かじや酒店

旧街道に店を構えて4代目

岐阜県の初緑純米吟醸無濾過生原酒(緑)は「香りがいいですよ」。
岐阜県の初緑純米吟醸無濾過生原酒(緑)は「香りがいいですよ」。

駅から少し離れた旧道に酒屋が1軒。老舗らしく、瓶登場前に使われた酒徳利が陳列されていたり、地元みやげにと特注する酒が置かれていたり。「昔は府中や国分寺に通じるメインストリートだったんです。 周りは農家ばっかりだったけど」と、はにかみながら話すのは、4代目店主の大澤寿男(ひさお)さんだ。自身は特別純米 「初緑」(銀)の豊潤さに感化され、日本酒に開眼。米の甘みを感じる純米酒の話になると饒舌(じょうぜつ)に。とはいえ、品数が多いわけではない。「うちは小さい酒屋。流行り廃りではなく、いい酒を醸す小さな蔵のものが多いんです」。

試飲会などで出会った家族経営の酒蔵も少なくなく、贈られた杉玉を大事に店頭に提げている姿もほほえましい。

ここでは角打ちも楽しみ。「酒好きは酒の匂いを嗅ぎつけるんです」と、野川散歩の途中で立ち寄る人も。缶詰や乾き物などの販売もあり、新酒を織り交ぜながら常時5、6種類、飲みながら客と語り合うこともしばしば。また、毎月催す日本酒飲み放題も見逃せない。つまみが持ち込め、「手作り料理をタッパーに詰めてくる方もいますよ」。見知らぬ者同士が長閑(のどか)に酌み交わす情景が今もここにある。

【店主こだわりの一本!】至(いたる)純米吟醸〈新潟〉/佐渡島の酒蔵のもので華やかな香りが秀逸。720㎖ 1650円。
【店主こだわりの一本!】至(いたる)純米吟醸〈新潟〉/佐渡島の酒蔵のもので華やかな香りが秀逸。720㎖ 1650円。
2014年に建て替え。
2014年に建て替え。
角打ちは燗酒含め日本酒1杯200円、3種飲み比べ500円。生ビールやハイボールもあり。
角打ちは燗酒含め日本酒1杯200円、3種飲み比べ500円。生ビールやハイボールもあり。
金婚を醸す東村山市『豊島屋酒造』特注「小金井滄浪泉園の四季」も販売。
金婚を醸す東村山市『豊島屋酒造』特注「小金井滄浪泉園の四季」も販売。
「角打ちはいつでもやってるよ~」。
「角打ちはいつでもやってるよ~」。

『かじや酒店』店舗詳細

住所:東京都小金井市貫井南町4-17-2/営業時間:10:00~20:00/定休日:水/アクセス:JR中央線武蔵小金井駅から徒歩18分

富士屋 天野酒店

酒好きの店主2代で営む

義侠を手にする天野新治さんと、豊永蔵を持つ2代目の喜仁さん。
義侠を手にする天野新治さんと、豊永蔵を持つ2代目の喜仁さん。

2代目店主の天野喜仁(よしひと)さんは「1泊あればどこにでも行けますから」と、全国の蔵元に足しげく出かけていて、酒と酒文化に精通。酒瓶を指差して尋ねると、味だけじゃなく、仕込み方、蔵のある風土、食文化、蔵人の人柄にまで、話はどんどんと広がっていく。「蔵元の人柄はもちろん、蔵で働く人たちの雰囲気も感じたいんです。いい雰囲気の蔵はいい酒を造るものなんですよ」と、しみじみ語る。じっくり酒を酌み交わした蔵元との直接取引が主流で、小さな店ながら、昔ながらの生酛(きもと)造りで醸す日本酒や、鹿児島の製法が伝わった東京都八丈島の焼酎、甕(かめ)で長期熟成させた古酒の泡盛など、ラインナップは圧巻。産地での飲み方も教えてくれる。 和酒一辺倒かと思いきや「一番好きなのはワインかな。くだものだから贅沢な幸せ感があるんですよね」と、笑う。

飲食店へ2代目が配達に出ていることも多い。そんなときは、初代・新治(しんじ)さんの出番だ。「それはね、飲んだことないんだぁ」など、素直な接客がまた好印象で、とても89歳とは思えぬ健在ぶり。「これはほんっと、旨いよ〜」と目尻を細めたら、即買い決定だ。今宵の晩酌が待ち遠しくなる。

【 店主こだわりの一本!】 縁(えにし)本格焼酎 (芋)〈鹿児島〉/酒販店会「縁会」と本坊酒造が共同開発した限定酒。720㎖ 1364円。
【 店主こだわりの一本!】 縁(えにし)本格焼酎 (芋)〈鹿児島〉/酒販店会「縁会」と本坊酒造が共同開発した限定酒。720㎖ 1364円。
ジョッキの男が目印。2代目の奥様のアイデアだ。
ジョッキの男が目印。2代目の奥様のアイデアだ。
巨匠から頂いたお礼の色紙が。
巨匠から頂いたお礼の色紙が。
香りのよいタイ米と沖縄黒麹で仕込み、原液のみで熟成した山川酒造製の泡盛もずらりと揃う。
香りのよいタイ米と沖縄黒麹で仕込み、原液のみで熟成した山川酒造製の泡盛もずらりと揃う。
「親父は機械が苦手。ご協力お願いします!」(2代目)
「親父は機械が苦手。ご協力お願いします!」(2代目)

『富士屋 天野酒店』店舗詳細

住所:東京都三鷹市上連雀2-3-7/営業時間:10:00~12:00・13:00~19:00/定休日:月/アクセス:JR中央線三鷹駅から徒歩5分

取材・文=佐藤さゆり 撮影=金子怜史
『散歩の達人』2021年1月号より