江戸前タイムマシンで行こう『大屋書房』
棚に積まれた本はことごとく和綴じ。博物館で見るような浮世絵、見ているだけで妄想が広がる古地図……。高価な稀少品でもなんと手に取れるという、神保町が誇る“江戸博物館”だ。復刻物や現代に出版された画集、研究書なども並び、博識な3代目、4代目店主もいるので、江戸ビギナーも大丈夫。外国人にも人気の店。
『大屋書房』店舗詳細
雑誌でファッション考古学を学ぼう『magnif』
次号が出れば消え行く運命の雑誌、しかも最も流行に敏感なファッション系を中心に並べる。神保町らしからぬオシャレな店構えだが、どの時代の雑誌も貴重な文化ととらえる店主の心意気あふれる店。業界のプロから過去を新鮮に感じる若者、懐かしく思う元若者、日本文化に関心を抱く外国人など、お客さんもバラエティ豊か。写真集や関連書籍も充実。
『magnif』店舗詳細
理系脳細胞を覚醒させよ『明倫館書店』
ガウス、湯川秀樹、ダーウィン、アインシュタイン。紙袋に印刷された天才たちの顔ぶれが象徴するごとく、バリバリの自然科学一筋の専門古書店。しかし理系といっても幅広く、動植物、天文、コンピュータに建築と、実は文系にも取り付く島のある分野も多い。晴れた日に店先にズラリ並ぶ、ジャンル不問のラインナップも注目。
『明倫館書店』店舗詳細
愛すべき生きとし生ける物へ『鳥海書房/鳥海書房 姉妹店』
ペットも動物ならカラスも野鳥。食材も動植物だから料理本も。さくら通りの姉妹店の棚を見ると、動植物専門古書店が一気にカジュアルに感じられる。園芸書も釣り本も、想像を絶するサイズの図鑑もある。そして本店の古書センター3階の売り場に並ぶ、美しい博物画の圧倒的な品揃えは、ここは美術書の店か?と目を疑うほどなのだ。
『鳥海書房/鳥海書房 姉妹店』店舗詳細
プロも通う歌舞音曲の宝箱『手塚書房』
こぢんまりした店内からは想像できない、演劇、邦楽、芸能関連の濃密な品揃えに圧倒される。特に歌舞伎と落語の充実度は、このジャンルの専門書店がない神保町では貴重な、いや、都内でも有数の古書店だ。昔の名優たちの舞台写真葉書も豊富で、その道のプロも探しに来るという。探せば署名本も手頃値段で……。
『手塚書房』店舗詳細
日本文化の影響力を思い知る『東方書店』
中国・香港・台湾などの書籍と雑誌、国内で刊行された関連書籍と研究書を扱う専門書店。ガイドブックや武術、料理の本もあるので、研究者はもちろん、中国に興味のある人の来店も多い。マンガや人気日本人作家の翻訳本も充実し、近年は関心の幅もグッと広がってきた。輸入書籍の学生割引(10%)やセールも多いので要チェック!
『東方書店』店舗詳細
名物“軍艦”は頭の柔軟体操の場である。『東京堂書店』
日本随一の本の街・神保町にあって信用を得ているのは、まずは地道な仕事だ。乱雑にならず、棚に空白をつくらず、常にメンテナンスを心がけている。そして1階中央、「軍艦」と呼ばれる平台は、新刊と共に既刊も置く濃厚な知の泉。ここで頭を柔らかくして2・3階へと向かうのがおすすめだ。そして、フェア。全書店員さんが楽しみながら考え、続々と案があがってくる。フェアは書店員さんの頭の中。本好きでなくとも、のぞいてみたい。
『東京堂書店』店舗詳細
ハングルを読めない方もどうぞ!『CHEKCCORI』
「新しい韓国の文学」シリーズを出版する『クオン』が、“読者とふれあいたい”との思いから、2015年7月にカフェも開設。本棚に並ぶのはハングルで書かれた文芸書や実用書、日本語によるガイドブックなど。韓国の文化や本について店員に質問しながら本を読んだり、現地をイメージしつつ旅の計画を立てたり、楽しみ方は十人十色だ。「お客様と一緒にお店を創っていきたい」と代表の金承福さん。進化し続けるブックカフェはいつ訪れても発見がある。
『CHEKCCORI』店舗詳細
店名に込めた意味は「20世紀の記憶装置」『ブックカフェ二十世紀』
カフェを併設した人気古書店。文学や芸能、食文化、サブカルなど20世紀を象徴する本が揃う。約35年前早稲田で創業した当初、店はサロンも兼ね、頻繁に読書会を開催。その後販売に絞ったが、2015年6 月、20余年ぶりにカフェも始めた。「初心に帰り、本を介して人が交わる場所を創りたいと思ったんです」とは店主の鈴木宏さん。お目当ての本探しの合間に、丁寧に淹れられたコーヒーでほっとひと息付くのも至福の時間だ。
『ブックカフェ二十世紀』店舗詳細
神保町で55年。良書が集まる老舗『三茶書房』
三省堂書店の隣にあって人通りが多く、店先の均一コーナーをのぞく人も絶えない。品揃えは日本文学が強く、全集や復刻本などが美しく棚に納まっている。2代目店主の幡野武夫さんは明治以降の歴史に造詣が深く、歴史文献も増えてきた。先代のころから名士や作家との交流が続いているため信頼も篤く、貴重な資料が集まることも多い。一冊一冊の本を大切にしていることが棚から伝わってくる。
『三茶書房』店舗詳細
街歩きから専門書まで、建築を知る『南洋堂書店』
建築書専門店として、新刊と古書を区別なく置いている。1階は建築誌の最新号、作品集や実務書、2階は住宅・商店建築、数寄屋造りなど日本古来の建築や庭園についての本などが並ぶ。お客さんは学生や建築事務所の人が多いが、そうした専門書に限らず、近代建築や地形散歩など街歩きの本も人気だという。硬軟とり混ぜた幅広いラインナップになっているため、建築を身近に感じることができる。
『南洋堂書店』店舗詳細
血湧き肉躍る昭和漫画の殿堂『夢野書店』
かつての中野書店漫画部を西山友和さんが引き継ぎ2015年3月に開店。店内は、漫画と雑誌と雑貨が詰まった夢の空間だ。手塚治虫、水木しげる、白土三平といった昭和時代の名作の数々や、1970年代以降の少年・少女誌が年代別に並ぶ。漫画家の自伝や、評論にも力を入れていて、好きな作家の世界がより深まる楽しさもある。往時を懐かしむもよし、新たな出会いを求めるもよし。
『夢野書店』店舗詳細
時空を超える妄想トリップ!? 旅の専門書店『永森書店』
約100年前の戦前の絵はがき、旅行案内、古地図、戦時資料を主に取り扱う古書店。なかでも圧倒的に目を引くのが鳥瞰図の品ぞろえ! 「自分の住む街や多少知っている土地の旅行案内のほうが当時と今を比べられるから楽しめますよ」と店主の永森健太さん。何気なく手にしたレアものの川口市も、鳥瞰図になれば一大観光地に見えてくるから不思議。気づけばすっかり頭の中で散策してしまうこと間違いなしだ。
『永森書店』店舗詳細
構成=前田真紀、フラップネクスト 取材・文=高野ひろし、屋敷直子、信藤舞子、下里康子 撮影=金井塚太郎、オカダタカオ