三ツ石
好天に恵まれれば背後に伊豆諸島を見通す景勝地
真鶴岬の沖合に浮かぶ3つの大岩のことで、笠島の名もある真鶴随一の観光スポット。半島先端の明るい園地から250段の石段を下りれば、ゴロゴロとした石が転がる三ツ石海岸にたどり着く。付近の岩礁では磯釣りに興じる人も多い。干潮時には海岸と三ツ石の間が陸続きとなるトンボロ現象が見られ、歩いて渡れるが無理は禁物。近くに見えても足場の悪さから思いのほか時間がかかり、潮が満ちて戻れなくなる人も例年いるのだとか。
遠藤貝類博物館
海に親しむイベントも積極的に随時開催
三方を海に囲まれ、三ツ石を見下ろす高台に立つケープ真鶴2階にある。町内岩地区に住んでいた貝類研究家・故遠藤晴雄が生涯をかけて集めた貝類コレクション約5万点を譲り受け、2010年に町立博物館としてオープン。展示室は「真鶴・相模湾の貝」「日本の貝・オキナエビスコーナー」「世界の貝」などに分かれる。
お林と魚つき保安林
300有余年を経て萱(かや)原から自然豊かな森へと大変身
明暦3年(1657)の大火により江戸の大半が焼失したのを受け、幕府から小田原藩に割り当てられた松苗を真鶴岬に植林したのがお林(はやし)誕生のきっかけ。明治維新後に皇室御料林となり、1952年に町へ払い下げられた。この間、人の手が入ることが少なく豊かな森となり、地元では魚を寄せる「魚(うお)つき保安林」とも呼ばれ親しまれている。一帯は遊歩道が幾筋も整備され、真鶴の自然を手軽に感じられるエリアとしても人気。
●散策自由。神奈川県真鶴町真鶴
お林展望公園
眺望を堪能したあとはパークゴルフで気分爽快
お林の一角、南側に大きく開けた断崖上の明るい公園。パークゴルフ場のコースの間を通り抜けた先にゆったりとした展望ポイントがあり、相模灘越しの初島や伊豆大島、伊豆半島などの眺めがよい。
中川一政美術館
独学で積み重ねた作品を画家ゆかりの地で鑑賞する
真鶴の自然に魅せられ、戦後間もない1949年に町内にアトリエを構えた洋画家・故中川一政(かずまさ)の画業を中心に紹介。5つからなる展示室では、力強いタッチの絵画をはじめ、味わい深い書や陶芸作品などを落ち着いた空間でじっくり鑑賞できる。書籍の装丁も手がけており、画と書が織りなす独特の世界観が垣間見える。年に3~4回展示替えあり。
貴船神社
例祭「貴船まつり」は日本三大船祭りの一つ
創建時期は諸説あるが、由緒書によれば今を遡ること約1200年前の夏、夢に現れた大国主神のお告げにより、村の鎮守として海岸に流れ着いた木像を祀ったのが起源とされる、真鶴を代表する古社。毎年7月27・28日に行われる「貴船(きぶね)まつり」は神輿が海上を渡御する勇壮なもので、国の重要無形民俗文化財に指定されている。石段の先に鎮座する社殿前には、伝統的な和船の模型を展示している。
●境内自由。神奈川県真鶴町真鶴1117
☎ 0465-68-0066
道祖神巡り
旅の安全を祈願して静かに手を合わせたい
真鶴の町では路傍に祀られた道祖神に出くわす場面が多い。主に疫病退散や豊漁の願いが込められた、集落の境などに立つ石像で、伊豆系丸彫り僧形とされる形状が中心という。造立時期が不明な古いものから近年置かれたものまで、それぞれの道祖神が刻んできた歳月は異なるが、いずれもが今でも地域住民により篤く敬われているのが伝わってくる。町歩きの途中で立ち寄ると、旅の安全を見守ってもらえるようで、穏やかな心持ちになる。
真鶴ピザ食堂KENNY
幅広い年齢層が気軽に立ち寄る駅前ピザ店
地元で人気のピザ店が、2020年に真鶴駅前の大衆食堂跡へ移転。国産小麦100%のピザ生地にトッピングされる具材には、真鶴ならではの干物もチョイスできるのが興味深い。一番人気は現地の呼び名で宗田鰹を指すうずわとレンコンのピザ(写真手前、Rサイズ980円)で、食感の小気味よさも相まってクセになる味わいだ。
パン屋秋日和
住宅地に溶け込む、売り切れ必至の小さなお店
自家培養発酵のパン種に全粒粉を配合したほどよい酸味の田舎パン600円やクルミ・レーズン・甘夏ピールを混ぜ込んだノアレザン700円など、しっかりと焼き込んだハードパンを中心に、季節のパンや食パンが数量限定で店頭に並ぶ。一番人気のあんこパン180円は自家製の粒あんを食パン生地でふんわりと包み込んだもので、口に入れるとしっとりと柔らかく、あっという間にペロリ。
