お酒と共に料理をつまむ至福のひととき
蔵前駅から江戸通りを南下して、少し奥まった路地にひっそりと佇む『男子厨房酒場 蔵の灯』。のれんをくぐるとアットホームな雰囲気に満ちた店内が広がる。
メニューは肉、魚、つまみ系の定番料理がずらり。お酒の種類も豊富だ。メニューを覗きこみ、わくわくと選んでいる時間がまた楽しい。
ひとしきり悩んで、鶏上レバーの醤油漬け500円、自家製厚揚げ530円、日替わりのおすすめメニューから希少部位の豚頭の塩焼きをチョイス。
まずは一杯。
口に含んだ瞬間は力強さを感じるけれど、ほのかに甘みがあり、そして濃厚なうまみが後をついてくる。それでいて透明感のある主張の少ない上品さも兼ね備える。少し辛口で、口に広がる芳醇なうまみも喉を通ればすっと引いていく。
どんな料理にも合いそうだ。料理の到着が待ちきれない。
丁寧に品よく盛り付けられた料理が到着。
はやる気持ちを抑えてまずは鶏上レバー醤油漬け500円をいただく。
軽い歯ざわりで、すぐにペースト状にほぐれ、シルクのような滑らかな食感に変化していく。ひと口でその新鮮さがわかるほどに、くさみも雑味も感じない。ただただ濃厚なコクが、染み込んだ醤油の味と相まってうまみを増幅させる。
もちろんお酒との相性も抜群だ。
しっとりとした後味の余韻にしばし浸ったあとは水芭蕉がすっきりと洗い流してくれる。
続いては自家製厚揚げ530円。角のしっかりと立ったきめの細かい美しい皮に目が奪われる。
薬味醤油をかけてぱくり。
しっかりと揚げられた硬めの皮はカリッと香ばしく、中身は引きしまってはいるけれど、ふんわりと柔らかい。カリカリとふんわり、香ばしさとさっぱりさ、それらをまとめる薬味醤油の刺激のハーモニーがたまらない。カイワレやネギのアクセントも最高だ。
そして豆腐のまろやかな風味がお酒のうまみをふんわりと引き立てる。
最後は豚頭の塩焼き700円。豚のこめかみとのことで、一頭の豚からとれるのはごくわずかという希少部位だ。香ばしく焼けた豚頭を辛みそでいただく。
こりこりとした強い歯ざわりだけど、硬いわけではなく弾力が強い。引き締まった肉に豚のジューシーなおいしさが凝縮されていて、噛みしめるほどに旨味が広がる。香ばしさと旨味、辛みそのピリ辛が奏でる絶品のおいしさ。
そして、肉の密度が高く味も凝縮されているせいか、見た目よりも量の満足感が高い。
新鮮な食材を使って全て手作りで提供する
『男子厨房酒場 蔵の灯』のこだわりは既製品や出来合いのものをできるだけ使わず、新鮮なものを新鮮なうちに提供することだという。
「食材は新鮮なものを常に出せるように心がけています。魚などは基本営業日は毎日豊洲に行って仕入れています。先ほどの鶏上レバーも日本橋で仕入れた新鮮なものを提供しています。新鮮なのでもともとくさみがないんです」
と松田さん。
「厚揚げも、しっかり一晩かけて水を抜いて作っています。その場で作る、仕込むことを大事にしていますね。揚げ物なんかも衣から全てここで作っていますし、ローストポークのタレなども全て自家製です」
鮮度と味にこだわった食材を使った手作りの料理が食べられるのが『男子厨房酒場 蔵の灯』の魅力だ。
また、日本酒や焼酎などはメニューにないものも置いてあるということなので、気になったら聞いてみよう。
「このあたりは居酒屋があまりないので、誰もが気楽に来られる、町に根づいたいかにも居酒屋という居酒屋でありたいですね。奇抜なことや変わったことはせず、居心地がよく、楽しく飲めて、お店を出るときは明日もがんばろうと思えるような、そんな居酒屋でいたいです」
松田さんは真摯に語ってくれた。
蔵前の夜のオアシス『男子厨房酒場 蔵の灯』
『男子厨房酒場 蔵の灯』は飲み屋さんの少ない蔵前エリアで一杯やりたい人たちを温かく迎え入れてくれる憩いの居酒屋だ。
気負いなく入れて、楽しめ、そして出てくる料理は新鮮な食材の手作り。それらをおいしいお酒とともに楽しめばきっと明日への活力も湧いてくるだろう。
ランチ営業もやっているので、昼間に料理を楽しむことも可能だ。
蔵前で一杯やりたいときは『男子厨房酒場 蔵の灯』で決まり。
取材・文・撮影=かつの こゆき