池袋から2駅、東長崎駅から徒歩3分にあるオリオン食堂。
この店が家路の途中にあったこと、それがすべての始まりだった。
この店の営業時間が朝10:00〜翌朝6:30とバグっていること、それが運の尽きだった。
ここは豊島区中のジャンク飯フリークを昼夜問わず吸い寄せる聖地であり、魔窟である。

店名に食堂とつくものの、メインメニューはラーメンである。
それも胃袋にガツンと響くハードパンチャー系のメニューが揃っている。
おまけに今回のように定期的に季節限定メニューが現れ、それがまたいちいち引きが強いのだ。

この日も深夜にもかかわらず、おれと同じようにこの店の光にふらふらと吸い寄せられる客が後を絶たなかった。

券売機で食券を購入すると、まず麺の量を聞かれる。
なんと通常の2倍の量の「倍盛り」まで無料だ。
夕飯を食った後にもかかわらず、おれの口は反射的に「倍盛りで!」と元気よく答えていた。
条件反射は伝達回路に大脳を挟まないという学生時代の講義を思い出した。

席に座ったらまずは水ともやしだ。
店内にはたっぷりともやしの置かれたコーナーが用意され、なんと食べ放題という仕様となっている。
オリジナルのタレをかけた力感の抜けたもやしを食し、レモンサワーをちびちび飲みつつラーメンを待つ時間、これもオリオン食堂の醍醐味である。

そして待つこと10分弱で着丼。

匂いたつカレースープの上に、山のようなニンニクともやし、背脂、ホーレン草、福神漬け、サクサクのウエハース、そして駄菓子のBIGカツが乗っている。
この遊び心がさすがはオリオン食堂。
まるで食いしん坊な小学生の夢のメニューを具現化したような一杯だ。
最高だぜ、こんちくしょう。

スープを一口すすって確信した。
これは当たりだ、と。

普段カレーを扱っていないとは思えない、コクと旨味のつまった濃厚なカレースープだ。
濃厚魚介系のつけ麺を得意とし、普段からマッドサイエンティストさながらに実験的な季節限定ラーメンを出しているため、カレーの調合くらいお手の物なのだろう。
ワシワシとしたコシの強い麺によく絡まり、相性は抜群。食べ進むうちに背脂が溶け出し、さらにコクが深まっていくところもグッドだ。
演出だけだと思っていた福神漬けも、食感と味で良いアクセントとなり、BIGカツを凌ぐ存在感を表していた。

一心不乱、無我夢中で食し、気づいたときには丼は空になっていた。
おれは満足に膨れあがったお腹を叩いて「ごちそうさま!」を告げた。
店員さんの気持ちの良い声が返ってきた。オリオン食堂はこういうところも素晴らしい。

外へ出て時計を見ると、午前2時半。
こんな時間にあっていい満腹具合ではない。
おれは満足と後悔の入り混じった気持ちでオリオン食堂を見上げた。

ごちそうさまです。