真鶴出版
出版とゲストハウスが融合して町の魅力を発信
リノベーションした路地脇の民家を拠点に、地域に根づいた出版活動と宿泊業の両輪で町の魅力を伝えている。宿泊はしばらくの間1日1 組限定。宿泊者向け町歩きツアーは訪れた人が町に受け入れてもらえた感覚になることを大切にしている。
背戸道をぶらぶら
路地を巡り石段を上って美の町・真鶴を実感
暮らしの気配が色濃く漂う狭い生活道路・通称背戸道(せとみち)が多く残る真鶴。字義通り解釈すれば“家の裏道”となるが、真鶴町まちづくり課に尋ねたところ、「町が定めたまちづくり条例〔美の基準 Design Code〕では守るべき真鶴の魅力の一つに“静かな背戸”を掲げていますが、要は真鶴らしさが残る車が通れない路地や坂道のこと。訪れた方がそう感じれば、そこが背戸道です」と教わった。実際に訪ね歩くと和やかに挨拶してくれる住民も多いが、ヨソ者に猫がすり寄ってくるほど世の中甘くはない。
レンタル釣具&レンタサイクル
時間を上手に活用してもっと真鶴を楽しもう
真鶴港にほど近い真鶴町観光協会では釣具の貸し出しをしており、目の前の岸壁で海釣りを楽しめる。歩きに自信なければ真鶴駅近くの駅前案内所で電動アシスト自転車(台数限定)を借りて町を巡るのもいい。
●レンタル釣具1000円(エサ代別)。レンタサイクル1100円。いずれも10:00~16:00最終返却。荒天時を除き原則無休(12月31日~1月3日休)。
神奈川県真鶴町真鶴894-1
☎ 0465-68-2543(真鶴町観光協会)
神奈川県真鶴町真鶴1816-9
☎ 0465-68-2500(同駅前案内所)
源頼朝ゆかりの地
思わず拍子抜けするほど存在感が希薄な頼朝公
治承4年(1180)の石橋山の合戦で平家軍に敗れた源頼朝が逃げ延びた地の一つが今の真鶴とされ、身を隠したのが「鵐窟(しとどのいわや)」、房州へと抜け出た岩海岸が「源頼朝船出の浜」と伝えられる。滞在期間はごくわずかで、そのうえどこまで史実に基づいているかもあいまいなせいか、現地の関心度は驚くほど低い。
●見学自由。神奈川県真鶴町真鶴1042(鵐窟)
神奈川県真鶴町岩613(源頼朝船出の浜)
ひもの魚伝(うおでん)
丁寧な仕事ぶりに培われた伝統の味と新顔が並び立つ
明治10年(1877)創業の干物専門店。ブラシで丁寧に洗って魚の臭みを消し、旨味を引き出すためモンゴル産天然岩塩にこだわる。人気のさばみりん324円~は肉厚で脂の乗りもよい。真あじやいわしのほか、金目鯛やのどぐろも並ぶ。イカ爆弾1 個150円は、真イカとチーズをイカスミ入りパン粉で包んだコロッケでブラックペッパーとの相性も抜群。思わずビールが欲しくなる。
如来寺(にょらいじ)跡
石窟内部に地獄・間道・極楽浄土が広がる
岩海岸近くの郵便局脇の路地を入った先にある元和6年(1620)建立と伝わる瀧門寺(りゅうもんじ)の末寺。境内の石窟は閻魔大王が待つ地獄、地蔵菩薩が立つ間道、大日如来・正観音が控える極楽へと続いているが、崩落の危険があり立ち入りは禁止。正面右手のゆるやかな坂を上がった先では薄暗い石窟内を見下ろせる。
●見学自由(石窟内立ち入り不可)。神奈川県真鶴町岩630
真鶴なぶら市
キャッチフレーズは幸せをつくる真鶴時間
「なぶら」とは魚の群れが海面をにぎわす様子を表した釣り言葉。真鶴に多くの人が集まり、もっとにぎわうようにとの思いを込めた地元有志による手作り感たっぷりの日曜市で、2015年にスタート。出店内容は毎月変わるが、地元食材などを扱った飲食物販売、作り手の温もりを感じる物販、移動販売車など、真鶴はじめ近隣から多彩なテナントが顔を揃える。
●10:00~13:00。毎月最終日曜開催(荒天時中止)。神奈川県真鶴町真鶴港岸壁広場
松本農園
相模湾を眺めながらスイセン花摘み体験を
相模湾を見下ろす山の中腹に広がる観光農園。1万5000坪の広大な敷地にはみかん畑を縫うようにアップダウンのある遊歩道が整備されている。みかん狩り1袋分1080円は12月下旬で終了となるが、12月下旬から1月下旬にかけては園内を散策しながらスイセン花摘み(30本1100円・入園料込み)を楽しめる。ドッグランがあり、愛犬家の姿も多い。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2021年1月号より