多くの仲間たちに支えられて2020年に立ち上げ。醸造家3人を有する。
『Let’s Beer Works』店舗詳細
『ガハハビール』マンモス団地の居酒屋がまさかの伝道所に[東陽町]
旬魚が自慢の居酒屋の、もう一つの看板が自家醸造のビール。
「酒はそんなに強くない」と話す店主の馬場哲生さんだが、料理修業中にIPAにハマり、醸造法を習得。生まれ育った団地で開業した。笑い声を店名に忍ばせたのは「ビールは笑って飲むもの」だから。その親しみやすさに、クラフトビールに縁のなかった老若男女までもが誘い込まれている。
また、チューハイ感覚のフルーツ系もバリエーションを用意。ここでクラフトビールに目覚める人が少なくない。
造ったのはこの人!
マーシーIPA小650円を手にする馬場さんは、『高円寺麦酒工房』で現醸造長と知り合い、江東区初のビール醸造所を2017年に開設した。
『ガハハビール』店舗詳細
『RIOT BEER』ビールも店頭スタッフも日々進化[祖師ヶ谷大蔵]
狭小工房ながら、冷蔵庫9つを用いた石見式(島根県『石見麦酒』発案)で醸造。モルトを糖化するとき、50℃から4、5回に分けてゆっくり温度を上げる昔ながらの方法で仕込む。
「丁寧に作るとおいしくなる“気”がします」とは、オーナーの上池風吾さんだ。その穏やかな人柄とビールの多彩さにほれ、常連からスタッフになる人も多い。
音楽好きデザイナーが木・金に、還暦過ぎの紳士が日曜に立ち、バーのような風情に。「曜日で客層も変わります」。
造ったのはこの人!
140ℓと少量製造のため、週4日で仕込む上池さん。
月曜担当のマリモさん(右)。水曜担当・エリィさん(左)は土曜にビアパンの店頭販売も行う。
『RIOT BEER』店舗詳細
『FOLKWAYS BREWING』ビア樽の奥に潜む地元住民の溜まり場[清澄白河]
修業先のブルワリーも店の立地も「たまたま人のつながりで」と、飄々(ひょうひょう)と語る店主の古沢大典(だいすけ)さん。路地から奥まった店は、表に出た樽が目印だ。
中に入れば、カウンターで和気あいあいと店主と話しながらグラスを重ねる住民の多いこと。4つの発酵タンクで仕込む自家製ビールは「何杯でもゴクゴク飲めてしまう味」を目指す。優しい飲み口が多いが、塩を用いるゴーゼやサワーエールがユニーク。自称「酸っぱいもの好き」で、はじける酸味が盛夏に清涼感を呼ぶ。
造ったのはこの人!
店主の古沢大典さん。8タップ中、自家醸造は4~5種。
『FOLKWAYS BREWING』店舗詳細
『牛込ビール館』家族で盛り立てる、のどかなブリューパブ[牛込神楽坂]
「もともとここは父母が営む定食屋。空いている夜を活用しようとしたら、改装しろと言われまして」と、穏やかに笑うのは店主の青柳知也さんだ。
醸造の理論や化学を学ぶアメリカのカリキュラムを習得した兄の遊大(ゆうた)さんが、店の裏手に醸造所を構えたのを機に、2021年に開業。
「兄のビールはすぐに分かります。味と香りのバランスがとにかくいいんです」とほれ込み、寡黙な兄に代わり、飲み飽きない味とのどかな空間を提供。地域住民の憩いの場になっている。
『牛込ビール館』店舗詳細
取材・文=林さゆり 撮影=丸毛透 鈴木奈保子(『ガハハビール』『FOLKWAYS BREWING』)
『散歩の達人』2023年8月号より