西荻窪の「はつね」のタンメン(チャーシュー入)。
あまりにくたびれたので半休を取ると決めた木曜日。予定はおいしいお昼を食べて家に帰りビールを飲んで夕寝。
そんなことを決めた前の日に山手線、西武線、中央線のどこで食べようかと頭を巡らせていると友達からの誘いがあり立川の方に向かうに予定を変更。
なら中央線でと西荻窪で目を付けていたうどんを食べてみようと心に決める。も、寝入る前にむくむくと顔を出すそこらへんなら隣駅のオレンジのテントのところのラーメンじゃないの想い。
当日半日葛藤しながらのデスクワーク。
どんどんと膨らむあのラーメンが食べたい。あそこであとどれくらい食べられるのだろうなんて思うとやっぱりあの辺りでのファーストチョイス。
会社を出る頃には「丸長中華そば店」に行くと気持ちを固める。
総武線に乗り、中野、高円寺、阿佐ヶ谷と過ぎ、荻窪のホームに入る直前の車窓越しに目に飛び込むオレンジのテントの下の行列。14時過ぎでもかとびっくりと戸惑い。
どうするかとおろおろし、電車を降りて、乗り、降りて、乗るの優柔不断。チャイムに急かされ名残惜しくも西荻窪でうどんを食べようともう一駅乗ることにする。
西荻窪でうどん屋さんへと向かおうとするも頭の中に残るラーメンへの想い。南口を出て右に曲がりすぐ左に曲がる先の老舗を眺めて行こうと意図的に通る道。
角地の2階建ての年季の入る建物。くすむ草色のタイルと少しめくれ黒ずんだ薄ベニヤの外壁に破け黒ずむ2階の窓の赤青のテントと1階の青のテントと重ねた年月の存在感が滲みでる1961年に創業した「はつね」。
その5席しかない小さな店内で静かにラーメンを食べる5人。近づくと換気扇からただよう野菜の炒めの薫りが。ここもこの時間で8人の並び。その後ろにうどんはまた今度だねと即決して並ぶ。
開け放たれる窓越しから聞こえるキャベツを切る音と炒めの音とラーメンを頬張る音。胸躍る待つ時間。20分ほどして暖簾をくぐると柔らかな店主と奥様に迎えられる。
席に着き外から見えた壁のメニューから決めていたタンメンのチャーシュー入りをお願いする。
目の前で始まる調理。一枚一枚のチャーシューに筋を切るように包丁を入れ、火を入れキャベツと玉ねぎにんじんもやしを炒める。目の前であがる炎に少し後ずさるほど近い厨房。
炒めた鍋にスープを注ぎ火に戻し、麺を湯に放り、手早く味を調え小皿に汁をすくい味を見る丁寧で真摯な所作。
平ザルで麺を湯切りどんぶりによそい、中華鍋のスープと野菜を盛り、チャーシューを散らし並べて完成させるタンメン。
いただきますと啜るスープは炒まる野菜の薫りがたつその旨みと甘みがつまるしっかりとした塩けと円やかがバランスよく交じるスープ。おいしい。じわりいろいろなところに沁みる。
シャキシャキシャキシャキと噛み締める芳ばしい野菜とともにしばらくスープに浸るあとにその下に埋まる麺を引き摺り出し啜る。細めの縮れの白い麺。
切れ目の入るチャーシューは食べやすくむっちり質感のある肉々しく肉らしい旨みが沁みるチャーシュー。
小さなラジオから流れるクラシックと調理をする音と食べる音の店内で味わうしあわせタンメン(チャーシュー入)。まわりもほぼ皆タンメンを満足げに頬張る。
名残惜しく最後のスープを飲み干してごちそうさま。お会計をしてお忘れ物ないようにと見送られ店を出る。