『一月より菓子類100円とさせていただきます。』


えー、値下げでありません。値上げのご報告です。(以前は90円等)


『人ももちつき機械も高齢になりました。』


いつもありがとうございます!


人柄が滲む張り紙に心の中で一礼しつつ。
今回ご紹介するのはお団子の定番「みたらし団子」!

【みたらし団子(100円)】
タレという黄金色の美容液をたっぷり纏った4連の重量感たるや。親指と人差し指の握力が鍛えられる幸せな筋トレ。
ほんのりと塩気が漂うような香りをスンと軽く吸い込み、そのまま先端をぱくり。

甘すぎず辛すぎず、色合いのわりにじんわりと包み込んでくれるような温かいお味。かすかに醤油の角を感じられるような感覚と、いい塩梅についた焦げ目の風味も適度なアクセントとなって食欲を刺激。
柔らかく伸びの良いお餅からは芯の強さも感じられ、噛むたびに「もちもち」という効果音がどこからともなく現れてきそうな正統派の食感と旨味。

噛みしめながら、思わず頭が上下してしまうこと間違いなし。
無条件に肩の力がストンと抜けるこの味わいも、根強いファンが多い理由だと確信。

「前はね、隣に古い建物があってそれを撮りに来る人たちがいたんだけど、最近じゃうちの方を撮りに来る人がいるね。」

とお話してくださったご主人。
マスク上の目尻が垂れると、こちらの気持ちもふわり。

「2、3年前から道路拡張の話があったんだけど、いかんせんコロナが始まっちゃったでしょ。だからいつ立ち退きになるかどうかとかもはっきりしなくなっちゃってね。でもそろそろかなぁ。早く来てくれるといいんだけど。」

どこか遠くを眺めるように語る眼差しからは、悲壮感でも達成感でもなく、あるがままを受け入れ前を見据えるどっしりとした物腰が漂う。
粘り気すら感じられるような潤いの皮に包まれたたっぷりの粒あんの「ふぶき」に舌鼓を打ちながら、やや色褪せた濃緑色の柵に持たれながら食べていると
「あら、美味しそう。」
と、自転車にまたがり颯爽と現れた下町マダム。
近頃の健康状態の報告に始まり、天気、そしてあん団子3本をお買い上げ。

願わくばあと1年、もう1年、そしてその先もう1年この味を味わいたい。

持ち帰ったみたらし団子のタレをぺろりとひとなめしてから先頭のお団子に取り掛かる娘を眺めながら、そう願わずにはいられない。
お団子の焼き目ほどではないけれど、チリリと胸焦がす感覚を、濃いめのほうじ茶で流し込んで。