50年以上の歴史を刻む、これぞ昭和の町中華
昭和40年(1965)に、「後楽園飯店」のチーフを務めていた先代の清水正幸さんが開業。現店主の清水宏悦さんは2代目となる。
「小さい頃から父の姿を見て育ったので、料理人になるのが当然と思っていました。高校を卒業すると中華料理店に修業に行き、その後、父とともにこの店をやるようになりました」。そう話す清水さん。
白い壁に「中国料理 寳華園」という看板を掲げた外観は歴史を感じさせ、高級感も漂うが、「町中華」を特集したテレビ番組の取材を受けるなど、現在は庶民派路線を進む。オレンジ色のカウンターやテーブル、壁を埋め尽くすメニューなど、店内は古き良き町の中華屋さんという言葉がピッタリ。厨房が見える1階には常連が多く、昼から飲んでいる人も多い。
チャプスイ? ガリバタ? アイデアメニューにも注目!
「おすすめの料理は何ですか?」と店主に尋ねると、「肉だんごとエビうま煮がよく出るね」と答えてくれた。肉だんごは、豚挽き肉で作っただんごを揚げ、甘酢あんかけで仕上げた一品。トロトロの餡は甘さは控え目なのでビールのお供にピッタリだ。エビうま煮は、バナメイエビを油通しし、塩だれのあんかけで和えたもの。ほんのり香るごま油が食欲を誘い、エビのプリプリ食感がたまらない。
蒲田は餃子の街として有名だが、この店の餃子も専門店に負けない秀逸の出来。薄皮でパリッと焼かれ、細かく刻んだ野菜中心の餡の旨みが凝縮されている。4個300円という価格は、酒の肴や定食や麺類に一品添える料理としても注文しやすい。
メニューの中に、エビチャプスイという料理を見つけた。チャプスイとは、アメリカ式大衆中華料理のこと。エビチャプスイとは、エビ、もやし、キャベツ、にんじん、玉ねぎ、キクラゲをケチャップで炒めた料理のことで、さしずめ、ケチャップ味の野菜炒めという感じか。豚肉のチャプスイというのもあり、ともに定食800円。
メニューは壁の掲示のほか、A4サイズの紙の裏表に書かれているが、実はここに書かれていない料理、つまり裏メニューも存在する。ガリバタポーク600円もその一つで、豚肩ロース肉をニンニク、バター、醤油で味付けし、千切りキャベツの上に盛ったものだ。ニンニクの効いたしょっぱ目の味付けは、ご飯が欲しくなる。この料理は、店主が息子さんのために作った料理だが、やがて常連さんに知られるようになり、今では人気メニューになっているという。
「創業以来続く料理も多く、父から受け継いだ味を守っています」と話す清水さん。父の味を守り、永く愛されてきたこの店は、これからも蒲田を代表する町中華の名店として歴史を紡ぐことだろう。
取材・文・撮影=塙 広明