あのリスは何ものなのか?

時は初夏、本来であれば山登りには絶好のシーズンである。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて富士山が今夏の登山道閉鎖を決定するなど、気兼ねなく登山を楽しめる状況には至っていない。

……と、いかにも山に登る人のような書き方をしてしまったが、もっぱら街歩き主体の私は山登り初心者である。山に詳しい絵の学校時代の先生に、ごくたまに御岳山や金時山などの首都圏の低山に連れて行ってもらうという受動登山者だ。

ところで登山をしていると、なぜかいつもリスの描かれたホーロー看板に出くわす。デザインはさまざまであるが、おおむねリスが火消の纏を持って、山火事予防を訴えている。

金時山(2017年)
金時山(2017年)
御岳山(2019年)
御岳山(2019年)

このリスは何ものなのだろうか。私は山に登るとき、山頂の写真を撮るのを忘れても、このリスの看板だけは撮影するのを忘れないようになった。

このリスは思ったより偉いのだった

そんな中、ある方からこのリスの正体を教えていただいた。この「まといリス」は、林野庁が山火事防止のシンボルマークとして昭和47年に制定したもので、昭和49年には林野庁企画の『リスのまとい』というアニメ映画も作られた。

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参考:林野庁ホームページ
皆さん、山に登ったとき、こんな看板をご覧になったことはないでしょうか?
かわいらしいリスがまといを持ち、山火事防止を訴えている看板です。

この『リスのまとい』は今現在、農林水産省のYouTubeチャンネルで見ることができるが 、『宇宙戦艦ヤマト』や『ドラえもん』などの作品を手掛けた石黒昇演出とあって、大変完成度の高いアニメとなっている。山火事の真犯人を突き止めたリスが、褒美に纏をもらって山火事防止に励むというストーリーを知れば、山のリス看板もまた違った視点から見ることができる。リス、思ったより偉かったのだなと。

バリエーション豊かすぎるアイツ

上にも書いたが、「まといリス」看板のデザインはさまざまである。丸型あり、四角型あり、いずれもレトロ感漂うデザインのフォントとキャラクターで、見ていて飽きることがない。一昨年、高水三山に登った際も、さまざまなデザインの「まといリス」看板を見つけることができた。

岩茸石山(2018年)
岩茸石山(2018年)

ところが岩茸石山に入った際、写真のようなラミネート加工されたポスターを発見し、ふと足が止まった。

岩茸石山のもの悲しいリスポスター(2018年)
岩茸石山のもの悲しいリスポスター(2018年)

真っ赤に燃え盛る森の中で、呆然としたリスが切り株に座っている。その絵柄に「山火事予防」という文字がかぶせられているのである。

注釈を見れば、平成25年度の山火事予防ポスターの消防庁長官賞受賞作品ということなのだが、なぜ作者はキツネでもクマでもなくリスを図柄に選んだのか。それはやはり「まといリス」の影響が大きかったのではないかと推察できる。山男山女にとって、「まといリス」は潜在意識に染み付いたキャラクターなのである。

調べてみると、「まといリス」看板は各都道府県や自治体によってもデザインが異なるようだ。私の中で、全ての「まといリス」看板を制覇してみたいという欲望が日増しに高まってきている。そのために新型コロナウイルスの一日も早い収束と、山登りに耐えうる自らの体力の向上を目指したい。

高水山(2018年)
高水山(2018年)

絵・写真・文=オギリマサホ

想像してみて欲しい。あなたが道を歩いていて、道端にトラ猫が丸くなっているのを発見した時のことを。あなたは恐らく「猫ちゃ~ん」と声をかけながらその猫に近づいていくだろう。ところがその猫はよくできた置物であった。あなたはキョロキョロと辺りを見回しながら、今の醜態が誰にも見られていなかったことを確認し、足早にその場を立ち去るに違いない。これは先日私の身に起きた実話である。
まんじゅうの表面に焼き印を付ける仕事をしたいと思っていた。真っ白に蒸しあがった薯蕷(じょうよ)まんじゅうの表面にジュ―ッと焼きごてを押し当て、くっきりと印を刻む。その工程がたまらなく魅力的に思えたのだ。言うまでもなく、まんじゅうに焼き印を付けるだけの仕事などどこを探してもなく、また家庭で個人用焼きごてを用意するというのも非現実的であるため、断念して今に至る。