田端銀座を代表する名店、『佃忠かまぼこ店』

北区田端にある田端銀座商店街、通称「たばぎん」と呼ばれる商店街の中央付近で『佃忠かまぼこ店』は営業している。

田端といっても田端駅からは徒歩12分、JR駒込駅東口から5分ほどの距離にあるので、駒込駅を利用するといいだろう。商店の数は減りつつあるが、元気に営業するお店も多い。豆腐店や漬物店など、古くから営業するお店もある。

『佃忠』は亀有、向島、田端で営業しており、亀有の2代目店主のご子息たちがお店を経営している。「西武池袋本店」にも出店していたが、2024年で閉業した。『佃忠かまぼこ店』は1958年に創業し、70年近い歴史を誇る。テレビなどのメディアで頻繁に紹介されており、田端銀座を代表するお店となっている。

調理用のおでん種のほか、店頭で調理したできたておでんも購入できる。おでん汁は継ぎ足しせず毎日新しいものに交換しているが、魚のすり身や牛すじなどの肉類のおでん種の旨味が溶け込んで、奥深い味わいとなっている。

以前から軒先でおでんを味わえたが、すこし座席が増えたようだ。季節の風を感じながら、熱々のおでんを頬張るのは至福のひとときだ。

おでん初心者でもわかりやすいように価格付きのメニュー表も用意してある。ついつい楽しくなって近所に迷惑をかけないように配慮しながら楽しみたい。

もともと人気の高いお店だったが、訪れた日は長蛇の列ができるほどにぎわっていた。外国人客がいたのでインバウンド効果かと思ったが、話しかけたところ近隣に住む中国人留学生で、頻繁に通う常連客だという。そういえばメニュー表に中国語が書き添えてあったが、彼らが作ったのだろうか。国籍など関係なく、分け隔てなく受け入れているのは、下町の商店街ならではのおおらかさだ。

ふくよかな甘みがたまらない、『佃忠かまぼこ店』のすき焼袋

さて、今回のお目当てであるすき焼袋は調理用、できたておでんの両方が選べる。どちらも持ち帰りができるので、帰宅後すぐに食べたい場合は後者を選ぶといい。

列に並んでいるときには10数個あったが、あれよあれよという間に売れていく。筆者の前に並んでいたお客さんは8個購入し、残り2個を筆者が購入した。後ろのお客さんはすこし足りなかったようで、できたておでんのほうからも購入していた。

すき焼袋はご高齢の女性が営業するおでん料理店で作っているのをTVで観て着想を得たそうだ。当初は油揚げに山菜やうどんを詰めるなど、さまざまな具材を試すたびに好評だったが、手間がかかりすぎるため多くは製造中止となった。現在はすき焼袋と袋もち(袋詰)の2種類を販売している。

袋もちはおでん種の定番である餅巾着だが、餅のほかにうずらと白滝が入った豪華仕様だ。淡白な味の食材ばかりだが、クリーミーな味わいのうずらや喉越しよく汁が染みた白滝が加わることにより、味わい深い餅巾着に仕上がっている。

すき焼袋は油揚げのなかに甘く煮付けられた牛肉と玉ねぎが入っている。牛肉から溶け出した脂の旨味はとろりと甘く、玉ねぎの自然な甘みも加わり舌が喜ぶおいしさだ。

おでん汁と合わさると、牛肉のふくよかな旨味がプラスされておいしさがぐっと増す。油揚げは具材を包む役目を果たすだけでなく、豆腐の味わいが全体の味を上品に整えている。小さななると巻は、鍋にもち袋と一緒に入れた際に区別しやすいように付けられたものと思われるが、見た目を華やかにしている。

『小田原屋』(東京都文京区本駒込)のすき焼袋。
『小田原屋』(東京都文京区本駒込)のすき焼袋。

ちなみに、おでんのすき焼袋はサークルKサンクス(現在はファミリーマートに統合)がおでん種として販売していた(牛肉、玉ねぎ、糸こんにゃくを入れて煮込んだもの。北海道・東北・関東・新潟で販売)。おでん以外のすき焼袋は、文京区白山にある『小田原屋』(文京区本駒込1-1-30)がお総菜として販売している。こちらは『佃忠』(田端)とは異なる味わいなので、興味のある方は訪れてみてほしい。1日限定40個程度の販売となり、こちらも人気商品だ。

『佃忠』(田端)の魅力はすき焼袋にとどまらず、個性豊かな練り物にも及んでいる。夏場でも20種類以上あるので、ぜひ好みのものを見つけてほしい。また、店頭に立つおかみさんたちの接客が愛にあふれており、訪れるたびに心がやわらぐ。

たくさん購入する場合は、事前に電話して予約しておくといいだろう。おでんが恋しくなる季節、ぜひ『佃忠かまぼこ店』のすき焼袋や手づくりのおでん種を楽しんでほしい。

『佃忠かまぼこ店』(田端)の基本情報

佃忠 田端銀座店(佃忠かまぼこ店)
東京都北区田端3-8-6
03-3822-0973
定休日:火
営業時間:9:00〜19:30

取材・文・撮影=東京おでんだね