朝・昼はうどん店だが、夕陽が沈むと、雰囲気たっぷりのオシャレなバーに様変わりする。
朝・昼はうどん店だが、夕陽が沈むと、雰囲気たっぷりのオシャレなバーに様変わりする。

「店の名前はお客さんが決めたんですよ。看板まで作ってきてくれたんです」と、9年前のオープン当時を振り返るのは、店主の渡部真太郎さん。お客さんがつけた名前は「恋音」、これはもちろん“レノン”と読む。渡部さんが結婚記念日をジョンの誕生日10月9日にするほどのジョン・レノンファンだからだ。

ポスターや新聞が全面に貼られたトイレ。ビートルズやほかのアーティストへの愛情が伝わってくる。
ポスターや新聞が全面に貼られたトイレ。ビートルズやほかのアーティストへの愛情が伝わってくる。

「故郷の北九州のうどんの味を伝えたいと始めた店ですが、気づけば楽器を持ち込むようになってね」と渡部さん。中学校からギターを演奏し始めた彼は長くバンドマンとして活躍。今もNEMSというビートルズのコピーバンドでギターを演奏する、根っからの音楽好きだ。

肉うどん600円。濃厚なしょうゆベースのつゆにたくさんの牛すじ肉でこの価格!
肉うどん600円。濃厚なしょうゆベースのつゆにたくさんの牛すじ肉でこの価格!

「ビートルズももちろん流すけど、うちは音楽全般がテーマ。洋楽、邦楽、演歌も何でも流れていますよ」。あらゆる音楽を愛す渡部さんのうどん店が、好きな酒を片手に好きな音楽を語らう場所となったのは自然の成り行きだった。

「中学校の頃、ラジオでビートルズが流れると欠かさず録音していました」と語る渡部さんは今もギター小僧。
「中学校の頃、ラジオでビートルズが流れると欠かさず録音していました」と語る渡部さんは今もギター小僧。
【Master's Choice 1/213】All Songs
「ビートルズはどの曲もどの時期もトータル的によいので、ごめんなさい! とても答えられません」と渡部さん。前期を聴くと後期を聴きたくなる、後期を聞くと前期を聴きたくなる。そして中期も聴きたくなっちゃう。好きな曲を選べないのは多くのビートルズファンに共通するはず。
この日はバンド仲間が集まってビートルズを大合唱。
この日はバンド仲間が集まってビートルズを大合唱。

「さあ音楽聴こうか、歌おうか、っていう人が来てくれています。息ぬきに音楽聴いてうどん食べて、戦場に戻っていってほしいんです。ビートルズが俺に何かを与えてくれて、俺の人生がこうなった、まさにビートルズは〝起点〟です」

世にも珍しい『MUSIC UDON BAR LENNON』は、一日の疲れを癒やし明日への活力をもらえる、音楽好きがつくったユートピアだった。

取材・文=半澤則吉 撮影=小野広幸