熱々のあんこを詰め込んだ2口サイズの幸せ『人形焼本舗板倉屋』
かつて人形師や人形商が集まっていたこの地区で名物といえばこれ。しかも、一つから買える焼きたてを体験しない手はない。熱々のまま手渡されてすぐ齧(かじ)り付くと、きつね色に焼けた生地はカリッ、ふわっ。きりっとした甘さの粒あんが口の中ではらりとほぐれ、熱気を落ち着かせるべくハフハフすると湯気と香りが鼻先を舞う。
『人形焼本舗板倉屋』店舗詳細
豊富な味わいのあんこを食べて験を担ぐ『縫月堂』
軍配をかたどった生地に、横綱の土俵入りを焼き印。柚子あんの「金星」、北海道産を使った大納言小豆あん「十勝(じゅっしょう)」、ミルクあん「白星」、栗あん「横綱」など、すべて勝ちにちなんだ名前が付けられている。生地はサクッと軽い歯触りで、あんこのフレーバーを絶妙にアピール。「お相撲さんのように元気で健やかに」との願いも込められているとか。
『縫月堂』店舗詳細
ほのかに塩気を含んだ素朴な甘みにときめく『ベイクドシュークリー』
こんがり焼けたコッペパンから、つやっと光る粒あんがのぞく。あんこにほんのちょっと加えたゲランドの塩が、じわじわと塩気を醸し、食べ進めるごとに甘みを優しく煽(あお)る。また、有塩バターのコクが全体の味をまろやかにまとめ、香りが鼻腔(びこう)にふわっ。数に限りがあるためお昼過ぎに完売することも多く、予約がおすすめ。
『ベイクドシュークリー』店舗詳細
舌の上で繰り広げられるあんと蜜の甘やかな競演『初音』
天保8年(1837)創業の甘味処で多くのファンを抱えるあんみつ。きれいに形が残るようにふっくら炊き上げた小倉あんは、蜜と親密に絡み合う。その蜜は白か黒、好きな方を選べ、白なら雑味のない上品な甘みを、黒なら小豆の素朴な滋味をぐっと引き出す重要な役どころだ。あんこには手撰(よ)りの特A小豆が使われ、こしあんも選べる。
『初音』店舗詳細
和と洋、2種類の甘みが幸福な出合いを果たす『たがやす 人形町店』
シェフパティシエの松下悟史さんはフランスで洋菓子の技術を習得。そこにあんこを取り入れ、和洋折衷のショコラようかんを生んだ。ダーク、アーモンドミルクなど5種類あり、なかでもビスケットに似た香ばしさが漂うブロンドチョコレートには、国産の粒あんと白あんを。まるで水ようかんのような口溶けで、ゆっくり広がるあんこの風味が後味を穏やかにする。
『たがやす 人形町店』店舗詳細
ニッキの香りと対を成すほろっと柔らかい黄身あん『京菓子司 壽堂』
名前に「芋」の字が入るが、イモにあらず。白いんげん豆がベースの黄身あんを生地で包み、串に刺してぐるっと全面、高温で焼き上げている。表面にニッキをまぶしてあり、すっきりした風味と甘い香りが黄身あんの朗らかな甘みと凄(すさ)まじく好対照。この洗練された味わいは100年以上前から引き継がれていて、正真正銘こちらが発祥だ。
『京菓子司 壽堂』店舗詳細
取材・文=信藤舞子 撮影=鈴木愛子