「雷門」の由来とは? いまも昔も変わらず危険な雷
突然ですが雷と聞けば、つい足を運びたくなるのがこちら。東京・浅草の「雷門」です。
高さ約4メートルの赤い提灯は、外国人からも絶大な人気を誇る観光スポットですが、「雷」と名が付くのなら、気象と関わりがあるのか気になるところです。
天慶5年(942年)に創建されたと伝わる「雷門」。正式名称は「風雷神門(ふうらいじんもん)」といいます。正面向かって門の右には「風神」、左には「雷神」という風雨を司る神様が祀られています。風水害を避けて、伽藍を守るために祀られたことから「雷門(風雷神門)」と呼ばれるようになったそうです。古くから恐れられてきた雷ですが、いまも危険なことに変わりありません。
雷は高いところに落ちやすく、開けた運動場やゴルフ場、海や砂浜、プールなどは周りに高いものがないことが多いため、人に落雷しやすくなります。
近年も雷による死亡事故が相次いでいます。
夏は雷雲が発達しやすい その理由は?
過去の落雷による事故を振り返ると、冬に雨や雪が多い日本海側と違って、首都圏エリアの太平洋側では、被害は5月頃から徐々に増え、7月から8月に集中しています。その理由は、雷を引き起こす発達した積乱雲が、気温の高い季節に発生しやすいためです。強い日差しが照り付ける夏は、地面付近の空気が暖められます。暖かい空気は軽いため、上昇気流を生み出して雲を作り、やがて背の高い積乱雲となります。このため暑い夏の午後は積乱雲が発生しやすく、急な雷雨が起こりやすいです。よく晴れていると思いきや、突然、空が真っ黒な雲に覆われて、天気が一変したという経験のある人は多いのではないでしょうか。
激しい光と不気味な音 雷の正体とは?
では、積乱雲から雷が落ちるのはどんなしくみなのでしょうか?雷の正体とはいわゆる「静電気」です。冬の乾燥しているときなどに、衣類がこすれ合って、バチっと電気が走ることがありますよね?
雷も同じように、雲の中で氷の粒同士がぶつかり合うことで電気が発生します。
大雨をもたらすような発達した雲は背が高く、その頂上付近では気温がマイナス40℃以下になることもあるため、たくさんの氷の粒が存在します。氷の粒が繰り返し衝突することで、雲の中にはどんどん静電気がたまっていきます。このとき、雲の上の方にプラスの電気、下の方にマイナスの電気が集まります。そして、雲の下部のマイナスの電気に引き寄せられ、地面にはプラスの電気がたまります。
やがて一定以上の電気がたまると、ゴロゴロとした不気味な音を響かせながら、ピカッと光って雷が落ちるのです。
雷にまつわる言い伝え「木の下は安全」ってホント?
昔から語り継がれてきた雷にまつわる言い伝えは、検証データが少ない時代の内容があり、実は間違っているものもあります。
たとえば、「雷はアクセサリーや時計などの金属を身につけていると落ちやすい」という話を耳にしたことはありませんか?これは、様々な実験の結果から事実ではないことがわかっています。雷は金属に落ちやすいという訳ではなく、またゴム製の長靴など電気を通さない絶縁体のものを身につけていれば安全ということもありません。
また、雷は高いところに落ちやすいため、自分よりも背の高い木の下に逃げればいいのかというと、これも間違いです。
木の幹や枝に落ちた雷が近くの人や物を通って、地面に逃げる「側撃雷(そくげきらい)」という現象が生じることがあるためです。
雷の音が聞こえたら、すぐに頑丈な建物や車の中に避難してください。どうしても、近くに逃げられる場所がない場合は、身体を小さくかがめながら、木や電柱などから4メートル以上離れるようにしましょう。
このほか、遠くで見える雷を外で眺めるのも危険です。
光と音の伝わるスピードには大きな差があります。ピカッと光る稲妻が見えてから、ゴロゴロとした音が鳴るまで時間が空いているなら、落雷した場所は数キロ離れているはず……。そう考えたくなりますが、雷をもたらす積乱雲の大きさは10キロメートルにも及びます。このため、自分の頭上にも積乱雲があれば要注意です。数秒後には自分のいる場所で落雷するかもしれません。
夏のお散歩には気象情報のチェックを
雷の発生が増える季節は家を出るときに晴れていても、帰る頃には天気がガラッと変わってしまったということが増えます。特に急な雷雨に注意したいのは、天気予報で「大気の状態が不安定」ということばが使われるときです。こうしたときは、積乱雲は発生しやすいため、空模様の変化に気を配るようにしましょう。また、雷の予測を知ることができる気象庁の「雷ナウキャスト」を活用するのもおすすめです。雷から身を守って、楽しいお散歩ライフを満喫したいですね。
参考:あさくさかんのん浅草寺、気象庁ホームページ、仙台管区気象台ホームページ
写真・文=片山美紀