新進気鋭の創作料理グループによる第一号ラーメン店
板橋駅西口のロータリーから歩いて1分の『鯛塩そば 縁』は、1階にカウンター席、2階にはテーブル席のあるこぢんまりとしたラーメン店。店の名の通り、タイを使ったラーメンを提供するが、フレンチ歴14年のシェフである坂 祥太さんがレシピを完成させた。
一番人気という鯛塩濃厚そば850円を注文する。ランチセット1000円ならミニサイズの鯛茶漬けが付いてくるとか。わくわくしながら待っていると鮮やかに盛り付けられたどんぶりが到着!
タイの旨味を最大限に引き出したクリーミーなスープ
ふんわりと盛られた野菜はまるでサラダのよう。チャーシューにはバルサミコ酢がかかっていて、なんとも華やかだ。とてもラーメンには見えない白いスープに驚くが、一口飲んでみると、生臭さはなく、香ばしいタイの風味と旨味がこれでもかと押し寄せてくる。とにかくクリーミーでまろやかなのだ。
店主の米田公昭さんは「スープはタイのアラで作り、頭と中骨から旨味を抽出するんです。白濁するまで半日ほど煮込んでいます」と教えてくれた。こうすることでタイの旨味が最大限に引き出されるという。新鮮な愛媛県宇和島産のタイだけを使う点にもこだわっている。太平洋から黒潮が流れ込む宇和海では、栄養もミネラルも豊富なおいしいタイが獲れるのだそう。
レア感のある豚肉と鶏肉の2種のチャーシューは、ともに低温調理でジューシーな仕上がり。トッピングされた野菜を箸休めにほおばり、ゴボウのきんぴらとしっとりと味が染みた穂先メンマをアクセントにしながら食べ進める。七味を使った自家製辛みそで途中から味を変えて、一気に食べてしまった。
愛媛県宇和島産のタイを使った鯛塩濃厚そば。これは洋風のラーメンとも言えそうだ。どことなくパスタのような感じもある。しかしやっぱりタイの濃い旨味が主役だろう。ラーメン好きも納得する一杯だ。
タイを愛しすぎた脱サラ店主! タイの探究はさらなる高みへ
「タイが好きすぎて会社を辞めて店主になっちゃいました」
そんなふうに笑う店主の米田公昭さん。もともとは大手メーカーで働くサラリーマンだった。魚の知識とタイへの深い愛を買われて『鯛塩そば 縁』のオープン前から開店準備に携わり、現在は店主として腕をふるう。
「とにかく、タイの味、タイの良さ、タイのいろんな食べ方。まだ知られていないおいしさをお客さんに知ってほしいんです」
公昭さんはタイの研究に余念がない。今は血抜きに凝っているという。「徹底して血抜きを行えば雑菌が抑えられて、旨味を引き出せる可能性が広がるんです。タイはもっともっとおいしくなりますよ」と意気込む。
鯛塩濃厚そばのあとは、鯛めしでしめよう。タイのスープを使って炊き込まれた香ばしいご飯に、タイの切り身がのっている。皮目が少しあぶってあるのもそそられる。
ミニサイズのどんぶりにこんもりと盛られた鯛めしは、さらっと食べられる味付けなのにタイの旨味がちゃんとしみこんでいる。はじめはそのまま、あとからスープをかけてかき込めばすっかりお腹いっぱい。
改めてメニューを見ると『鯛塩そば 縁』には担々麺ならぬ鯛担麺(たいたんめん)や、温・冷が選べる汁なし鯛塩そばといったタイづくしの麺類メニューがずらり。足を運ぶたび、また新たなタイの魅力に出合えそうな予感がする。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子