みんな大好き!あのドリンクの名前も仏教から来ていた
子供も大人も大好きな飲み物『カルピス』。こちらも仏教の言葉が元になっています。
カルピスの「カル」はカルシウムから来ていますが「ピス」とは一体なんでしょう?
インドの古い乳製品で『サルピルマンダ』(サンスクリット語)というものがあります。ヨーグルトやチーズをイメージしていただくとよいでしょう。
牛乳からサルピルマンダを作る過程には、5段階の変化があって、その最終段階がサルピルマンダです。
『涅槃経』というお経では、人が悟りを開いていく段階をこの5段階に例えていて、サルピルマンダが究極の「涅槃(=悟り)」に当たります。
後に「カルピス株式会社」を創業する三島海雲氏は、浄土真宗のお寺に生まれました。
そうした環境もあって、カルシウムとサルピルマンダをつなげて『カルピル』という商品にしようとしましたが、なんとなく語感がしっくりこず、知人だった作曲家の山田耕筰(同様『赤とんぼ』などの作曲者)に相談。
すると山田耕筰は、「それならサルピルマンダの前の段階である『サルピス』とくっつけたらいいんじゃないか」と答え『カルピス』と命名したのです。
年をとったら思わず出ちゃうあの言葉も!?
立ち上がる時や重たいものを持ち上げる時に思わず口から漏れる言葉「どっこいしょ」。
実はこの言葉も、仏教が元になって居ます。
そのルーツは、山を歩き法螺貝を吹く姿で知られる山岳信仰の修験道。こちらの修行者は、辛い山を歩くことを「抖擻(とそう)修行」とも言います。
自分自身にこびりついている欲望や汚いものを、山に入って落としてくるという意味です。
仏教において人間は、六つのもの(眼・耳・鼻・舌・身・意識)から感覚を得ていると考えられていて、この六つのものに、迷いや汚れが付いているとされています。
それを綺麗にするのが、山岳修行の目的の一つ。
なので、山岳修行者は険しい山を進む修行中、『六根清浄(ろっこんしょうじょう)』と口にしながら歩きます。
この言葉がなまって『どっこいしょ』になったと言われているのです。
お釈迦さまが苦行の先で出会った少女
お釈迦さまは王家の子として生まれ、若く美しい家来とだけ暮らしたため、醜いものや苦しみを見ることなく育ちました。そんなある日、いずれは老いや病や死が自分にも降りかかることを知り、恐れおののきます。
しかし、その後出会った僧侶は、未来に老いや病気や死が待っているはずなのに、凛として揺らがない心を持っているように見えました。
そこからお釈迦さまは、僧侶になり悟りを得るために修行に入ります。
山にこもって6年間苦行。しかし悟りは得られず、お釈迦さまは諦めて里におりました。川で身を清めていたところ、長年の苦行で痩せ細ったお釈迦さまを見た町娘が、持っていた乳粥を与えます。
それで力を取り戻した釈迦は、極端に苦しい状態ではなくフラットな状態で瞑想に入って悟りに達したのです。
この娘の名前が「スジャータ」と言います。
昭和50年ごろ、奈良にある薬師寺のお坊さんが法話の中でこの逸話を語りました。その時、法話を聴講する人の中に、現在のスジャータめいらく株式会社の社長がいて、開発中のコーヒーフレッシュを「スジャータ」にすることを決めたのです。
カメラ製造大手のキヤノンと仏教
初心者からマニアまで、あらゆる層に人気のカメラを製造。販売するカメラメーカー、キヤノン株式会社。
元は、映画用カメラや映写機の修理・改造のエンジニアだった吉田五郎という人物らが作った小さなカメラ工房のようなものでした。
吉田氏らは、ライカ製カメラをお手本にフィルムカメラの開発を行い、製品化を目指しました。
そして最初に完成した試作品を、『KWANON (カンノン)』と名付けたのです。
そこには、熱心に観音菩薩を信仰していた吉田の「観音様の御慈悲にあやかり、世界で最高のカメラを創りたい」という思いが込められていました。
そうしたことから、カメラボディには千手観音菩薩をモチーフにしたロゴマークが刻まれています。
社名の「キヤノン」もここから来ているのです。
今回ご紹介したものの他にも、アバターや超という言葉など、私たちの生活になじんでいる仏教由来の言葉はいくつもあります。
ルーツを知ると普段の生活もより楽しめますよね。今回の記事がそのきっかけの一つになれば幸いです。
写真・文=Mr.tsubaking